トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ(4WD/8AT)
カタチが機能だ 2026.03.03 試乗記 「GRヤリス」の新仕様として設定された「エアロパフォーマンスパッケージ」装着車に試乗。レースフィールドでの知見を交え開発したというエアロパーツの空力・冷却性能は、リアルワールドでも体感可能なのか。高速道路を経由し、郊外のワインディングロードを目指した。空気の流れを味方にする
今回試乗した「GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ」は、モータースポーツの現場でエアロダイナミクスを磨いたクルマだという。
「空力の鬼才」とあがめられるエイドリアン・ニューウェイと違って、私には空気の流れがまったく見えない。そんな私が、エアロパーツをまとったGRヤリスを運転して、果たしてその効果がわかるのか、正直なところとても不安である。
もちろん、クルマにとってエアロダイナミクスがいかに大切かくらいはわかっている。過去にはエアロパーツの効果を感じたこともある。
以前乗っていた愛車に、エアロパーツを装着したときのことだ。標準モデルを購入した私は、スポーツグレードに装着されている派手なルーフスポイラーが気に入り、部品で入手。それを愛車に取り付けて悦に入っていたのだが、いざ走りだしてみると、高速道路でフロントの接地感が希薄になり、直進性が明らかに低下しているのを感じた。
ルーフスポイラーがしっかりとその役目を果たしていることがわかったのはいいが、ちゃんと走らせようとすると、ルーフスポイラーだけでなく、前後バンパーを交換してバランスをとる必要があったのだ。
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ラリーや耐久レースの経験から生まれた工夫
その点、GRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージは、スーパー耐久シリーズや全日本ラリー選手権に参戦してきたGAZOO Racingが、プロドライバーとともにつくり上げたものだけに、クルマとしての完成度や空力のバランスに不安を抱く余地はない。
そんなスペシャルなGRヤリスを初めて見たとき、ただでさえ存在感のあるGRヤリスが、さらにたくましく思えた。そう感じさせる一番の特徴が、ルーフエンドにそびえる大型のリアウイング。とくにこの「プレシャスメタル」のボディーカラーと組み合わされると、精悍(せいかん)さが際立つ印象だ。見た目の派手さだけでなく、その効果も絶大で、高速域での操縦安定性を高めるとともに、ブレーキング時にリアが不安定になる挙動を抑えてくれるのだという。
リアウイングとともにこのクルマを特徴づけるのが、ダクト付きアルミフード。エンジンルームの熱対策という課題から生まれた装備だ。ここから空気を抜く際の気流の乱れが問題になったが、他のパーツと組み合わせることでうまくバランスをとったそうだ。
さらに、コーナー進入時の操縦安定性やステアリングフィール改善に役立つフェンダーダクト、高速域での空気抵抗を低減し、安定性向上を図るリアバンパーダクト、フロントリフトを抑え、前輪の接地感を高めるフロントリップスポイラー。見えないところでは、下面の空気の流れを整えることで空力性能を向上させる燃料タンクアンダーカバーを設置している。
そのいずれにも、モータースポーツでの課題や失敗から得た経験が生かされているだけに、説得力があるのも確かだ。
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すぐそばにある非日常
GRヤリスはいまどき珍しい3ドアハッチバック。ボディーサイズのわりに大きなドアを開けると、サイドサポートが大きく張り出したスポーツシートが、ドライバーを迎え入れる。
シートに収まると、シフトレバーのすぐ横、ドライバー側に移設されたパーキングブレーキが目に入った。メーカーオプションとなるこの装備に触れた瞬間から、いきなり非日常の世界に切り替わる感じがする。
試乗車が採用するトランスミッションは「GR-DAT」と呼ばれる8段ATで、発進やギアチェンジで気後れする必要はなく、そのぶん1.6リッター直3ターボのパワーを純粋に楽しめるのがうれしいところ。
このエンジン、低回転域でも十分すぎるほどのトルクを発生するが、アクセルペダルに乗せた右足にさらに力を込めると、3000rpmを超えたあたりからさらに勢いづき、勇ましさを増したサウンドとともに7000rpmのレブリミットまで一気に伸びる加速が実に爽快だ。
スポーツモードを選ぶと、メーターの表示が横バーのタコメーターに切り替わった。4000rpm以降が拡大表示され、エンジンを高回転に保つのがさらに楽しくなる。
それにしても1.6リッターという排気量で、これだけ胸がすく加速が味わえるとは。GRヤリスを街でよく見かけるのも納得がいく。
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高速域でエアロパーツの効果を実感
ただ、このクルマを普段使いするのには少しためらう。明らかに硬めにしつけられたサスペンションのせいで、路面の荒れをよく拾い、目地段差を越えたときにもショックを伝えてくる。なんとか我慢できるレベルとはいえ、乗り心地は決して快適ではないからだ。
そのぶん、コーナーではフロントタイヤがしっかりと路面を捉え、素早くコーナーから脱出していく感じは痛快そのもの。高速道路での直進安定性も高く、安心してアクセルペダルが踏めるのも頼もしい。
肝心のエアロパーツの効果だが、120km/h制限の高速道路を走行するような場面ではスピードが上がるにしたがって接地感が高まり、巡行域で直進安定性がさらに増す感覚があった。速度がより高まるサーキットのストレートなら、その効果がはっきりと表れるに違いない。
こうしたこだわりが詰まったクルマが547万5000円から582万5000円、モータースポーツ参戦用の「GRヤリスRC+エアロパフォーマンスパッケージ」なら405万5000円から440万5000円で手に入るというのも驚き。身近なクルマで本格的なスポーツドライビングを楽しみたいという人にとって、バリエーション豊かなGRヤリスはますます目が離せない存在になりそうだ。
(文=生方 聡/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3995×1805×1455mm
ホイールベース:2560mm
車重:1310kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.6リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:304PS(224kW)/6500rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/3250-4600rpm
タイヤ:(前)225/40ZR18 92Y XL/(後)225/40ZR18 92Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:10.8km/リッター(WLTCモード)
価格:582万5000円/テスト車=660万5450円
オプション装備:ボディーカラー<プレシャスメタル>(5万5000円)/縦引きパーキングブレーキ<手動>+コンソールトレイ(13万2000円)/クーリングパッケージ<サブラジエーター、コールドエアインテークダクト>(11万円)/ナビパッケージ<コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus、ドライブレコーダー[前方]+簡易後方録画、ナノイーX、JBLプレミアムサウンドシステム[8スピーカー]、ETC2.0ユニット>(21万5600円)/デジタルキー(3万3000円)/寒冷地仕様<ウインドシールドデアイサー、PTCヒーター等>+リアフォグランプ(3万6850円)/カーボンルーフ<マーブル柄>(16万5000円) ※以下、販売店オプション GRフロアマット<アドバンスド>(3万3000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:962km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:341.4km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
テスト距離:9.8km/リッター(車載燃費計計測値)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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