ボルボV70R(5AT)【ブリーフテスト】
ボルボV70R(5AT) 2003.08.16 試乗記 ……701.0万円総合評価……★★★★★
「ボルボ史上最強」を謳う300psのパワーユニットに、シャシーコントロール技術「FOUR-C」を搭載する、ボルボのハイパフォーマンスワゴン「V70R」。自動車ジャーナリストの笹目二朗が、新しいボルボ“R”に、伊豆、箱根で乗った。
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史上最良のボルボ
一言でいうと「史上最良のボルボ」だ。目玉は「FOUR-C」と呼ばれるアクティブサスペンション。電子制御によるダンパー減衰力切り替えは一般的に、「帯に短し襷に長し」といった中途半端な設定のものが多いが、ボルボの“R”はこの手のなかでも秀逸である。センターパネルのスイッチで、「コンフォート」「スポーツ」「アドバンスド(スポーツ)」、3つのポジションを選べるうえ、それぞれが目的通りの役目を果たす。縮み側のダンピングを無闇に上げないことが、功を奏している。フラット感において過去最良のボルボといえるし、大入力後の減衰も申しぶんない。とにかく洗練されている。
操縦安定性も大きく改善された。これまで、ボルボといえば、アンダーステアを看板にさえしていたが、このクルマは初期操舵において確実に、狙った進路に鼻を向けられる。これほどまでのニュートラルステア感は、従来のボルボには望めなかった。大きなサイズや重量を感じさせない、軽快さが魅力である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2000年1月のデトロイトショーでデビューした4ドアワゴン。先代V70が、実質上「850」のフェイスリフト版だったのに対し、新型は、S80のコンポーネンツを利用する。
日本に導入されるのは、2.4リッター直5NAを積む「V70」(140ps)、ハイパワー版の「V70 2.4」(170ps)、2.5リッター直5ターボ搭載の「V75 2.5T」とヨンクの「V70 AWD」、そしてハイプレッシャーターボ搭載のスポーティグレード「V70 T-5 Sport」の5種類。トランスミッションは、いずれもシーケンシャルモード「ギアトロニック」搭載の5段ATが組み合わされる。
(グレード概要)
「V70R」はセダンの「S60R」とともに登場したスポーティスペシャル。ボルボが2001年の東京モーターショーに参考出品した「PCC」(パフォーマンスコンセプトカー)の市販モデルで、1995年に限定生産された「850T-5R」を起源とする、ボルボの高性能バージョン「Rシリーズ」の第2世代だ。
エンジンは、KKK製ツインターボ付きの2.5リッター直5 DOHC20バルブ。大型ツインインタークーラー、可変バルブタイミング機構(CVVT)などを備え、300ps/6000rpmの最高出力と、35.7kgm/1850〜6000rpmの最大トルクを発生する。トランスミッションは5段ATで、電子制御多板クラッチが4輪にトルクを配分する。
“R”のキモは、シャシーコントロール技術「FOUR-C」。電子制御連続可変ショックアブソーバーシステムで、サスペンションやステアリング、加速度センサーなどの情報から、縦横の動きやロール状態をコンピューターが判断。1秒間に500回の頻度でショックアブソーバーを調整し、高い接地性を確保。車両安定性を高める「DSTC」(ダイナミックスタビリティ&トラクションコントロール)と連動し、あらゆる状況で高い限界性能を維持するという。インパネ中央のスイッチで、「コンフォート」「スポーツ」「アドバンスドスポーツ」、3種類のダンピング特性をドライバーが任意に選ぶことができる。
エクステリアは、オリジナルの姿を大きく変えることなく、フロントマスクなどに若干変更が施された。テスト車のインテリアは、Rシリーズにオプション設定された、牛10頭に2頭の割合でしか得られないという高級レザーを使った「エクスクルーシブナチュラルハイド」。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
メーターそのものは見やすいが、ブルーの盤面や周囲の光物がちょっと子供っぽい。センターコンソールに配されたオーディオや空調のスイッチ類は、機能的な部分は問題ない。しかし、パネル面の段差や合わせ部分の隙間、分割した線の処理などが雑然としていて、プレミアムカーの高級感を削ぐ。センターコンソールにカップホルダーは1つだけ。もうひとつ分は、トンネルオンソールを使えということか。ダンパーの減衰力切り替えスイッチは、視界に入る位置にあって使いやすい。
(前席)……★★★★
革シートは滑りやすいという潜入観があるが、V70Rのそれは最初やや小ぶりに感じるものの、時間とともに馴染み、体重の重みで接触面積を増していくタイプだった。上下調節と座面の後傾角を、自由に選べるのがよい。電動調整の動き方に精度が感じられる。北欧車ゆえ、シートヒーターの備えは万全。Aピラーの傾斜は大きいが、乗降性はそれほど悪くない。前方視界も良好だ。
(後席)……★★★★
ダブルフォールディングでたためるタイプのシートにしては、クッションのストローク感もたっぷりしていて座り心地は良好。足先は前シートの下に納まり、高めに座る感じで膝が自然に折れる。前も比較的よく見えるし、横はドアの高さが肩までこない。ヘッドクリアランスも充分あるから、頭まわりの開放感は高い。背面の角度は寝過ぎていなくて丁度いい。Bピラー付け根の太さは、乗降時もあまり気にならなかった。
(荷室)……★★★★
サスペンションの張り出しが少なく、床面積だけでも広大な感じがする。開口部は大きいうえ敷居も低く、荷物の積みおろしが楽そうだ。使い勝手を考慮したワゴンらしく、垂直に近く切り立ったバックドアゆえ、角張ったものでもキッチリ積める。それでいて、ドアの薄さを感じさせないところが、ワゴンづくりの歴史の長さを感じさせる。テールランプの処理といい、ボルボらしいふくよかさを醸し出す。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン&トランスミッション)……★★★★
“R”の文字から受ける過激さとは無縁。パワーは必要に応じていくらでも、無尽蔵に後から後から供給される感じがする。ターボチューンも時代と共に洗練されてきており、このクラスにしては小排気量ながら充分に速いクルマだ。大排気量に頼らずとも、高級ワゴンは成り立つという証明でもある。5段ATは、マニュアルシフトが楽しく操作できるが、Dレンジ任せのスケジュールでも不満はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
姿勢変化のすくないフラットな乗り味。ロードノイズなど、足元からくる騒音レベルの低さが高級感を盛り上げる。シートのホールド感も最上で、このまま長距離旅行に出たくなる。
アクティブサスペンション「FOUR-C」が状況に応じて減衰力をコントロールすることで、これまでのシガラミを捨ててアンダーステアと決別した。どっしりした安定感はそのままに、ピッと切れるシャープさと軽快な立ち居振る舞いは、これまでのボルボとは一線を画す。
(写真=清水健太)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2003年7月24日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:6432km
タイヤ:(前)235/40ZR18 95Y(後)同じ(いずれもピレリ PZERO ROSSO)
オプション装備:助手席エアバッグ(1.0万円)/エクスクルーシブ・ナチュラルハイドシート(20.0万円)/18インチアルミホイール(25.0万円)/フラッシュグリーンメタリック(10.0万円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(3):山岳路(4)
テスト距離:877.4km
使用燃料:129.1リッター
参考燃費:6.8km/リッター

笹目 二朗
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