三菱 i M (MR/4AT)【試乗速報】
好感が持てる、けどちょっと心配 2006.02.10 試乗記 三菱 i M (MR/4AT) ……148万5750円 新車の3台に1台を占めるまでになった軽自動車市場に、リア・ミドシップを採用した奇抜なデザインの「三菱 i (アイ)」が投入された。経営再建中のスリーダイヤ入魂の作品は……。
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「とにかく新しい軽自動車を」
国内でクルマが売れなくなってきている昨今にあって好調な軽市場。しかし軽自動車は一般的に儲けが少ないといわれ、加えて規格による物理的な足枷があるため、一度プラットフォームやエンジンをつくったら、それをベースにさまざまな衣や装備を載せてバリエーションを増やし改良をつづけることが常套手段だといわれてきた。
だから三菱には、定評を得た「eK」シリーズをベースに使うというオプションもあったはずだけど、まったく新しい、しかもエンジンを後軸上に置く「リア・ミドシップ」なんていう凝ったレイアウトのプラットフォームを採用した「i」を、5年もかけてつくっちゃったのだから恐れ入る。
「『他社にはない、とにかく新しい軽自動車をつくろう』という発想からスタートしました」とは、軽商品開発プロジェクトの岩男明信プロジェクトマネージャー。その新しさは、「斬新なスタイリング」「広いスペース」「高い衝突安全性」の3つであらわされ、これらをつきつめたら“結果的に”リア・ミドシップにたどり着いたのだという。
長さ3.4メートル、幅1.48メートルの軽規格のなかでデザインの自由度を求めれば車内は狭くなる。ならばエンジンを前から後ろに移動させ、そのぶんデザインとホイールベース延長=広い車内に活かせればいいじゃないか、というロジックだ。
かくしてできあがった実車、デザインがいかに突飛であるかは一目瞭然だ。タイヤは極限まで四隅に追いやられ、15インチの大径ホイールがグッと踏ん張り感を出す。まるで繭玉のようなボディは、デザインスケッチからそのまま飛び出てきたような、異型ともいえるフォルムだ。
「デザイン案のままだとあまりに“オブジェ感”が出てしまうので、フェンダーアーチやシャープなフロントマスクで、よりクルマっぽく見えるようにしました」(担当デザイナーの方)。試乗会会場に乗りつけた、デザインコンシャスな「スバルR1」でさえ霞んでしまうほどの強烈な存在感だ。
「いままでクルマに興味のなかった方も、ディーラーに来てくださってるようです。カワイイですねって」というエピソードを聞いて、エンジンがどこにあろうがパワーが何馬力あろうが、デザインの訴求力は侮れないと思った。
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乗り心地は上々
ひとクラス上の「コルト」を5センチも上回る2550mmのロングホイールベースに、広大な車内スペースを期待してしまうが、寝かせたフロントウィンドウや太めのAピラー、エンジンのために後ろに下げられない後席など、狭くはないが驚くほど広いわけではない。
荷室は、奥行きは44センチ程度あるが、エンジンがあるため若干カサ上げされて地上から約70センチ弱。とはいえ、前後席いずれでも頭上スペースは充分、視界が良好なこともあり窮屈感はない。
エンジンを始動すると、新調された659cc直3「MIVEC」ターボは、軽自動車らしい軽々しい(安っぽい)音をあげて「やっぱり軽か」とちょっと残念に思ったが、走り出すと、これがなかなか気持ちよく回ってくれていい。
「スズキ・ワゴンR」や「ダイハツ・ムーヴ」などのターボと比べ、最大トルクを0.9kgm減らしつつ発生回転を数百回転抑えたのが効いたのだろうか、4段ATとのマッチングがいいからか、ワンワン唸ることもなくスムーズに発進・加速する。エンジンと乗員がキャビンに“同居”しているとは思えないほど遮音されているのでこれまたよい。
発進時にあまりに軽いのでビックリしたのは電動パワステ。速度が上がれば安定するので特に問題はないが、車庫入れする時など慣れは必要。慣れといえば、ATシフターのストロークが短いようで、最初は思ったレンジに入れづらかった。
フロントが物理的に軽いということは実感できるし、Uターンして小回りのよさも体感できた。軽快である。
そして乗り心地は上々だった。先日ワゴンRに乗って落ち着かない挙動に辟易したという峰カメラマンは、「これは快適だよ」と感動の声をあげていた。加減速時のピッチングに付き合わせられることもなく、サスペンションが凹凸をうまく吸収してくれているようで、また長いホイールベースの恩恵もここにあらわれているのだろう。
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風変わりなモデルが入る余地も
細かなツメの甘さは残されているものの、iはよくできたクルマだし、新しいものをつくりだそうとする三菱の姿勢には好感が持てたし、個人的には応援したい1台だ。
いっぽうで、この先大丈夫かなあとちょっと心配にもなる。マーケティング的には、「従来の軽からのアップグレード、コンパクトカーからのダウンサイジング」を狙うiだが、開発スタッフや関係者の方々の言葉に、「守りよりも攻め」というか「市場よりも技術者魂」という“不等号”が垣間見えるのだ。失礼ながら今のところ懐具合に余裕がない自動車メーカーが、安全策をとらないで“賭け”に出たとなれば、これがもし売れなかったら……。
スバルがトガった「R2/R1」とコンサバ「プレオ」を併売しているように、iが出てもeKは継続販売される。無防備ではないが、残念ながらスバル軽の2005年販売台数は前年比で1割落ち込んだ。
試乗会に赴いた日、三菱は「発売2週間で月間販売目標台数の2倍、1万台を達成」と発表した。出だしは好調、あとは販売台数を維持できれば、現在考えられているという派生モデル(「パジェロミニ」の後継SUV)などにつながるだろう。
市場にさまざまな商品があるのは健康的なこと。こういう風変わりなモデルが入る余地も残しておいてほしい。
(文=webCG有吉正大/写真=峰昌宏/2006年2月)

有吉 正大
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