【F1 2021】3連勝に5連勝 レッドブル・リンクがオレンジ色に燃えた日

2021.07.05 自動車ニュース
F1第9戦オーストリアGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真)。3戦連続のポール・トゥ・ウィンで、今季5勝目、通算15勝目を飾った。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
F1第9戦オーストリアGPを制したレッドブルのマックス・フェルスタッペン(写真)。3戦連続のポール・トゥ・ウィンで、今季5勝目、通算15勝目を飾った。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

2021年7月4日、オーストリアのレッドブル・リンク(4.318km)で行われたF1世界選手権第9戦オーストリアGP。前週に引き続き、レッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンが文句なしの完勝を遂げた。

オランダのナショナルカラー、オレンジをまとった大応援団を前に圧勝したフェルスタッペン(写真)。チームは彼にのみ空力アップデートを投入し、見事3戦連続ポールを獲得。レースでは「まるでレールの上を走るかのようだった」と語るように、まったく隙もミスもなく、ポールに優勝、全周リードにファステストラップと自身初のグランドスラムを達成した。これでランキング2位ハミルトンとのポイント差は、1勝=25点をはるかに超える32点にまで拡大した。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
オランダのナショナルカラー、オレンジをまとった大応援団を前に圧勝したフェルスタッペン(写真)。チームは彼にのみ空力アップデートを投入し、見事3戦連続ポールを獲得。レースでは「まるでレールの上を走るかのようだった」と語るように、まったく隙もミスもなく、ポールに優勝、全周リードにファステストラップと自身初のグランドスラムを達成した。これでランキング2位ハミルトンとのポイント差は、1勝=25点をはるかに超える32点にまで拡大した。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大
今季ここまでのベストリザルトは、4回記録していた3位だったメルセデスのバルテリ・ボッタス(写真)。オーストリアGPでは、セルジオ・ペレスがコースオフ、ランド・ノリスが5秒加算ペナルティーと前車が順位を落としたことで5位スタートから3位に。さらにマシンにダメージを負ったチームメイトのルイス・ハミルトンを抜くと2位までポジションを上げ、今季最高位でフィニッシュした。レッドブル・リンクでは、誰よりも多い通算7回目のポディウムとなった。(Photo=Mercedes)
今季ここまでのベストリザルトは、4回記録していた3位だったメルセデスのバルテリ・ボッタス(写真)。オーストリアGPでは、セルジオ・ペレスがコースオフ、ランド・ノリスが5秒加算ペナルティーと前車が順位を落としたことで5位スタートから3位に。さらにマシンにダメージを負ったチームメイトのルイス・ハミルトンを抜くと2位までポジションを上げ、今季最高位でフィニッシュした。レッドブル・リンクでは、誰よりも多い通算7回目のポディウムとなった。(Photo=Mercedes)拡大

今季か来季か 開発の悩み

2014年から続くターボハイブリッド規定下で初めてメルセデスが4連敗を喫した前戦シュタイアーマルクGP。マックス・フェルスタッペンに独走を許し2位に終わったルイス・ハミルトンは、レッドブルに追いつくためには「マシンのアップデートが必要だ」とチームに発破をかけた。

一方でメルセデスのトト・ウォルフ代表は「今季型マシンの開発はもう終わり」と発言しメディアも色めきたったのだが、その後、技術部門のトップであるジェームズ・アリソンが「アップグレードはまだある」とボスのコメントを否定。矛盾する2人の発言に、メルセデス内で何が起こったのかいぶかしがる向きも多かったろうが、その背景には、2022年シーズンに向けた新型マシンの開発へいち早くリソースを振り分けたいとする、メルセデスのみならず全チームに共通した事情がある。

来季はレギュレーションが一新され、これまでの空力コンセプトを根本から変える大変革を迎える。折からの年間予算制限で、今後は開発にかかるコストは青天井では済まないとなれば、新ルールにのっとったマシン開発、その初期段階でのつまずきは命取りになりかねない。メルセデスの誤算は、レッドブルのシーズン中の躍進があまりに目覚ましく、当初予定していた開発スケジュールを見直さざるを得なかったということかもしれない。2022年の開発に集中したいが、今季の戦いにも敗れたくはない。前人未到の8連覇という大記録をみすみす逃すなんてことは何としても避けたいはずだから、王者の悩みは大きい。

車体と異なり2024年まで凍結が決まっているパワーユニットも、新規定に向けて協議が始まった。オーストリアGP中、今季限りで撤退するホンダを除く既存3メーカー(メルセデス、フェラーリ、ルノー)に、フォルクスワーゲン グループからアウディとポルシェが加わり、次世代パワーユニットについて話し合いが持たれた。コース外での駆け引きも、また激しさを増しているもようだ。

若手の台頭が目立ったオーストリアGP。なかでもマクラーレンのノリス(写真)は、予選でポールシッターのフェルスタッペンに0.048秒まで肉薄する自身最高2位を獲得し周囲を驚かせた。レースではペレスを押し出したことで5秒加算ペナルティーを受け2位から4位に落ちるも、ハミルトンの脱落でキャリアベストタイの3位表彰台。ペナルティーには「ペレスが勝手にコースオフしただけ」と納得しておらず、それでも4度目のポディウムには笑顔を見せていた。もう1人の若手、ウィリアムズのジョージ・ラッセルは、長く低迷していた同チームで初めてQ2を突破、8番グリッドと健闘。レース終盤まで10位を走っていたが、最後に2冠王者フェルナンド・アロンソのアルピーヌに抜かれ11位、惜しくも入賞ならず。(Photo=McLaren)
若手の台頭が目立ったオーストリアGP。なかでもマクラーレンのノリス(写真)は、予選でポールシッターのフェルスタッペンに0.048秒まで肉薄する自身最高2位を獲得し周囲を驚かせた。レースではペレスを押し出したことで5秒加算ペナルティーを受け2位から4位に落ちるも、ハミルトンの脱落でキャリアベストタイの3位表彰台。ペナルティーには「ペレスが勝手にコースオフしただけ」と納得しておらず、それでも4度目のポディウムには笑顔を見せていた。もう1人の若手、ウィリアムズのジョージ・ラッセルは、長く低迷していた同チームで初めてQ2を突破、8番グリッドと健闘。レース終盤まで10位を走っていたが、最後に2冠王者フェルナンド・アロンソのアルピーヌに抜かれ11位、惜しくも入賞ならず。(Photo=McLaren)拡大

フェルスタッペンが3連続ポール 僅差の2位は……

3週連続開催の3戦目にしてレッドブル・リンクでの2戦目。何とかして連敗を止めたいメルセデスとハミルトンは、7月3日に2023年までの契約延長を発表し、チャンピオンシップへ集中できる環境は整ったようだが、いかんせん対処の時間はなかった。

予選では、今季これまで8戦4勝と波に乗っていたフェルスタッペンがQ1、Q2と余裕でトップタイムをマークしQ3に突入。結果的に自身初の3戦連続、今シーズン4回目、通算7回目のポールポジションを奪ったのだが、思わぬ伏兵に危うくその地位を奪われそうになった。マクラーレンを駆るランド・ノリスが、0.048秒という僅差で2位につけたのだ。GP3年目のノリスにとっては自身最高、初のフロントロースタートとなり、またマクラーレンとしては2012年ブラジルGP以来となる最前列スタートとなった。

セルジオ・ペレスが3位につけて“レッドブルの壁”を築き、その後ろにハミルトン4位、バルテリ・ボッタス5位とメルセデス勢を追いやった。アルファタウリ勢は、ピエール・ガスリーが定位置の6位、そして角田裕毅は自己ベストの7位。アストンマーティンは今季初めて2台でQ3進出を果たし、セバスチャン・ベッテル8位、ランス・ストロール10位となったのだが、ベッテルは予選中にフェルナンド・アロンソを邪魔したことで3グリッド降格、11位に落ちてしまった。結果、ウィリアムズで初Q3進出と大健闘のジョージ・ラッセルが8番グリッド、ストロール9番グリッド、そしてフェラーリのカルロス・サインツJr.が10番グリッドにそれぞれ繰り上がった。

メルセデスのハミルトン(写真)からは、レース前から「ダメージを最小限に」という消極的なコメントが聞かれた。レッドブルとの0.2~0.3秒のギャップは埋められず予選では4位。レースでは、ペレスとノリスが順位を落としたことで2位までポジションを上げるも、縁石に乗り上げたショックからか、マシンにダメージを負い空力的に苦しくなった。ペースは芳しくなく2度目のタイヤ交換の末に4位フィニッシュ。フェルスタッペンに32点もの先行を許してしまった。(Photo=Mercedes)
メルセデスのハミルトン(写真)からは、レース前から「ダメージを最小限に」という消極的なコメントが聞かれた。レッドブルとの0.2~0.3秒のギャップは埋められず予選では4位。レースでは、ペレスとノリスが順位を落としたことで2位までポジションを上げるも、縁石に乗り上げたショックからか、マシンにダメージを負い空力的に苦しくなった。ペースは芳しくなく2度目のタイヤ交換の末に4位フィニッシュ。フェルスタッペンに32点もの先行を許してしまった。(Photo=Mercedes)拡大

ペレス押し出され後退 ノリスは2位を守るも……

レッドブル・リンクでの第2ラウンドは、タイヤが前週より1ランクやわらかくなり、1ストップか2ストップか判断が分かれるところだったが、そんな議論がさまつに思えるほど、フェルスタッペンは他を圧倒してしまうのだった。

大挙して押し寄せた「オレンジ・アーミー」ことフェルスタッペン応援団の声援を受け、71周のレースがスタート。フェルスタッペンがノリスをけん制するようなラインどりでターン1をトップで進入し、上位陣はグリッド順を維持したのだが、後続ではエステバン・オコンとアントニオ・ジョビナッツィが接触したことでセーフティーカーが入った。

4周目にレース再開。ターン1でペレスがノリスに並びかけるなど2台は丁々発止とやり合ったのだが、ノリスがペレスを押し出すようなかっこうとなり、レッドブルはグラベルに追いやられ10位に後退。その後も2位快走を続けたノリスには、5秒加算のペナルティーが科されてしまう。

ペレスの脱落でハミルトン3位、ボッタスは4位に繰り上がったメルセデス勢。1枚壁が取り払われたことになるが、タイトルとは無関係の2位ノリスのアグレッシブな抵抗にあい、ハミルトンが2位にポジションアップしたのは20周を過ぎてからだった。その間、首位フェルスタッペンは、ファステストラップを刻みながら10秒も先行していた。

フェラーリは2台とも予選でQ2敗退と残念な結果に。11位だったカルロス・サインツJr.(写真)は、セバスチャン・ベッテルの降格ペナルティーで10番グリッド、シャルル・ルクレールは12番グリッドからスタート。サインツJr.はスタートタイヤを自由に選択できるアドバンテージを生かし、序盤にハードタイヤを履きミディアムに変える作戦で5位入賞。ルクレールは、ペレスに2度もはじき出されながらも何とか入賞圏にとどまり8位でゴールした。(Photo=Ferrari)
フェラーリは2台とも予選でQ2敗退と残念な結果に。11位だったカルロス・サインツJr.(写真)は、セバスチャン・ベッテルの降格ペナルティーで10番グリッド、シャルル・ルクレールは12番グリッドからスタート。サインツJr.はスタートタイヤを自由に選択できるアドバンテージを生かし、序盤にハードタイヤを履きミディアムに変える作戦で5位入賞。ルクレールは、ペレスに2度もはじき出されながらも何とか入賞圏にとどまり8位でゴールした。(Photo=Ferrari)拡大
アルファタウリ勢は好調さをキープし、予選ではピエール・ガスリー(写真前)が定位置の6位。プラクティス中にスピンするなどヒヤッとする場面もあった角田裕毅は、それでもマシンを壊すことなくセッションをこなし、自身最高7位からスタートすることに。しかし2台ともソフトタイヤでのスタートとなり作戦上は不利だった。2ストップでガスリーは9位入賞、チームは今季全戦でポイント獲得中である。一方の角田は、ピットインの際に白線を踏む違反を2度も犯し、5秒加算のペナルティーを2度受けてしまい後退、結果12位。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)
アルファタウリ勢は好調さをキープし、予選ではピエール・ガスリー(写真前)が定位置の6位。プラクティス中にスピンするなどヒヤッとする場面もあった角田裕毅は、それでもマシンを壊すことなくセッションをこなし、自身最高7位からスタートすることに。しかし2台ともソフトタイヤでのスタートとなり作戦上は不利だった。2ストップでガスリーは9位入賞、チームは今季全戦でポイント獲得中である。一方の角田は、ピットインの際に白線を踏む違反を2度も犯し、5秒加算のペナルティーを2度受けてしまい後退、結果12位。(Photo=Getty Images / Red Bull Content Pool)拡大

フェルスタッペン、グランドスラム達成で3連勝

31周目、ノリスはピットで5秒ペナルティーを消化しているうちに、同時にタイヤを交換したボッタスに前をとられ4位にダウン。次にハミルトン、続いてトップのフェルスタッペンもピットへ飛び込み、各車ミディアムからハードに換装した。上位勢は1ストップで走りきるつもりのようだった。

タイヤ交換後、1位はフェルスタッペンのまま、13秒差で2位ハミルトン、さらに5秒遅れて3位ボッタス、4位ノリス。このまま2位をキープできればタイトル争いでのダメージを最小限にとどめられたはずのハミルトンは、しかし、空力パーツにダメージを負いペースが上がらない。当初メルセデスは、ボッタスに3位キープを指示していたが、ハミルトンの状況が改善されないとみるや「自由にレースしていい」とその指示を解き、52周目、ボッタスは2位に順位を上げる。

一方、3位に落ちたハミルトンはノリスにも抜かれ、2度目のタイヤ交換に踏み切り、結果4位でレースを終えるのだった。

最大27秒もの大量リードを築いていたフェルスタッペンは、61周目に2度目のタイヤ交換を行い、トップのままコースに復帰。これで他車より1.5秒も速いとてつもないファステストラップをたたき出してしまった。ポールに優勝、全周リードにファステストラップと、初めてグランドスラムを達成したフェルスタッペンは、フランスGPから続いたトリプルヘッダーすべてでポール・トゥ・ウィンを成し遂げ、今季9戦5勝、宿敵ハミルトンに32点のリードを築いた。若きヒーローを前に、オレンジ・アーミーが狂喜乱舞したことは言うまでもない。

今シーズン最高の2位に終わったボッタスの2秒後ろでゴールしたのはノリス。自己ベストタイの3位に笑顔を見せるも、序盤のペナルティーには納得がいっていないようだった。

3週連続開催を終えたF1は、多くのチームが本拠を置く“ホーム”に帰還となる。第10戦イギリスGP決勝は、7月18日に行われる。

(文=bg)

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