三菱 i LX(MR/4AT)【ブリーフテスト】
三菱 i LX(MR/4AT) 2007.02.02 試乗記 ……151万8300円総合評価……★★★
リアにエンジンを置いた軽乗用車としてなにかと話題にのぼる三菱「i(アイ)」。自然吸気(NA)エンジン搭載モデルが追加された。顧客の要望が多かったというNAモデルを試す。
「お買い得」モデル!?
時の経つのは早いもので、革新的なパッケージングとデザインで話題をさらった三菱アイが登場して、約1年が経過した。
軽自動車枠(全長×全幅×全高:3400×1480×2000mm)を攻めに攻めてタイヤをめいっぱい四隅に配置、なおかつ最重量物であるエンジンをリア床下に搭載することで、コミュータータイプの軽自動車としてはリッチな室内空間を実現したのはご存じの通り。
今回はそのアイに、さらなる「お買い得車」として、自然吸気エンジン搭載モデルが誕生した。果たしてその実力は「シティコミューターとしては充分」なものなのか、単なる「廉価グレード」に過ぎないものなのか?
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2006年初頭に登場した三菱アイ。「まったく新しい価値観を」というスローガンのもとに、三菱はプラットフォームを新設計。
エンジンは、当初660ccで直列3気筒DOHC12バルブインタークーラー付きターボ(64ps)1種類だった。装備によって「G」「M」「S」の3種類が用意される。駆動方式はそれぞれのグレードにMRと4WDがあり、トランスミッションは全て4AT。
2006年10月24日に自然吸気(NA/52ps)エンジン搭載車が追加された。NAモデルが「S」「L」「LX」、ターボモデルは「M」「G」の合計5グレード構成となった。価格は105万円から161万7000円までと一気に広がりを見せた。当然一番安いのは自然吸気エンジンの「S」で、トップグレードの「G」と比べると56万7000円も違う。
(グレード概要)
自然吸気モデルは、フロント及びリアバンパー下部の樹脂パネルをブラックからボディ同色として差別化。見た目は可愛らしく良いが、ターボモデルとの差別化がどうして必要なのかは疑問。ボディカラーは「ペールベージュソリッド」を追加して合計10色に。
テスト車の「LX」グレードには、ディスチャージヘッドライト、電動格納式リモコンドアミラー、15インチアルミホイールなどが標準装備される。
また「eKワゴン」や「eKスポーツ」で好評を得た「ハイグレードサウンドシステム」はメーカーオプションで選べる。
車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
従来型と変更点なし。登場して1年なので、当たり前だがまだまだ新鮮。
ライトグレーの質感も明るく、パッと乗った瞬間はお洒落度満点。素材自体はすこし安手でも、ステアリングのシェイプやセンターパネルのスイッチ配列、メーター類のオレンジ液晶パネルなどが見た目にフレッシュで、「工夫して楽しませてくれているな」という満足感が得られる。
インパネを指ではじくと「ペカペカ」と興ざめな音がするのはしかたないかなぁ……と思いつつも、ドリンクホルダーが走行中にフレームごと「カタカタカタ…」と揺れてしまうのは悲しい。軽自動車の発展ぶりはめざましいが、これがリッターカーとの差か。
助手席側にはグローブボックスの他にシークレットボックスが付いている部分などは芸が細かい。
(前席)……★★★
座面は小さいが、クッション自体は張りがあり、気持ちが“しゃんと”するシート。軽自動車の生活範囲から考えれば、じんわりとなじむ欧州車系よりも、この方が理に適っているかもしれない。
ステアリングは固定式、身長171cmの自分の場合、シートのハイトアジャスターを一番下げれば問題なく普通のポジションが取れるが、“男の子走り”をするにはすこし重心が高すぎる気がする。まとめるに、アイは完全に女性がターゲット。そうなると全てが納得の寸法。
(後席)……★★★★
後ろにいくに従って上昇するティアドロップ型のルーフ。これがデザイン以上に、後部座席の開放感につながっている。同様に着座位置も後ろにいくほどに上がっているため(理由は下にエンジンがあるから)、ドアを開けて座り込むときに、一瞬そのシート位置の高さに戸惑う。
しかし、よっこいしょ! と座ってしまえば頭上は広い。かといって軽ミニバンたちのようなガランとした広さではなく、実にクルマ的な快適空間となっている。おまけに16段階でリクライニングするというのだから、もう充分。
(荷室)……★★
星自体はふたつと少ないが、こういったミニマムトランスポーターのトランクルームは、広い必要があるのだろうか? と思う。実際これに4人満載、荷物も満載で移動することは滅多にないと思うのだ。
その視点で考えれば、5:5の分割可倒式リアシートでラゲッジスペースを確保するのでほとんどが事足りる。できることならば、フロントシート背面で荷物を最終的に食い止めるのではなくて、真っ平らなリアシート背面にストッパーを付けて欲しい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
ヒュイーッ! というタービンサウンドがない変わりに、豪快なNAサウンドが室内に充満する。エンジンはまんまターボを取った連続可変バルブタイミング機構付(MIVEC)付きユニット。最初は「騒々しいな」と感じていたが、結構ピュアなサウンドで、これがリアエンジンだと意識した途端に嬉しくなる(男の子限定か?)。
一番気になる出力特性は、ターボの64ps/6000rpm、9.6kgm/3000rpmに対して52ps/7000rpm、5.8kgm/4000rpmと、明らかに非力、かつ高回転でパワーを出すタイプ。走り比べたら、まったくターボには敵わないだろう。それでも80km/hまでは過不足なく、本当にジャストな感じで使いこなせる。
高速道路へのアクセスの機会は少ないだろうが、とにかく床までアクセルを踏み込み、周囲の流れを読みながらの運転を強いられる。
もうすこし4段ATがメリハリ感を出してくれれば嬉しい。多段化やCVTを望むのは贅沢だろうか。シフトショックはNAだからかそれほど感じなかった。というより高速域ではほとんど変速しない。
積極的に乗るか否かで「のろいクルマ」にもなり「結構走るヤツ」にもなる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
物理の法則がこれほど穏やかかつテキメンに効くクルマも珍しい。ステアフィールは「エビアン」のごとし。上質とまでは言わないが、スッキリ爽やかなのだ。フロントに重量物がなく、かつリアのエンジン重量だってたかが知れている。このバランスが織りなすハンドリングは、FWDでは得られない感覚だ。15インチタイヤも出しゃばらないし、突き上げがキツくないのもマル。
そして三菱が、これを生活自動車に仕立てたところが素晴らしい。間違っても「このベースを活かして(スマートロードスターのような)スポーツカーを!」なんて考えないで欲しい。パワーがないからスポーツカーにしても物足りないはずだし、売れない上にイメージダウンすると思う。
現代版ルノー・トゥインゴか、はたまたチンクエチェントか。そんなベーシックで可愛い立ち位置がベストのクルマである。とくにこのNAモデルは。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:山田弘樹
テスト日:2007年1月9から11日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:5001km
タイヤ:(前)145/65R15 72S(後)175/55R15 77V (ダンロップSPSport 2030)
オプション装備:三菱マルチエンターテイメントシステム(MMES)(16万8000円)/ハイグレードサウンドシステム(4万2000円)/キーレスオペレーションシステム(3万4650円)/リバースポジション連動リヤ間欠ワイパー&ウォッシャー(1万3650円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:253km
使用燃料:21.55リッター
参考燃費:11.7km/リッター

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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