アウディQ7 4.2 FSIクワトロ(4WD/6AT)【ブリーフテスト】
アウディQ7 4.2 FSIクワトロ(4WD/6AT) 2007.01.06 試乗記 ……996.0万円総合評価……★★★★
高級SUV市場に初投入したアウディの新型「Q7」。老舗のライバル車をも上回る巨体のプレミアムカーに試乗して、SUVらしからぬ走りに新しい魅力を感じたという。
100%アウディ味
フルタイム4WDの代名詞ともいえる「クワトロ(quattro)」の頭文字をモデル名に組み入れた「Q7」は、アウディが満を持して市場に投入したSUVだ。
“4WDのエキスパート”が、生粋のドイツ勢のなかでは最後発というのも奇妙な話だが、そもそもクワトロが悪路を走破するための4WDをヒントに、スポーティで安定した走りを乗用車にもたらす技術として生まれたことを考えると、クワトロとSUVはスタート地点こそ同じだが、もっとも遠い場所に位置する関係ということができる。
それだけに、アウディが手がけたQ7にはオンロード指向が強く表われている。その最たるものがQ7に搭載される4WD。Q7では、他のラインナップ同様、トルセンデフを使ったいつものクワトロをベースにしているのだ。もちろん、低速で急勾配を下る“ヒルディセントアシスト”など、悪路走破用のシステムも備えてはいるが、SUVに付き物のローレンジギアやデフロックのスイッチなどは見あたらない。
そのへんが血縁関係にある「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」とは違う部分で、そればかりかQ7は、デザインから乗り味まで、どこをとってもアウディそのものなのだ。後発の強みで、走りにも磨きがかかり、プレミアムSUVの新しい魅力が伝わってくるQ7なのである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2005年のフランクフルトショーに出展されたアウディ初の大型SUV。日本では、2006年10月4日に発売となった。
SUVのスポーティさや多様性と、高級車のプレミアム性を融合させ、アウディお得意の4WDシステム「クワトロ」により、オンロードではスポーツカー並みの実力を発揮するとともに、オフロードでも高い性能を発揮すると謳われる。
ボディサイズは、全長×全幅×全高=5085×1985×1740mm、ホイールベース=3000mmと巨大。「ランドローバー・レンジローバー」「ポルシェ・カイエン」をも上回るボディに、3列シート7人乗りパッケージを採用した。
2列目は左右独立して前後調節が可能。2、3列目を折りたたむだけで、2035リッターのフラットな荷室をつくりだせる。また、2列目シートが2人用コンフォートシートになる6人乗りパッケージもオプションで設定される。
(グレード概要)
欧州では、3リッターV6ターボディーゼル(232ps、51.0kgm)と、4.2リッターV8ガソリン(349ps、44.9kgm)の2種類があるが、日本導入は、4.2リッターV8搭載「Q7 4.2 FSIクワトロ」のみ。6段ティプトロニックを介し、フルタイム4WD「クワトロ」で四輪を駆動する。
装備面では、下り勾配で速度を制御するヒルディセントアシストや、「RSP」(ロールスタビリティプログラム)など複数の制御系が一体化された安全システム「ESP」(エレクトロニックスタビリゼーションプログラム)を標準で備える。
サスペンションは、前4リンク、後ダブルウィッシュボーン形式を採用。Q7専用の「オフロード」モード、積載時用の「ローディング」モードなど、計6モードから選べる「アウディ・アダプティブエアサスペンション」はオプション設定される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
Q7のインパネは、A6シリーズに似たデザインを採用する。なかでも回転計と速度計をそれぞれ“カム”型のリングで囲んだ“タレ目”のメーターパネルが特徴的だ。
そして、ナビやオーディオの操作からクルマの細かいセッティングまで、少ないスイッチでカバーするMMI(マルチメディアインターフェース)が標準装着され、センタークラスターからセンターコンソールにかけて、比較的すっきりとまとめられているのはまさにアウディ流だ。ただ、1000万円弱のクルマとしては、ダッシュボードあたりがさっぱりしすぎていて、たとえばフルレザートリムなど、もう少し豪華な雰囲気がほしい気もする。
(前席)……★★★★
地上からやや高めの場所にあるシートは、電動の本革シートが標準で装着される。車格や価格を考えると当然の装備だ。表面がザラッとした感じのレザーは、適度な張りがあって体をしっかり支え、サイズも適切なので、ユルさや窮屈さが気になることはない。
運転席に陣取ると、視線が高いことも手伝い、ボディサイズの割には大きな感じがしない。ただ、SUVなどでは助手席側に死角が生じるため、Q7には標準でサイドビューカメラが装着されている。助手席側のミラー下に組み込まれたカメラからの画像が、ルームミラー手前に置かれた小型ディスプレイで確認できるものだ。日本専用のこの装備、死角内に人がいるかどうかをチェックするには便利である。
(2列目シート)……★★★
Q7は乗車定員が7人で、セカンドシートがベンチタイプの3人乗りという仕様が標準であるが、オプションで6人乗りパッケージを選ぶことができる。試乗車はその6人乗りで、セカンドシートの中央が独立したセンターコンソールに置き換えられている。一見、豪華に見えるのはいいが、左右独立でスライド、リクラインができるのはベンチタイプも一緒。ウォークスルーができるわけでもなく、機能的なメリットはあまり感じられなかった。
スペースは、レッグルーム、ヘッドルームともに十分な広さが確保されているが、前席の高さを低めに設定すると爪先が入らず、多少窮屈な姿勢を強いられることになるから、セカンドシートにゲストを乗せる場合は配慮が必要だ。
(3列目シート)……★★★
マニュアルを読むと、サードシートの乗員は身長160cmまでという説明があるものの、これは法規上の制限ではなく、あくまで目安の話。実際、身長167cmの私が座ってみたが、頭上には拳1個分の余裕があった。ただし、セカンドシートを前にスライドしても膝がバックレストに当たってしまい、お世辞にも余裕があるとはいえない。それでも爪先が前席下に収まるのが救い。プラス2としては十分の出来だ。
(荷室)……★★★★
もはや珍しくないが、テールゲートは電動式。テールゲートのスイッチやリモコン、運転席ドアのボタンを操作するだけで開閉が可能である。テールゲートを開けると、幅116cmのラゲッジスペースが目の前に現れた。サードシートを起こした状態でも手荷物が置けるだけの奥行き(約55cm)が確保され、サードシートを倒した“通常”の状態なら奥行き約115cmと、広大なスペースを誇る。さらにセカンドシートを倒せば、2メートルの長尺物も収容可能だ。シートを倒すには、ヘッドレストを倒したうえで、シートバックを倒す必要があるが、どちらも操作は簡単である。
フロアが高いSUVだけに、重量物の積み降ろしが厄介なのが玉にキズ。エアサスペンション装着車なら一時的にリヤエンドを7cm下げることもできるが、それでもバンパーを傷つけないよう荷物を載せるには骨が折れる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
日本に導入されるのは、さしあたり4.2リッターV8エンジン搭載車の1モデルだけ。このV8はすでに「A6」や「A8」に採用される直噴ガソリン(FSI)のタイプで、以前の仕様に比べて音やスムーズさの面で洗練されたのが特徴である。大排気量だけに低回転から豊かなトルクを発揮し、2000rpm以下でもアクセルペダルを踏む右足の動きに素早く反応、2370kg(エアサスペンション仕様車)の車両重量に対しても不満はない。
一方、全開加速を試みると、A6やA8のような圧倒的な加速は体感できないが、それでも3500rpmでトルクのピークを迎えたあとも、SUVらしからぬ気持ちのいい加速が続いていくのだ。
トランスミッションは6段のオートマチック。シフトのスムーズさやレスポンスなどに不満はないが、欲をいえばパドルシフトがほしいところだ。スポーティに走る場面はもちろんのこと、高速などでエンジンブレーキを必要とする場合に、Dレンジのまま一時的にシフトダウンできるのは実に便利だからだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
Q7には、乗り心地やハンドリングに関わるオプションとして、「アウディ アダプティブ エアサスペンション」と20インチアルミホイールが用意されている。この試乗車にはエアサスが装着されるが、タイヤは標準の255/55R18のままであった。
この組み合わせが生み出す乗り心地は絶妙で、エアサスのモードをオートマチックに設定すれば、マイルドな乗り心地でありながら、ボディの揺れを上手く抑える落ち着いた乗り心地が手に入る。路面からのショックも巧みに遮断してくれて、実に快適なのだ。首都高の目地段差を通過するようなときもショックをさらっといなし、バネ下がバタつく感じもない。オプションの20インチもそれなりに快適だったが、この18インチには到底及ばない。ロードノイズが低いのもうれしい点だ。
高速道路を巡航する場面では、優れた直進性に加えて、フラット感が高いため、ロングドライブはお手のもの。カーブが続く区間では、SUVらしくないロールを抑えた姿勢を保つから、不安なくステアリングを操作できる。
ワインディングロードに持ち込むと、さすがにロールの大きさを実感するが、そんなときにはエアサスをダイナミックモードに切り替えるだけで、安定した姿勢を保つことができる。しかも、ボディサイズから想像する以上に軽快なコーナリングが可能だから、山道が退屈だったり、苦痛に思ったりする心配はない。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2006年12月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年
テスト車の走行距離:3979km
タイヤ:(前) 225/55R18(後)同じ(いずれもコンチネンタル クロス コンタクト)
オプション装備:アダプティブエアサスペンション(40.0万円)/6人乗りパッケージ(11.0万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(5):山岳路(4)
テスト距離:272.4km
使用燃料:47.36リッター
参考燃費:5.75km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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