ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)
クルマのデキはいいのだけれど 2026.02.26 試乗記 日本で久々の復活を遂げた「ホンダCR-V」の新型に、北海道のテストコースで試乗。雪上・氷上での“ひとクラス上”の振る舞いに感嘆しつつも、筆者がドン! と太鼓判を押せなかった理由とは? デビューから30年をむかえたCR-Vの、実力と課題を報告する。3年ぶりの復活の理由
2025年秋の「ジャパンモビリティショー」で日本仕様が初公開されて、同年12月4日に先行予約受注がスタートしていたCR-Vのハイブリッドモデル(参照)が、正式に国内で発売となった(参照)。今回のCR-Vは通算6代目で、日本ではこれまで燃料電池車の「e:FCEV」のみが限定的にリース販売されていたのは、ご承知のとおりである。
ちなみに6代目CR-Vは、グローバルでは2022年秋の北米導入を皮切りに、順次販売がスタートしている。つまり通常モデルの日本発売は、そこから3年以上の遅れとなるわけだ。これについては、もともとe:FCEV以外の国内販売が予定されていなかったのが最大の理由だ。6代目CR-Vの北米発売とほぼ同時期の2022年秋に、日本では「ZR-V」が発表された(発売は2023年春)。日本市場における従来のCR-VのポジションはZR-Vが引き継いで、CR-Vの国内販売は予定なし……と、当時のホンダも明言していた。
このときに6代目CR-Vの国内発売が見送られたのは、ずばり、それまでの販売が好調とはいえなかったからだろう。先代(5代目)CR-Vの国内販売台数は、発売直後の2018年後半でも月間平均1000台強で、ライフ後半の2021年ごろから2022年にかけては500台以下に低迷。約4年間の販売期間を通じて、トヨタの「RAV4」と「ハリアー」、そして「スバル・フォレスター」「マツダCX-5」「日産エクストレイル」といった直接的なライバルに、明確に水をあけられていた。
……といった明確な理由があって、国内市場から姿を消していたCR-Vだが、いっぽう販売現場では、CR-Vの既納客を含めた各方面から「ZR-Vではなく、CR-Vがほしい」や「ZR-Vでは小さすぎる」という声が寄せられたとか。そうした、ある意味では予想されたとおりの要望に押されるかたちで、CR-Vは日本で復活した。
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ラインナップはいたってシンプル
そんなCR-Vの国内復活発売に合わせて、ホンダは真冬の北海道でメディア試乗の機会を設けてくれた。試乗コースは、北海道のほぼ真ん中に位置する自前のテスト施設「鷹栖プルービンググラウンド」だ。
日本で販売される6代目CR-Vは、現行「アコード」と同様に、タイからの輸入車となる。新しい販売計画は月間400台。北米などのグローバル市場では1.5リッターターボなどの用意もあるが、日本ではおなじみの2リッターハイブリッド「e:HEV」のみの設定となる。ただし、駆動方式はFWDと4WDの両方を用意する。
グレード構成はシンプルで、基本はスポーツグレードの「RS」のみとなるものの、標準のRSに加えて、最近の定番である「ブラックエディション」も用意。各部が黒基調でまとめられた内外装がその名の由来だが、このCR-Vの場合は「ホンダセンシング360」に「電動パノラミックサンルーフ」「前席シートベンチレーション」「ヘッドアップディスプレイ」などの専用装備を追加した上級グレードでもある。また、ブラックエディションの駆動方式は4WDのみとなる。
なお、ホンダでRSといえば、パワートレインの設定やシャシーチューンを専用仕立てとするのが通例だが、CR-Vの場合はそうではないという。海外で用意されるRS以外のグレードと、パワートレインやシャシーの味つけに特別な差はなく、大径ホイールをはじめとしたスポーツテイストの装備を、内外にトッピングしたコスメグレードというポジションのようだ。
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ひとクラス上の快適性と操作性
前記のとおり、国内販売では苦戦してきたCR-Vだが、グローバルでは主戦場の北米を筆頭に、欧州、中国、アジア、豪州など約150の国と地域で販売されており、“世界でもっとも売れるホンダ車”の一台である。よって、最新の6代目もあくまで正常進化といっていい。
実際、全長×全幅×全高が4700×1865×1680mm、ホイールベースが2700mmというディメンションも、全幅と全高はほぼ変わらず、長さ方向のみ拡大(全長で95mm、ホイールベースで40mm)している点がまさに正常進化っぽい。エクステリアデザインははっきりと新しいが、フロントエンドはいかにも「ヴェゼル」やZR-Vの親分……といった印象が与えられている。いっぽうで、リアエンドはCR-V伝統の縦型コンビランプが目を引く。シビックによく似た雰囲気のインテリアは、まさに最新のホンダ車そのものだ。
プラットフォームは従来型の改良版だという。アコード同様の高出力モーターを採用した2リッターe:HEVパワートレインもおなじみのものだが、エンジン直結モードに低速ギアを追加して、上り坂や緩加速、北米などで求められるけん引時の効率を高めている。また、先代にはなかったヒルディセントコントロールが追加されているところも、CR-Vに世界中からいろいろな要望が届いていることをうかがわせる。
というわけで、今回はあくまでスタッドレスタイヤを履かせた雪道での短時間試乗にとどまったが、6代目CR-Vでもっとも注力したという静粛性と乗り心地は、なるほど明らかに向上していた。試乗日は大雪直後に気温が一気に上がって……というコンディションで、北海道というより北陸あたりに多い、ゆるく重い雪質だった。それもあって、本来ならザーッというロードノイズが目立つはずなのだが、CR-Vではそうした音が不思議なほど聞こえてこない。そして、何台もの試乗車が掘り返した凹凸が目立つ圧雪路面に、それなりのハイスピードで突っ込んでも、シレッとフラットにクリアしていくのには驚いた。ありていにいえば、まるで車格がひとクラス上がったような快適性である。
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今度こそ腰を据えて
今回は、新しい低速ギアの直結モードを体感するにはいたらなかったが、あらためて感心したのは、ホンダの最新「リアルタイムAWD」だ。これまでの歴史もあって、他社ほど優秀なイメージがもたれていないホンダの4WDだが、最新のそれはトヨタや日産、スバル、三菱と比較しても、もはや走破性は大きく劣らない。しかも、積極的にアクセルを踏んで楽しめるコントロール性については、トップ級と思ったのはウソではない。
このように、グローバルで成功しているCR-Vは、6代目でも“王道”といいたくなる進化っぷりだった。そんなCR-Vが日本で売れにくい理由はひとつではないだろう。ただ、いちばんの原因は、今回もそうだが、売ったり引っ込めたりを繰り返す不安定なマーケティングだろう。
今回も、結果的に5代目の生産終了から3年のブランクを経ての復活となったが、思い返せばその5代目の発売時にも、4代目が姿を消してから2年ほどのブランクがあった。4代目の販売終了を機に、国内向けSUVをヴェゼルに一本化する計画だったようだ。しかし、あのときも結局はCR-Vが復活した。
CR-Vほどのグローバル商品なら、投入タイミングが早い市場と遅い市場で2~3年のズレが生じるケースは少なくない。販売台数の少ない日本市場が後回しにされるのも、まあしかたない。しかし、日本でのCR-Vの売り方はあまりに行き当たりばったりだ。販売が中断しても、次期型が出るとわかっていれば、既納客も「だったら、もう1回車検を取って待とうか」とも考えられるのに、国内販売計画そのものが二転三転してはそれもかなわない。それでも、CR-Vの復活を願う声がいまだにあることに、ホンダは感謝すべきだろう。
今回はチョイ乗りだったが、新しいCR-Vもデキは間違いなくよさそう。グローバルの製品計画では、すでに折り返し地点をむかえつつある6代目CR-Vだが、今度こそ腰を据えて売ってくれることを願うばかりだ。
(文=佐野弘宗/写真=本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4700×1865×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1830kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:148PS(109kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:183N・m(18.7kgf・m)/4500rpm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-8000rpm
モーター最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101Q M+S/(後)235/55R19 101Q M+S(ブリヂストン・ブリザックWZ-1)
燃費:18.0km/リッター(WLTCモード)
価格:577万9400円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:711km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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