アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.04 デイリーコラム目標は2030年のタイトル争い
2026年からF1に参戦するアウディは、2025年11月に「アウディR26コンセプト」を発表した。2026年型マシンを正式に発表するのは2026年1月になるが、その前にビジュアルアイデンティティーを公開しておこうというわけだ。有り体に言えば、カラーリングの発表である。形に大きな意味はない。真っ先に競合チームに手の内を明かす必要はなく、おおよそのサイズ感を示しているにすぎないと捉えるのが賢明だ。
アウディAGのゲルノート・デルナーCEOは、ビジュアルアイデンティティーの発表にあたり、次のようにコメントした。
「私たちはF1にただ参加するのではありません。勝つために参入します。同時に、F1では一夜でトップチームになれないことも理解しています。それには時間と忍耐、そして現状を絶えず問い直す姿勢が必要です。2030年までに、私たちは世界選手権タイトルを争うチームになることを目指します」
F1の競争の激しさを考えれば、現実的な目標といえるだろう。アウディの明確な意思を表現したカラーリングは「チタニウム(シルバー)」と「カーボンブラック」、そして、R26から新たに導入した「アウディレッド」の3色で構成される。サイドビューで見た際に前半のチタニウムと後半のカーボンブラック、アウディレッドが大胆に切り替わっているのが特徴。フロントウイング前端やサイドポンツーン開口部、ヘッドレスト後方上部の開口部にアウディレッドが差し色として用いられている。ノーズ先端のフォーリングスもアウディレッドだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
2026年はF1新規参入に最適なタイミング
ユルゲン・リッタースベルガーCFOは財務の専門家の立場から、アウディがF1に参戦する狙いを次のように説明した。
「F1の巨大なリーチを活用し、とくに急速に成長している若年層でブランドの新たな顧客を獲得するチャンスがあります。コストキャップ(予算制限)のおかげで、F1はこれまで以上に財政的にも持続可能になりました。(F1参戦は)アウディにとって、経済的にも理にかなっています」
日本にいると実感しづらいが、F1はいまだに成長著しいスポーツコンテンツだ。アウディの資料(の元になっているのはF1の資料だろう)によると、F1は全世界に8億2000万人以上のファンを持ち、2024年は16億人のテレビ視聴者がレースを観戦。Netflixのドキュメンタリーシリーズや、ブラッド・ピット主演の映画が幅広い視聴者に向けてF1の魅力を伝えるのに貢献。過去2年でファン層を約50%刷新するのに成功し、とくにアウディのコア市場である北米、ヨーロッパ、中国の若者への影響力が大きいことをアウディは歓迎している。
F1中継のTV視聴者の3人に1人は35歳未満であり、現地観戦者に限るとその割合は44%に上昇。現地観戦者のほぼ3人に1人が女性なのも、新しいターゲット層を開拓したいアウディには魅力的に映っている。顧客の若返りを図るツールとしてF1を利用しようというわけだ。
2026年ほどF1に新規参入するのに最適なタイミングはない。なぜなら、パワーユニットとシャシーに関する技術規則が同時に大きく変更されるからだ。1.6リッターV6直噴ターボの排気量、形式に変更はないが、ターボチャージャーと一体となって熱エネルギーを回収して電気エネルギーに変換するMGU-Hは廃止され、エンジンのクランク軸につないで運動エネルギーを回生するMGU-Kのみのシンプルな構成になる。さらに、100%カーボンニュートラル燃料の使用が義務づけられるのが大きな変化点だ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ジョナサン・ウィートリーがチームを率いる
いっぽうシャシー側では、全幅が100mm狭くなって最大1900mmになり、ホイールベースの上限が200mm短くなって3400mmになる。車体寸法が小さくなるのに合わせてタイヤサイズも小さくなり、グリップレベルは低くなる。空力規定も一新される。つまり、開発は全部やり直しになる。アウディはこの状態を「リセット」と表現しているが、新規参戦チームにとってはチャンスなわけで、だからアウディは2026年という年を参戦の年に選んだ。
準備は万端である。パワーユニットはドイツ・ノイブルクにある既存のモータースポーツ開発拠点を拡充し、2022年に開発を開始。シャシー側の開発はスイスにあるザウバーグループを買収して行い、ここでチームの運営も担う。さらに、最新の技術情報を収集する狙いでシリコンバレーならぬモータースポーツバレーと呼ばれるイギリス・シルバーストーン近郊にテクノロジーオフィスを開設した。
オペレーション面では、2019年から2022年までフェラーリのチーム代表を務めたマッティア・ビノットをアウディF1プロジェクトの責任者に据え、常勝レッドブルの立役者のひとりであるジョナサン・ウィートリーを引き抜いてチーム代表に据えた。ドライバーはF1参戦歴14年のベテラン、ニコ・ヒュルケンベルグと、2024年F2チャンピオンの若手、ガブリエル・ボルトレートのコンビである。
アウディは2030年にタイトル争いをするためには何が必要なのかを見定め、そこからバックキャストし必要なものを一つひとつ手に入れ、入念に準備していった。そんなふうにみえる。ビジュアルアイデンティティーのお披露目は映画でいえば、公開前のティーザー第1弾にすぎない。それを見て「何? どうなっているの?」と浮き足立っているわれわれは、すでにアウディの術中にはまっているのかもしれない。
(文=世良耕太/写真=アウディ/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

世良 耕太
-
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る 2026.1.16 英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。
-
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する 2026.1.15 日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。
-
30年の取材歴で初めてのケースも 2025年の旧車イベントで出会った激レア車 2026.1.14 基本的に旧車イベントに展示されるのは希少なクルマばかりだが、取材を続けていると時折「これは!」という個体に遭遇する。30年超の取材歴を誇る沼田 亨が、2025年の後半に出会った特別なモデルを紹介する。
-
東京オートサロンでの新しい試み マツダのパーツメーカー見学ツアーに参加して 2026.1.13 マツダが「東京オートサロン2026」でFIJITSUBO、RAYS、Bremboの各ブースをめぐるコラボレーションツアーを開催。カスタムの間口を広める挑戦は、参加者にどう受け止められたのか? カスタムカー/チューニングカーの祭典で見つけた、新しい試みに密着した。
-
やめられない、とまらない! 2026年は一気に普及してほしい、自動車の便利な装備3選 2026.1.12 2025年に体験したなかで、2026年以降はもっと普及してほしいと思わずにはいられない、自動車の装備・機能とは? 数々の国産車・輸入車に試乗した世良耕太がイチオシのアイテムをピックアップ。その魅力について語る。
-
NEW
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。 -
第858回:レースの技術を市販車に! 日産が「オーラNISMO RSコンセプト」で見せた本気
2026.1.15エディターから一言日産が「東京オートサロン2026」で発表した「オーラNISMO RSコンセプト」。このクルマはただのコンセプトカーではなく、実際のレースで得た技術を市販車にフィードバックするための“検証車”だった! 新しい挑戦に込めた気概を、NISMOの開発責任者が語る。 -
ルノー・グランカングー クルール
2026.1.15画像・写真3列7座の新型マルチパーパスビークル「ルノー・グランカングー クルール」が、2026年2月5日に発売される。それに先駆けて公開された実車の外装・内装を、豊富な写真で紹介する。 -
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する
2026.1.15デイリーコラム日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。 -
ホンダ・プレリュード(前編)
2026.1.15あの多田哲哉の自動車放談トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんが今回試乗するのは、24年ぶりに復活した「ホンダ・プレリュード」。話題のスペシャルティーカーを、クルマづくりのプロの視点で熱く語る。










































