2025年の“推しグルマ”を発表! 渡辺敏史の私的カー・オブ・ザ・イヤー
2025.11.28 デイリーコラム日本でも存在感を増すBEV
毎年毎度のことながら、こういうお題を振られると、もうそんな時期なのか、また年をひとつ重ねてしまった……としみじみしてしまいます。かれこれ半世紀以上ものんきにクルマバカを続けてきて、それがメシの種にもなっているわけですから、平和には感謝するばかりです。やたらきな臭い今日この頃ゆえ、来年はより平穏な一年になりますよう願わずにはいられませんね。
というわけで、2025年の私的カー・オブ・ザ・イヤーということなのですが、先日、別媒体にてそんな企画で偶然清水草一さんと対談した際には、「スズキ・ジムニー」にとうとうアダプティブクルーズコントロールがついて無双とか、「マツダ2 15MB」が延命してバンザイとか、ネタの偏りが激しかったので、示し合わせて本家である日本カー・オブ・ザ・イヤーのノミネート車から選ばせていただくことにしました。
と、その顔ぶれをみるに明確な兆候といえば、電動化の流れが加速していること。純然たる内燃機車といえば、軽やクロカン系SUVなどごくわずか。全体の2割以下という感じです。メルセデス・ベンツやステランティスなど、輸入車もラインナップのハイブリッド化が随分進んだんだなあとあらためて気づかされます。
それに比例して増えているのが、電気自動車(BEV)のリリースです。その数、ノミネート車35モデルのうち12モデル。実に3分の1超にのぼります。日本車でも「ホンダN-ONE e:」や新型「日産リーフ」などが投入されましたが、輸入車ではアウディの「A6 e-tron」「Q6 e-tron」「フォルクスワーゲンID. Buzz」「BYDシーライオン7」「ポルシェ・マカン」と、ハイブリッドの普及期に迫る勢いです。
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「キャデラック・リリック」に宿るGMの経験値
低い、低いと言われている日本の新車販売におけるBEVのシェアですが、実は輸入銘柄だと15%近くにのぼります。世界的尺度でみればBEV販売が停滞しているなか、その比率が低い割に補助金は手厚い日本市場は、まだまだBEVを受け入れる余地があるのでは……と海外メーカーからの期待値が高い。そのぶんが戦略的価格などに反映されているわけです。そんな輸入BEVですが、ドイツ勢などはモノが2世代目に移行し、走行フィールもさることながら、実電費や充電速度などにも進化の跡がみてとれます。その歩みを知るにつれ、技術的なキャッチアップと経験値の積み上げとは別腹で考えないとならないのかなと思うところはあるわけです。
そんななかで、なるほどと感心させられたのがキャデラックの「リリック」でした。ゼネラルモーターズ(GM)は本格的にBEVの量産を手がけてからの時は短いですが、経験値としては、1996年に「EV1」を手がけ、2010年にはレンジエクステンダーというかたちながら「ボルト」を発売しています。R&Dの範囲が広く深いこともあって、トライ&エラーの歴史は他社よりも多く重ねているかもしれません。
リリックは、日本の路面とタイヤが合わないのか、単にバネ下が重いのか、快適性に関してはもうひと声の感があるのですが、なにがスゴいかといえばパワートレインの洗練度です(参照)。BEVのいいところはモーターの制御がデジタルアウトプットゆえ、走りのキャラクターを超絶緻密な駆動制御でチューニングできる、その余幅の広さにあるわけですが、リリックはそれをテスラのようなバカ加速に象徴される非日常的ダイナミクスではなく、日常的な速度域でいかに速度のコントロールをしやすくするかという方向で味つけしています。具体的な挙動としては、自分の足裏がクルマと直結したかのように、加減速がドライバーの意思どおりに行えるということです。
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「デンキで走りゃいい」って時代は終わり
かつて『webCG』でも試乗記をあげたロールス・ロイスの「スペクター」は、圧倒的に孤高のブランドであるがゆえに、パワートレインが内燃機であれモーターであれ、同一の世界を描けばいいという圧倒的自信にみなぎっていました。対すればリリックは、がぜんカジュアルで民主的ですが、パワートレインの味つけとしては同じような方向性を感じさせます。
いかにドライバーの感覚に忠実に応答するか。そのためにモーターの特性を活用する。そういう点でリリックは、もうひとつ面白いギミックを採用していました。それが「バリアブル回生オンデマンドシステム」です。ステアリングの左側に据えられたパドルの、1cmにも満たないストロークで、回生ブレーキを全停止までコントロールできる。タウンライドの優しいブレーキ操作はもちろんのこと、テールランプをともさないほどの微減速や緩減速に、高速道路での速度調整やコーナー入り口でのちょっとした荷重移動など、慣れればさまざまなシチュエーションで活用できるようになります。しかも100%回生減速ですから、うまく使いこなすほどに走行可能距離の足しになり……と、御する楽しさに実利、そしてインターフェイスの未来性も、きちんと両建てできています。
今年は欧州勢のBEVも需要やエンジニアリング的に2巡目へと突入し、単に粗相なく走るというだけでなく、さまざまな方向へと将来性を広げつつあるようにうかがえました。もはやxEV同士でマウント合戦をやることに意味はありません。となると、これから出てくるトヨタやホンダの次世代BEVにはどんな個性や提案が織り込まれているか。そのハードルがじわじわと高くなっていると感じたのが、今年の印象的なことでした。
(文=渡辺敏史/写真=スズキ、ゼネラルモーターズ・ジャパン、フォルクスワーゲン グループ ジャパン、マツダ、郡大二郎、webCG/編集=堀田剛資)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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