「ARTA NSX」ブッチギリ!開幕戦の雪辱を果たす【SUPER GT 07】
2007.04.09 自動車ニュース【SUPER GT 07】「ARTA NSX」 ブッチギリ! 開幕戦の雪辱を果たす
「前回の鈴鹿でNSXが速いことはみんな分かってくれたと思うが、それを結果で残せなくて残念だった……」
この無念を晴らすかのように、No.8 ARTA NSXはひたすらトップを快走。ライバルとのバトルすら許さない強さをアピールし、待望の1勝を手にした。
2007年4月8日、岡山県は岡山国際サーキットで開催されたSUPER GT第2戦の決勝レースは、No.8 ARTA NSX(伊藤大輔/ラルフ・ファーマン組)が磐石の走りで完勝。
2位はNo.100 RAYBRIG NSX(ドミニク・シュワガー/細川慎弥組)、3位にNo.22 MOTUL AUTECH Z(ミハエル・クルム/松田次生組)が続いた。
一方、GT300クラスでは、No.101 TOYSTORY RT apr MR-S(大嶋和也/石浦宏明組)のルーキーコンビが優勝。二人揃ってSUPER GTでの初勝利をあげた。
■NSX勢、予選から熾烈な争い
金曜の公式練習でトップタイムをマークしたのは、No.18 TAKATA 童夢 NSX(道上龍/小暮卓史組)。開幕戦の鈴鹿ではエンジントラブルによる失火でリタイヤしたが、ここ岡山はふたりがコンビを組んで初勝利したゲンのいいサーキットだけに、連勝の期待も高まった。
しかし土曜日の予選では、別のNSXが最速タイムをマークする。同じく鈴鹿で目の前にあった優勝がスルリと手からこぼれ落ちた「No.8のNSX」だ。
No.8、18の両NSXにとっては、まさにリベンジ戦。その2台が緊迫したタイム争いを演じ、まずはNo.8、No.18の順で予選1回目を終了した。
グリッドを確定するアタック、スーパーラップは、予選1回目でトップ10圏内に入ったマシンが10番手、9番手、8番手…という順番でワンラップアタックを行う仕組み。
No.18とNo.8のNSXを残し、暫定トップはNo.1 宝山 TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー組)。だが、No.18の道上は、No.1 のタイムを約0.4秒縮めてトップへ。大トリのNo.8のアタックを待った。
花冷えとなった土曜は気温が予想以上に上がらず、大半のドライバーがタイヤの温まりを気にしていたのだが、No.8のアタッカー、ファーマンもフロントタイヤを充分に温めることができなかったようで、タイムはNo.18から約0.3秒の遅れ。
これでNo.18が昨季に続き、岡山でのポールポジション獲得に成功した。
なお、GT300では、開幕戦で2位入賞のNo.2 プリヴェKENZOアセット・紫電(高橋一穂/加藤寛規組)が好調さを維持。今季初のポールポジションにつけた。
■ポールポジションのNSXに、スタートから悲劇!
前日よりも気温が上がり、レース日和となった日曜日の決勝。ローリングスタートを終えた41台のマシンが続々と1コーナーへと向かった。
順当にコーナーへ進入したかに思われたその瞬間、3番手からイン側のラインに飛び込んできたNo.1のSCが、No.18 NSXのテールに接触。哀れNo.18はスピンを喫し、最後尾へとドロップ、事実上勝負権を失った。
このアクシデントの隙を突いて、No.8 NSXがトップに浮上した。
No.1 SCがあとに続くも、ほどなくしてNo.1にはNo.18との接触に対してドライブスルーペナルティが科せられ、後退。これにより、No.8、予選5番手のNo.100のNSX、そしてNo.22のZというオーダーになった。
■2位以下は熾烈なポジション争い
岡山のコースは1周約3.7kmというショートサーキットならではの渋滞も多く、築いたはずのマージンもあっという間に縮められてしまう。逆手にとれば、ピタリと背後に貼り付かれても、巧みなマシンコントロールで後続をシャットアウトできる。
とりわけ今回は、ピット作業を終えた中盤以降、このレース特性を味方にしようとする戦いが要所要所で見られた。
トップNo.8のNSXとの差を詰めるより、後続のマシンを意識せざるを得なかったのが2番手No.100のNSX。背後にはNo.32 EPSON NSX(ロイック・デュバル/ファビオ・カルボーン組)、さらに間髪容れずNo.22のZが続く。
後半に入ると、遅れが見え始めたNo.32をNo.22がすかさずパス。この勢いでNo.100にも迫り、逆転成功。一度は2位争いが落ち着いたかに思われた。
だが、残り5周を切ったところで、No.22のZがブレーキロックによるコースアウトを喫し事態が一変。No.100のNSXがふたたび2位を奪取し、No.22は3位に甘んじた。
さらに後方でも、ディフェンディングチャンピオンであるNo.1のSCがハイペースのラップタイムでNo.32 EPSON NSXを猛追。一度ペナルティを受けたことを考えれば、まさに怒涛の追い上げで、勝敗を見守る観客を大いに沸かせた。
最終ラップではサイド・バイ・サイドまでもつれ込んだが、惜しくもあと一歩及ばず。とはいえ、SC430勢最高位の5位でフィニッシュすることとなった。
■GT300クラスは、TOYSTORY apr MR-Sのルーキーが初勝利!
GT300クラス。レースウィーク中、したたかに速さをアピールしたのはNo.2のプリヴェKENZOアセット・紫電だった。加藤寛規がライバル達のピットインを後目にひたすら周回を重ね、後続とのマージンを稼ぐことに尽力する。しかしながら、2番手につけたNo.101のMR-Sは全日本F3選手権参戦中の若手ドライバーとあって、その差が思うように開かない。
それでもピット作業終了後は、ひと足先に作業を終えていたNo.101の前でコースに復帰。チーム力の高さを見せつけた。だが、充分に温まっていないタイヤでは真っ向勝負も難しく、No.101 TOYSTORY apr MR-S(大嶋和也/石浦宏明組)が狙いを定めてきっちり逆転に成功。そのまま逃げ切り、待ちわびた初勝利をつかんだ。
No.2は鈴鹿に続いて連続2位を獲得。3位には、緻密な作戦と終盤の追い上げが実を結んだNo.26 ユンケルパワー タイサン ポルシェ(山路慎一/谷口信輝組)が入った。
■速いNSX、SCのお膝元で……
オフシーズンのテストから、その速さを評価され続けたNo.8のNSX。エースドライバーの伊藤が求める“強さ”が第2戦でようやくかたちとなった。
「フィニッシュまで残り5周になったとき、鈴鹿での悪夢(ファイナルラップでスローダウン)が脳裏によみがえった」という伊藤は、周回ごとに「自分がちゃんと走れば、マシンももってくれるんだと言い聞かせながら走った」とレース後の記者会見で心境を明らかにした。
この勝利による開放感が、NSXの強さに磨きを掛けるのだろうか?
第3戦の舞台は、SC勢のお膝元である富士スピードウェイ。果たして、長いストレートを誰が味方にできるのか。シーズン前半戦のターニングポイントともいえる一戦は、ゴールデンウィークのさなか、5月4日に決勝を迎える。
(文=島村元子/写真=KLM Photographics J)
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