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新型「トヨタ・ハリアー」いよいよ発売 狙い目のグレードは?

2020.06.26 デイリーコラム 渡辺 陽一郎

“300万円以下”でいいね!

最近のトヨタ車は、以前と違ってライバル車よりも上質とは限らず、グレード構成なども粗く思えることがある。しかし新型ハリアーでは周到だ。トヨタの妙味が味わえる。

新型ハリアーのエンジンは、2リッターの直列4気筒と、2.5リッターのハイブリッドだ。駆動方式は、両タイプに前輪駆動の2WDと4WDを設定した。ハイブリッドの4WDは、後輪をモーターで駆動するE-Fourになる。

価格関連でまず注目されるのは、ベーシックな2リッターエンジンを搭載する「S」の2WDを299万円に抑えたことだろう。Sの装備を見ると、輸入車などに多い“注目を集めるための低価格グレード”ではない。衝突被害軽減ブレーキ、車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、17インチアルミホイール、ディスプレイオーディオなども標準装着されていて「Sで十分」と思わせる。

ただし装備品の表を見ると、Sにはアダプティブハイビーム、スーパーUV&IRカットガラス、運転席の電動調節機能、リアゲートの電動開閉機能などが装着されない。シート生地も普通のファブリックで、合成皮革を使う上質なタイプではない。

これらの装備のうち、アダプティブハイビームは、対向車や先行車を検知するとハイビーム状態を保ちながら必要な遮光を行う機能だ。ハイビームで得られる優れた視界を損なわずに相手の車両の幻惑を抑え、安全性を向上させる。この装備はSにはオプションでも用意されないのだが、安全性を高めるからには、全グレードに装着可能にすべきだ。

新型「トヨタ・ハリアー」には、ガソリンエンジン車とハイブリッド車がそれぞれ5グレードずつラインナップされており、各グレードに2WD(FF)と4WDがあるため計20種類が選べる。写真は最廉価の「S」グレード。
新型「トヨタ・ハリアー」には、ガソリンエンジン車とハイブリッド車がそれぞれ5グレードずつラインナップされており、各グレードに2WD(FF)と4WDがあるため計20種類が選べる。写真は最廉価の「S」グレード。拡大
「ハリアー」のハイブリッド車のベアシャシー。ガソリンエンジン車とハイブリッド車の価格を比べてみると、後者のほうが高く、その差は2WDの場合で59万円。4WDでは61万円となっている。WLTCモードの燃費値で2WD車同士を比べた場合、年間走行距離を1万km走行すると、ガソリンエンジン車は約650リッター、ハイブリッド車は約450リッターのレギュラーガソリンを消費する。10年10万kmで、差は約2000リッター。あとは走りの質感も含めて比較検討することになるだろう。
「ハリアー」のハイブリッド車のベアシャシー。ガソリンエンジン車とハイブリッド車の価格を比べてみると、後者のほうが高く、その差は2WDの場合で59万円。4WDでは61万円となっている。WLTCモードの燃費値で2WD車同士を比べた場合、年間走行距離を1万km走行すると、ガソリンエンジン車は約650リッター、ハイブリッド車は約450リッターのレギュラーガソリンを消費する。10年10万kmで、差は約2000リッター。あとは走りの質感も含めて比較検討することになるだろう。拡大

中間グレードは高いものの……

またハリアーは都会的な上級SUVだから、合成皮革とファブリックを使ったシート生地、運転席の電動調節機能、リアゲートの電動開閉機能なども欲しい。そうなるとこれらを標準装着した「G」が魅力的に思えてくる。Gの価格は、2リッターエンジンを搭載する2WDが341万円だから、Sよりも42万円高い。それでも、Sに8万8000円でオプション設定される前後両方向録画機能付きデジタルインナーミラーなどが標準装着されるため、Gも決して割高にはならない。「341万円は高いなぁ」と思いつつ「ハリアーならSよりGだよね」という判断になりそうだ。

しかしさらに先がある。装備品の表を見続けると、「G“レザーパッケージ”」という仕様も目に留まるからだ。価格は2リッターエンジンの2WDで、Gよりも30万円高い371万円。レザーのパッケージだからシート生地が本革になるのは当然だが、違いはそれだけではなく、助手席の電動調節機能なども加わる。

あらためて考えると、助手席が手動調節では困る。助手席に座る奥さんから「アンタはやっぱり自分中心なのね」と言われてしまう。助手席の電動機能は使用頻度が低いとか、そういう問題ではなく、夫婦の話だ。

さらに“レザーパッケージ”には、運転席と助手席の快適温熱シート+シートベンチレーション機能も備わり、夏はシート自体もひんやりした感じになる。私個人は、何となく腰やおなかが痛くなりそうで好みに合わないが「ムレなくていい」という意見も多い。

“レザーパッケージ”の価格は前述の30万円だが、このうちの12万円は、シートに関係した装備の価格換算額で埋まる。本革シート生地の正味価格は、18万円前後で妥当な金額だ。それにしてもG“レザーパッケージ”は371万円だから、安いと思ったSの299万円に比べると、装備品表を見ているだけで72万円も高くなった。

「ハリアーG“レザーパッケージ”」。外観上は18インチの切削光輝アルミホイールが特徴。
「ハリアーG“レザーパッケージ”」。外観上は18インチの切削光輝アルミホイールが特徴。拡大
上質感がただよう「Z“レザーパッケージ”」のインテリア。
上質感がただよう「Z“レザーパッケージ”」のインテリア。拡大
本革シートが選べるのは、「G」と「Z」に設定される“レザーパッケージ”のみ。ほかはファブリックまたはファブリック+合成皮革となる。
本革シートが選べるのは、「G」と「Z」に設定される“レザーパッケージ”のみ。ほかはファブリックまたはファブリック+合成皮革となる。拡大

高価な仕様に納得できるか

以上がトヨタの戦略だ。これは成功した様子で、販売店では「Gと最上級グレード『Z』の“レザーパッケージ”は予想以上に注文が多く、現時点(2020年6月下旬)で契約を頂いても、納車は2021年1月以降です。ほかのグレードなら9月から10月です」という。

納期が長くてコロナ離婚は困るし、夫婦円満のために助手席を電動調節できるG“レザーパッケージ”が欲しい。「でも371万円は無理だし……」と悩んでいると、セールスマンが次の手を繰り出してくる。「ハリアーは人気の新型車なので、残価設定ローンの残価率(数年後の残存価値)も高いです。従って月々の返済額を安く抑えられます」。

そこで一般的な5年間の返済期間を選び、2リッターで2WDのS(299万円)、G(341万円)、G“レザーパッケージ”(371万円)で残価設定ローンの返済額を算出した。

そうすると均等払いによる月々の返済額は、Sが3万7900円、Gは4万4814円、G“レザーパッケージ”は4万8790円だ。SとGの差額は6914円、GとG“レザーパッケージ”の差額は3976円になる。後者の差額は約4000円だから、昔のセールストーク風に言えば「一日一杯のコーヒー、わずか10日分で、豪華な本革シートと充実した装備が手に入りますよ」という話になる。

ハリアーの車両重量は1500kg以上で、しかも上級志向のSUVだ。2リッターのノーマルエンジンは、実用回転域の駆動力を高めた直噴式ではあるものの、少々物足りないだろう。加速が滑らかで動力性能にも余裕のある2.5リッターハイブリッドが好ましいが、価格は2WDの場合で2リッターエンジンよりも59万円高い。ハイブリッドのG“レザーパッケージ”は430万円で、4WD仕様なら452万円だ。この価格になると、(400~500万円クラスのZやZ“レザーパッケージ”もそうだが)一概に推奨できない。

パワートレインの差異については、購入時に、販売店の試乗車でガソリンエンジン車とハイブリッド車を乗り比べて判断するのがいい。走りの余裕か、内装の質感か。そこが悩みどころだが、一般的には後者の質感を重視してG“レザーパッケージ”を選ぶことになるのだろう。

(文=渡辺陽一郎/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)

今回主に比較している「S」「G」のほか、新型「ハリアー」には、上級グレード「Z」がラインナップされている。GとZの価格差は52万円で、19インチアルミホイール(高輝度シルバー塗装)やリアクロストラフィックオートブレーキ、ドアミラーから照射される足元照明、カラーヘッドアップディスプレイ、T-Connect SDナビゲーションシステム+JBLプレミアムサウンドシステムなどが標準装備の差異となる。
今回主に比較している「S」「G」のほか、新型「ハリアー」には、上級グレード「Z」がラインナップされている。GとZの価格差は52万円で、19インチアルミホイール(高輝度シルバー塗装)やリアクロストラフィックオートブレーキ、ドアミラーから照射される足元照明、カラーヘッドアップディスプレイ、T-Connect SDナビゲーションシステム+JBLプレミアムサウンドシステムなどが標準装備の差異となる。拡大
「Z」および「Z“レザーパッケージ”」に標準装備となるT-Connect SDナビゲーションシステム。画面サイズは12.3インチで、下位グレードの8インチとは見た目からして差がある。
「Z」および「Z“レザーパッケージ”」に標準装備となるT-Connect SDナビゲーションシステム。画面サイズは12.3インチで、下位グレードの8インチとは見た目からして差がある。拡大
調光パノラマルーフは、19万8000円のオプション。ただし、上級グレード「Z」「Z“レザーパッケージ”」でしか選べない。
調光パノラマルーフは、19万8000円のオプション。ただし、上級グレード「Z」「Z“レザーパッケージ”」でしか選べない。拡大
渡辺 陽一郎

渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆さまにけがを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。特にクルマには、交通事故を発生させる甚大な欠点がある。今はボディーが大きく、後方視界の悪い車種も増えており、必ずしも安全性が向上したとは限らない。常にメーカーや行政と対峙(たいじ)する心を忘れず、お客さまの不利益になることは、迅速かつ正確に報道せねばならない。 従って執筆の対象も、試乗記をはじめとする車両の紹介、メカニズムや装備の解説、価格やグレード構成、買い得な車種やグレードの見分け方、リセールバリュー、値引き、保険、税金、取り締まりなど、カーライフに関する全般の事柄に及ぶ。クルマ好きの視点から、ヒストリー関連の執筆も手がけている。

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