国内8社、内燃機関研究の効率化へ向けて協力
2014.05.20 自動車ニュース ![]() |
国内自動車メーカー8社、内燃機関研究の効率化へ向けて協力
自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)は2014年5月19日、東京・青山において、同組合設立に関する説明会、および記者会見を実施した。
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■目的は産官学の連携による研究の効率化
AICEとは、内燃機関研究の効率化に向けた産学官の協力を促すため、2014年4月1日に設立された組織である。スズキ、ダイハツ工業、トヨタ自動車、日産自動車、富士重工業、本田技術研究所、マツダ、三菱自動車工業の国内メーカー8社と、一般財団法人日本自動車研究所が発足させたもので、現在、独立行政法人産業技術総合研究所にも参加を働きかけているという。
今日の内燃機関の開発では、低燃費化と排出ガスのクリーン化が喫緊の課題となる一方、ガソリン、軽油、ガス燃料、バイオ燃料といった自動車用燃料の多様化や、先進国、新興国といった市場ニーズの多様化に伴うプロジェクトの増加が、開発のリソースを圧迫する状況にあるという。
今回の組合設立の目的は、そうした研究の現状を踏まえ、各社で協調できる基礎研究、応用研究の分野における連携を促進。限られたリソースを競争分野(プロダクト開発)に集中できる環境を整えることにある。
事業の手順としては、まずAICEが各社共通の研究課題を設定。それに関する研究を大学や公的研究機関に委託するとともに、その研究を補助する。平成26年度の事業費は、経済産業省補助事業費を含めて約10億円。このうちの5億円が、各社による課金でまかなわれている。
現在設定されている研究課題は、以下の通り。
・「ディーゼル後処理技術の高度化研究」
ディーゼルパーティキュレートフィルター(DPF)、排出ガス再循環(EGR)、NOx触媒の技術における各種の現象解析とモデル化を行い、対応技術の予測シミュレーションや評価手法の開発を行う。
・「自動車用内燃機関の燃焼技術の高度化研究」
ノッキング現象やPM発生現象の解明や摩擦低減技術の評価手法などを研究。各現象をモデル化して、対応技術の予測シミュレーションや評価方法の開発を行う。
・「エンジン性能調査」
海外車両のエンジン性能調査として、車両およびエンジンの排出ガス、燃費およびエネルギーフローの試験調査を行う。また、エンジンの各部品の摩擦力測定の試験調査を行う。
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■設立の動機は欧州勢に対する「危機感」
もともと日本における内燃機関の研究では、プロダクトの開発だけでなく、現象解明やそのモデル化、評価手法の確立といった基礎研究、応用研究についても、各メーカーが個別に行ってきた。
一方欧州では、戦後からこうした分野での共同研究や、標準化への協調を促すコンソーシアムが存在しており、研究開発の効率化や商品の標準化に大きく貢献してきたという。
AICEは、そうした欧州との差に対する危機感から設立されたものであり、理事長の大津啓司氏(本田技術研究所 常務執行役員)は説明会後の質疑応答において、「技術力では欧州メーカーに負けているという認識はないが、開発効率や、標準化へ向けて全体が一方向へ向かう力では後れを取っている。産官学が連携するスキームができれば、欧州メーカーに負けることはない。程度の差こそあるものの、欧州に対する危機感や、今のままでいいのかという意識は各社で共有しており、組合の取り組みが加速していく条件はそろっている」と語った。
(webCG)
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