第119回:困った、困った〜ダラスのガソリン価格とSUV事情〜
2006.05.02 World Wide WebCG第119回:困った、困った〜ダラスのガソリン価格とSUV事情〜
おかしなマネーゲーム
「イタタタタ……」。更年期障害のようだ。左肩、腰の痛み、頭痛までもなかなか治らない。
「もうそろそろ、隠居しては?」と、周囲は私に勧めてくる。やれやれ困った、困った。情報の超高速化により、私はあっという間に老人の仲間入りをさせられてしまう。
そんな呑気な私が暮らす、テキサス州ダラス郊外。最近、庶民の話題はもっぱらガソリン価格になっている。
「あっちのシェルが値下げした!」
「こっちのセブンイレブン(アメリカではガソリンスタンド併設が多い)は相場より2セント安い!」
一時は落ち着きをみせたガソリン価格も、またこの2ヶ月程でうなぎ上り。
その主要因は、ニューヨーク先物市場でのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)への投機である。世界の原油価格の指標となっているWTI価格だが、現実は世界出荷量全体のたった0.8%にしか過ぎない。このWTIを巡るマネーゲームが、世界各国のガソリン価格を引き上げてしまう、おかしな図式だ。
なんとも困ったモノだ。
フォード、ニッサン……ピックアップを売るために
そんな状況では、テキサスが本場(?)のフルサイズピックアップトラック/フルサイズSUVの売り上げもままならない。そこで各メーカーは、我々ジャーナリストに対してもあの手この手を打ってくる。
先日のダラスモーターショーでフォードは『TEXAS is FORD country』と銘打った。
フォードにとって「F150」は最後の最後の生命線。29年連続全米売り上げナンバーワンのFシリーズトラックの名誉を、是が非でも守ろうとしている。お土産にと、カウボーイの生活に密着したという、やたら分厚い写真集を手渡された。困ったモンだ。一体これ、どこに飾ろうか?
ニッサンも積極的だ。先日、ダラス郊外でトラック/SUV系全ラインナップのメディア向けオフロード試乗会が催された。
景気づけに「まずはジャンプをご覧いただきます」。ザバザバザバッと土煙を上げて助走して……ジャンピングポイントで「ズザァッ!」と天高く舞い上がるレーシングトラック。CORR(Championship Off-Road Racing)というレースにエントリーしている「フロンティア」&「タイタン」の大跳躍だ。
このレースの観客は、とてもロイヤリティ(忠誠心)があるという。ニッサントラックたちの劇走を見てすぐさま「俺もああいうの、ほしい」と言うらしい。CORRはコストパフォーマンス(費用対効果)がとてもいい、とニッサンは分析している。
対して、昨年までワークス参加していたツーリングカーレース、スピード・ワールドチャレンジは実売に結びつかないので撤退した。
日頃のウサ晴らしも兼ねて
続きまして「ガッツリと、4×4オフロード体験をお楽しみいただきます」。先のフロンティア、タイタンに加え、SUVの「エクステラ」(日本の「エクストレイル」よりちょっと大きい)、「アルマーダ」。4モデルを次々に繰ってテキサス荒野の大冒険に出かける。それにしても、ここは日頃何に使われている場所なのか。採石場か何かだろうか?日本でも山梨や静岡でオフロード体験試乗会があるが、ここは規模が違う。ざっと見て、東京ドームの20倍といった敷地だ。
分厚い岩盤の急斜面をデフロックにしてユッサユッサとよじ登る。フラットダートをフルカウンターで立ち上がり、濁流の中に飛び込む(!)。もう、なんでもかんでもヤリ放題。日頃のウサ晴らしにはもってこいだ。
聞けば、最近はSUVもピックアップトラックも4WD車の売り上げ比率が上がっているという。
その真相は「なんか、カッコいいでしょ?」という、あくまでもイメージ的なもの。4WD車ユーザーの多くはこうしたオフロード走行を真剣には試さない。だから、我々メディアが“体験代行”して、商品のイメージアップに協力するのである。
翌日。
「イテテテテ……」。困ったモンだ。今度はどうやら筋肉痛のようだ。まあ、あれだけ遊んできたのだからしょうがない。さーて、ここらでもうひと踏ん張り。気温40度を超すテキサスの猛暑を一気に乗り切らねば!
(文=桃田健史(IPN))

桃田 健史
東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。
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