【FN 2005】第8戦もてぎ、本山哲、会心の走りで優勝、タイトル奪回を果たす!
2005.10.24 自動車ニュース【FN 2005】第8戦もてぎ、本山哲、会心の走りで優勝、タイトル奪回を果たす!
「ここで決めたい」――。2年ぶりのタイトル獲得を視野に入れた本山哲は、ルーティンワークのピットストップ以外、一度もトップの座を明け渡すことなくレースをリードし続けた。ポールポジションから好スタートを切り、後続との攻防戦ではなく“逃げ切る”ことに尽力し、今季3勝目をマーク。同時に自身4度目となるシリーズタイトルを獲得した。
およそ2ヶ月ぶりとなった全日本選手権フォーミュラ・ニッポンの第8戦は、2005年10月23日、栃木県・ツインリンクもてぎで決勝レースが行われ、予選から申し分のない走りを見せつけた本山が完勝。シリーズポイントで本山を追っていた井出有治が5位に終わったため、最終戦を待たずして本山のシリーズチャンピオンが決定した。
2位には予選4位スタートの山本左近、3位に予選7位だった土屋武士が続き、ともに今季初表彰台に上がった。
■ウェット予選、本山が底力を発揮
予選1回目は雨の中、マシンを滑らせて姿勢を崩すマシンが続出。本山は6番手とやや出遅れ、井出に至っては開始早々に赤旗原因となるコースアウトをきっし、自力復帰できずアタックのチャンスを失ってしまった。
だが、雨が止んだ午後からの予選2回目では、本山がここ一発の強さを見せた。気温が下がり、路面も終始ウェットコンディションの中、前半こそスリッピーな路面を得意とするブノワ・トレルイエが総合トップタイムを更新する勢いを見せたが、終盤、路面状況が向上すると各車こぞってタイムアップに成功。目まぐるしくポジションが入れ代わり、アンドレ・ロッテラーがトップに立った。
ほぼポールポジション確定かと思われたが、予選終了間際、本山がラストアタックでこれを0.006秒上回り、僅差でポールポジション奪取に成功。2位のロッテラーに続いたのは、トレルイエだった。
4位には先のF1日本GPでジョーダングランプリのテストドライバーを務めた山本左近がつけた。一方、タイトル争いのライバル、井出とリチャード・ライアンは、5、6位に留まった。
■ウェットからドライ、本山はレイト・ピットインを選択
決勝日、朝のフリー走行時にはまだ雨が残り、気温も11度と肌寒さを感じたが、午後2時15分からの決勝では天候が好転。爽やかな秋空がサーキット上空一面に広がった。
土・日を通して初めてのドライコンディションの中、PPの本山が難なくスタートを決め、レースをリード。2番手ロッテラーが執拗に詰め寄ったが、巧みなライン取りを見せる本山には歯が立たない。焦ったロッテラーは挙句の果てに単独スピン、早々に自滅した。
前半、2ストップ作戦を採る小暮卓史が次々と前のクルマをパスし、2位に浮上するが、レースの3分の1、20周を過ぎた頃から次々と他車もピットストップを行い、順位が変動。本山を新たに追うドライバーは山本となった。
レース折り返しの時点で、トップ本山と山本との差は約5秒。猛追する3位トレルイエがトップ争いに加わったが、その後のピット作業で給油ノズルが外れる前にリスタートするコミュニケーションミスが出て、大きくタイムロス。上位争いからも脱落した。
トップ本山のピットインは、レース3分の2を終えた42周のとき。2番手山本も、終盤での追い上げに勝負の的を絞り込み、追随するかたちでマシンをピットに戻した。
■井出が自滅し、タイトルの可能性を失う
逃げる本山に追う山本、その後方では土屋、ライアン、井出の3人が団子状態で攻防戦を展開。今回、本山に優勝を許した場合、ランキング2位の井出は3位以内でフィニッシュしなければタイトル争いを最終戦へと持ち越すことはできない。
その焦りからか、井出はライアンとの激しいバトル末に接触。フロントウィングの左翼端をライアンの左リアタイヤにヒットさせ、傷めてしまった。後方からの不意打ちにライアンのタイヤはスローパンクチャー、ピットインを余儀なくされた。
4位に浮上した井出は傷ついたマシンを懸命にコントロール。「レース序盤からギアに不安を抱えるコンディションだった」というが、ハイペースで周回を続ける意地を見せ、逃げる土屋の背後から、タイトル獲得の望みをかけた走りに徹した。だが、あと一歩が及ばず、4位に甘んじた。
■終盤、山本が最速ラップで本山を猛追
レース後半には独走を期待した本山だったが、2位山本の大健闘によって最後まで全開モードを強いられた。
一時は8秒以上あった2台の差は、終盤に入って山本のペースが格段に向上。ラスト5周で5秒を切り、ファイナルラップでは0.925秒まで縮まった。だが、バトルまでには至らず、そのまま62周の闘いに幕が引かれた。
「アンドレ(ロッテラー)がいなくなってから、もっと楽なレースになるものだと思っていたが、(山本)左近が思った以上に速くて、最後まで気が抜けなかった」とレースを振り返った本山。もてぎで勝利し、タイトルを獲ると宣言したとおりの闘いを実現させ、笑みをこぼした。
一方、自身初の2位表彰台を獲得した山本は、「勝つつもりで最後までレースをした。本山選手をあそこまで追い詰めることができたのは今後の自信につながるが、本心はやはり悔しい。最終戦は勝ちを狙いたい」と、ルーキーらしからぬ冷静なコメントでレースを振り返った。
本山がシリーズチャンピオンのタイトルを引っさげて迎える最終戦は、11月27日、鈴鹿サーキットが舞台となる。井出を筆頭に、王者に次ぐ好ポジションを狙う闘いに注目が集まる。
(文=島村元子/写真=KLM Photographics J)
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