フォルクスワーゲンID.4プロ(RWD)
意義あるアップデート 2026.02.28 試乗記 フォルクスワーゲンのミッドサイズ電気自動車(BEV)「ID.4」の一部仕様変更モデルが上陸。初期導入モデルのオーナーでもあるリポーターは、その改良メニューをマイナーチェンジに匹敵するほどの内容と評価する。果たしてアップデートされた走りやいかに。マイチェン級の改良
ちまたでは「ID.4がマイナーチェンジ」と言われているものの、実のところはマイナーチェンジではなく、モデルイヤーが変わるのを機に行われた改良という位置づけだ。
にもかかわらず、マイナーチェンジと言われるのは、その内容が年次改良の常識をはるかに上回るレベルだったからだろう。
最新版の「ID.4プロ」を見ると、エクステリアは従来とほぼ同じで、変わったことといえば、これまでフロントフェンダーにあったバッジがなくなって、すっきりとしたくらいだ。
しかし、コックピットはセンターディスプレイやシフトレバーのデザインが変更されて、操作方法も以前とは少し異なっている。
一番の見どころはモーターが一新され、パフォーマンスが大幅に向上したこと。最高出力はこれまでの204PSから286PSへと引き上げられ、最大トルクも310N・mから545N・mへと大幅に増強された。出力で82PS、トルクで235N・mの向上は、エンジンに例えると2リッターから3リッターに排気量が増えたくらいのインパクトがある。
そんな見どころ満載の最新版について話を進める前に、ID.4のおさらいをしておこう。ID.4は、フォルクスワーゲンが展開するBEV専用アーキテクチャー「MEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリックス)」を採用したミッドサイズSUVで、日本には2022年に導入された。リアモーターによる後輪駆動レイアウトが生み出す安定感のある走りと、BEV特有の高い静粛性、そしてゆとりある室内空間を備え、ID.シリーズの中心的な存在とされている。
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使いやすく進化したタッチパネル
導入当初、容量52kWhバッテリーを搭載する「ID.4ライト」と、容量77kWhバッテリーを備えるID.4プロの2種類のグレードを用意。一充電走行距離は前者が435km、後者が618kmとなっていた。
今回の改良では、バッテリー容量が若干増え、ID.4ライトが55.0kWh、ID.4プロでは82.0kWhになった。一方、走行時の消費電力が増えたため、一充電走行距離はID.4ライトが409km、ID.4プロでは587kmに減少している。
このうち、試乗したのはバッテリー容量が多いID.4プロ。私が所有する「ID.4プロ ローンチエディション」の流れをくむグレードである。
まずはコックピットを眺めると、進化の跡が見てとれる。たとえば、ダッシュボード中央のタッチパネル式モニターはデザインが変わり、従来型でモニターの直下にあった空調やドライビングプロファイルの物理スイッチは、画面内表示のタッチスイッチ(画面の上下にレイアウト)に切り替えられた。シートヒーターも直接操作できるようになり、使い勝手が格段に向上している。
モニター下部に備わる温度調整と音量用タッチスライダーにはイルミネーションが追加され、夜間操作性が改善されたのもうれしいところ。これならストレスを感じずに使えそうだ。メニュー構成が「パサート」や「ティグアン」などと同様、最新のスタイルになったのも見逃せない点だ。
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動き出しがよく軽快になった走り
ID.4の場合、運転席に座ってブレーキを踏み、シフトセレクターでDレンジを選べば発進の準備は完了。あとはブレーキから足を離せば、クルマはゆっくりとクリープを始める。スタート/ストップのスイッチはあるものの、操作する必要はない。
ちなみに、これまでシフトセレクターはメーターの横にあったが、今回の改良でステアリングコラム右側へ移設されている。シフト操作は違和感がないものの、これにともないワイパーレバーがステアリングコラムの左にあるウインカースイッチに統合されたため、初見では操作がわかりにくいのが玉にきずだ。
さっそく走りだすと、発進の瞬間から以前とは印象がまるで違う。これまでは、出足に“もっさり感”があったが、最新版ではそれが解消され、従来に比べて明らかに動き出しが軽くなったのだ。
走り始めたあとも、アクセルペダルを軽く踏み足すだけで、以前以上に鋭く力強い加速が得られる。さらに踏み込めば、少なくとも120km/h付近までは勢いよく速度を伸ばしていく。
以前この仕様を、ドイツのアウトバーンで走らせたことがあるが、160km/hくらいまでなら加速は鈍らなかった。日本ではそこまでの余力が必ずしも必要とは限らないが、出力が高まっても電費が大きく悪化しない点は、BEVならではの利点といえる。
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うれしい充電性能の向上
乗り味にも変化が感じられた。前:235/50R20、後ろ:255/45R20の「ハンコック・ヴェンタスS1 evo3 ev」タイヤを装着した試乗車は、ドイツ車らしい引き締まった乗り心地を基本としながらも、同タイヤを履いていた初期の車両と比べると、全体にややマイルドになり、目地段差を越えた際のショックも和らいでいる。
それでもなお、リアから衝撃を拾う場面があり、個人的には1〜2インチ小さいタイヤサイズのほうがより好ましいのではないかと感じた。
SUVのスタイルをまといながらも、低重心のBEVらしく走行時の挙動は安定しており、高速域でのフラット感も十分なレベルにある。一方、コーナリングではRWDらしい素直で軽快なハンドリングを示し、FWDや4WDのフォルクスワーゲンとは異なる、操る楽しさを味わわせてくれる。
急速充電を利用する機会が多いユーザーにとっては、充電性能の向上はモーターの出力アップ以上にうれしいことだろう。
従来のID.4プロは150kW級の急速充電器を利用した場合、条件が整えば90kW超で充電できたものの、気温が低いとバッテリー残量が少なくても70kW以下にとどまることが多く、思うように充電できない場面が少なくなかった。
一方、急速充電時の受け入れ能力が403V/250Aから403V/350Aへと引き上げられるとともに、気温が低く、バッテリー温度が低い場面で有効な「バッテリーヒーター」が搭載されたのは朗報だ。
実際、気温が低い状態でバッテリーヒーターを作動させ、150kW急速充電器を利用すると、一時130kWを超える電力で充電することができた。
このように走行性能も充電能力も大幅に向上したID.4プロ。その進化は、私を含めて、従来型のオーナーが悔しがるのは間違いない。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=フォルクスワーゲン ジャパン)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲンID.4プロ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4585×1850×1640mm
ホイールベース:2770mm
車重:2140kg
駆動方式:RWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:286PS(210kW)/3675-6500rpm
最大トルク:545N・m(55.6kgf・m)/0-3675rpm
タイヤ:(前)235/50R20 100T/(後)255/45R20 101T(ハンコック・ヴェンタスS1 evo3 ev)
交流電力量消費率:143Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:587km(WLTCモード)
価格:661万8000円/テスト車=664万2200円
オプション装備:なし ※以下、販売店オプション フロアマット<テキスタイル>(2万4200円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2229km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:262km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:5.3km/kWh

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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