ドゥカティ・モンスター(6MT)
無駄なものはいらない 2026.03.02 試乗記 ドゥカティのネイキッドスポーツ「モンスター」が5代目にモデルチェンジ。無駄をそぎ、必要なものを突き詰めてきた歴代モデルの哲学は、この新型にも受け継がれているのか? 「パニガーレV2」ゆずりのエンジンで175kgの車体を走らせる、ピュアな一台の魅力に触れた。受け継がれる精神と刷新されたコンポーネント
ドゥカティから2026年モデルとして、5代目となる新型モンスターがデビューした。思い起こせば、1992年のケルンショーでベールを脱いだ初代は、ネイキッドスポーツの概念を一変させた存在だった。その精神「必要なものだけを、余計なものはない」を継承しつつ、従来型から全面刷新されたのが、今回のモデルだ。
搭載される890cc V型2気筒エンジンは、2025年にセンセーショナルにデビューしたパニガーレV2のものがベース。吸気可変バルブタイミング機構「IVT」を採用し、最高出力は9000rpmで111PSを発生。最大トルクは91.1N・mで、4000~1万rpmの広い回転域でその80%以上を発生させる扱いやすさを備えている。さらに、従来型「テスタストレッチ」比で5.9kg軽く、またバルブクリアランス点検は4万5000kmごとでクラス最長水準……と、高性能で低ランニングコストな、ライダーにとってありがたいエンジンといえる。
車体は、エンジンもストレスメンバーとするモノコックフレーム構成。「パニガーレV4」ゆずりの設計思想を取り入れた、軽量両持ち式スイングアームや、SHOWA製サスペンションとの組み合わせで、乾燥重量は175kgと従来比4kgの軽量化を達成した。フロントブレーキはブレンボの「M4.32」ラジアルキャリパーとφ320mmのダブルディスク。足元にはピレリの「ディアブロロッソIV」を装着し、俊敏さと安定性を両立する。
電子制御も先進的で、6軸IMUを核としたコーナリング対応ABSと、トラクションコントロール、ウイリーコントロールを統合したシステムを搭載。4種類のライディングモードに応じて、バイクのキャラクターが自在に変化する。
デザインを見ても、隆々とした“バイソンバックタンク”や切り詰められたテールなどで、初代のデザインを現代的に再構築。アイコン性と最新技術を兼ね備えた一台に仕上がっている。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
数字以上の軽さと数字には表れない余裕
朝もやが残るスペイン・マラガの郊外路で、新型ドゥカティ・モンスターのシートにまたがる。新世代のV2エンジンはワンプッシュで瞬時に目覚めた。アイドリングは静かに鼓動を刻む感じで、明らかに軽やかでスマートではあるが、どこか、初代から続くモンスターの血脈もひしひしと感じさせる。
走りだしてすぐに思うのは、“質の高い軽さ”だ。スペック表にある175kgという驚異的な数字より、体感としてはさらに軽い。アクセルをほんの少し開けただけで、車体全体が抵抗なく、滑らかに路面を踏みしめていく。軽さと落ち着きが同居するこの感じは、最新のモノコックフレームや極限までコンパクト化されたV2エンジンがもたらした成果にほかならない。
街なかの交差点を曲がるような低速コーナーでも、モンスターはあくまで自然体だ。狭い路地を抜けるときにもラインの選択に自由度があるほどで、ぬれ始めたアスファルトの上でも、奥深いトラクションを感じさせてくれる。ブレーキタッチは優しくもダイレクトで、ライダーの意思に忠実だ。
エンジンも111PSという数字以上の余裕を見せる。回転上昇は滑らかで軽く、それでいてどの回転域からでも十分なトルクが取り出せる、現代的なキャラクターを持ち合わせる。バルブタイミングが切り替わる中速域からの加速でもう一段アクセルを開けると、生き生きとした躍動を感じる。流しているときは乾いていた排気音は、回転上昇とともに甲高い咆哮(ほうこう)へと変わり、ピークまできれいに伸びていく。「あっ、パニガーレV2だよ、コレ!」とニヤリ。高速域では振動や曖昧さは消え、ライディングモードを「スポーツ」に切り替えれば、さらにシャープな操作にも応答する。現代的なハイテク感もしっかりあるエンジンだ。
ハンドル位置とフットポジションは、長時間のライディングでも疲れにくい、絶妙なバランスだ。ネイキッドとしての開放感がありながら、体が車体にムリなくなじむ。ちなみに、日本向けにはシート高がスタンダード(815mm)より最大で40mm低くなるローシート&ローサスペンション仕様(775mm)も設定されているという。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ピュアな思想とモダンなテクノロジー
肩の力を抜いて走っているだけなのに、アクセルひとつで走りにリズムが生まれる。特に郊外のワインディングロードでは、ねらったラインに乗せていける素直さが際立った。残念ながら、試乗の日の天気は雨だったが、コーナリング中でも必要に応じてABSとトラコンを作動させ、車体を安定させてくれる電子制御が本当にありがたく、心強かった。初めて乗るライダーでも、すぐに安心感が得られるはずだ。
歴代モンスターの、必要なもの以外をそぎ落とすという思想は、新型になってより研ぎ澄まされた感がある。見た目のコンパクトさ、身のこなしの軽さ、余計な雑味を感じさせない走りのアプローチは、ネイキッドの本質を今日に再提示している。そのいっぽうで、ライダーをサポートする電子制御などの現代的装備が、新型モンスターにただの復刻モノとは一線を画す完成度を与えている。
ひとたびアクセルをひねれば、僕たちがバイクに求めてきた走る喜びを余すことなく具現してみせる。新しいモンスターは単なるノスタルジーではなく、“進化したドゥカティ・モンスター”そのものだ。
(文=佐川健太郎<ケニー佐川>/写真=ドゥカティ/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=--×--×--mm
ホイールベース:1492mm
シート高:815mm(日本仕様は775mm)
重量:175kg(燃料を除く)
エンジン:890cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:111PS(81.6kW)/9000rpm
最大トルク:91.1N・m(9.3kgf・m)/7250rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.2リッター/100km(約19.2km/リッター)
価格:166万2000円~

佐川 健太郎(ケニー佐川)
モーターサイクルジャーナリスト。広告出版会社、雑誌編集者を経て現在は二輪専門誌やウェブメディアで活躍。そのかたわら、ライディングスクールの講師を務めるなど安全運転普及にも注力する。国内外でのニューモデル試乗のほか、メーカーやディーラーのアドバイザーとしても活動中。(株)モト・マニアックス代表。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。













