ボルボV70 T5 SE(FF/8AT)
熟成のボルボ 2015.02.19 試乗記 ゆとりのボディーを持つボルボのワゴン「V70」に、高効率をうたう新たなパワートレインが与えられた。果たして、その実力は? 横浜~函館間の長距離ドライブで確かめた。時を経てなお健在
ボルボ自社設計による新しい2リッター4気筒直噴ターボエンジンを積んだV70で、雪道を含む800kmオーバーの長距離を走ってみた。
V70には1.6リッターの「T4」や3リッター6気筒の「T6」もラインナップされており、この中間車種は「T5」と呼ばれるが5気筒エンジンではない。新しい245psエンジンには、アイシンの8段ATが組み合わされる。
ATの多段化は流行でもある。ギア比の細分化は、つまるところ無段変速のCVTの特性に近づくような気もするが、CVTの節度感のない加速たるや、アクセルペダルを踏み込んでもエンジンだけブカブカと吹け上がって、終始中間でベルトが滑っているかのような感触である。燃費には有利とされるCVTであっても、そこが嫌われて衰退の兆しすら見える。
では、多段化されたトルクコンバーター式ATの真価とはどんなものか? じっくり吟味するとしよう。
V70そのものの現状としては、ボルボのラインナップの中で一番重要なポジションにありながら、今や最も古い部類に入ってしまい、そろそろ次期型も開発中とウワサされる状況ではあるが、時を経たものが持つ熟成された味や絶大なる信頼感を見出すことができる。クルマに関しては、モデル末期に向けて完成度が高まる例も多い。このV70などはまさにその典型といえるだろう。
重厚感と軽快感を併せ持つ
V70は、最もボルボらしいボルボといえるもので、大きな車体はゆったりした居住空間とともに、どっしりと落ち着いた走行感覚を持つ。1.7トンを超す車両重量をもってすればこの重厚感は当たり前かもしれないが、それがスッと身軽に走りだすところが新型T5の美技でもある。
今回は、横浜から函館まで陸路とフェリーを使って走ってみたのだが、一部は雪上走行となるも、東北道はラクチンな旅でもあった。
新型エンジンは800rpmのアイドリングから6000rpmの高回転域までスムーズに上昇するのは言うまでもないが、4000rpmを過ぎるとやや音量が増す。しかし現実的には、2000rpm以下ですべての用は足りてしまう。車速は変化しても、エンジン回転数はあまり変化させない。優秀なATが、文字通り変速機としての仕事をしてくれるからだ。例えば、60km/hでの走行は3速で2000rpm、4速で1700rpm、5速で1300rpmに相当し、このエンジンのトルク特性から言えば1500-4800rpmの広範囲で35.7kgmの最大トルクを維持するから、負荷に応じて適宜ギアポジションを自動で選んでくれる。
ただしギアポジションは常には表示されないから、ステアリングホイール左右奥にあるシフトパドルを引くなどして確かめないと、その位置は分からない。あえて知りたくなければ知らなくてもよいが、前述のような操作をすれば、ギアポジションの数字がヒョコッと中央枠の横に瞬間表示される。
変速ショックなどは感じられず、ATの仕事ぶりとしては見事というほかない。この点、タコメーターを注視していると、スッ、スッと指針が節度をもって移動し、ATのロックアップ機構が正確に働いていることも分かる。
AT制御の緻密さに驚く
この変速作業は、100km/h前後の高速になると、2000rpm以下の領域であっても7速と8速の間で行われる。路面のわずかな勾配でも負荷に応じて律義に変速するものだから、その数百回転の差でも燃費に影響するのでは? と思って、時々右手の+パドルを引き、7速から8速に上げていたのだが、トップギアでの走行は、必ずしも燃費にとって最良とは限らない。あくまでも負荷に応じたポジションを選ぶことが肝要であって、路面によっては、8速よりも7速を選んだ方が好燃費につながることもありうるのだ。
その点を知りたければ、メーター表示を“ECOモード”に切り替えて、左側に表示される負圧計を見ればよい。このATはそんな微妙な差も勘案して最適なポジションを選ぶ仕事をしてくれる。
ただし極微な事をいえば、機械であるから作動速度というか微少の表示遅れもあるから、燃費競走のような条件ならば自分でパドル操作した方がより“ケチれる”かもしれない。そういう微少域の話としてはクルーズコントロールの使用も燃費に最適とはいえない。速度を一定に保つためには、例えば下り坂で、緩くではあれブレーキをかける必要が生じ、上り坂ではスロットルを開けることになるからだ。このような微少領域では、下りは多少速度が上がっても自然に転がした方がいいし、上りは多少速度低下しても踏み込んで負荷をかけてまで速度維持する意味はない。
そうした微少の負荷の変化に対してもこのATは瞬時に対応してくれているが、それに気付かないほど変速ショックは少ない。これも各ギアのステップアップ比が小さな多段ギアの恩恵といえる。
ATはそうした高度な仕事を自動でやってくれるけれども、それは見方を変えれば運転する楽しさまで奪ってしまうことも示している。ドライバーにとって労力軽減になるとはいえ、そこがATは面白くないといわれるゆえんでもある。
だが、コレは極微な操作ではあるが、右足の動きで7速から8速にシフトアップさせることも可能だ。タコメーターを見ていればそれが分かる。ATはおうようというか雑な操作でも破綻なく走れてしまうのが一般的ではあるが、アクセルペダルだけの繊細にして微妙な操作をもって高度な変速作業を楽しめる領域にまで進化したことは、率直に喜びたい。
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納得の燃費性能
新エンジンは、そのギアのままスッと加速体制に入るトルク感とエンジンレスポンスを有している。この辺の好印象からすれば、マニュアルトランスミッションで味わいたいところだが、その設定はナシ。ただ、近い将来、ディーゼル仕様も追加されるといわれているので、より排気量の小さい同系エンジンと共に、注目して待ちたい。
今回の旅では、青森で行った最初の給油の際、燃料ゲージは8個中2個のブロックを残していた。772.3km走って、58.9リッターを消費。ドライブコンピューター上では12.7km/リッターを記録した。
タンク容量70リッターは十分な量と判明。その後北海道に渡ってからは、函館市内で撮影をしたり、いろいろと走りの特性を試したり。全体で見れば、スタッドレスタイヤを履いていたことを含め、決して燃費にいい走り方をしたわけではなかったが、トータル833.7kmの総平均で11.7km/リッターと、2桁を記録したのは立派。一般的な運転ならば、JC08モード燃費の14km台は現実的な数字としてクリアできるだろう。
新型V70はデビュー以来、さまざまな改良を施されてきた。オートブレーキ機能を含むシティセーフティーの作動速度が30km/hから50km/hに引き上げられ、歩行者検知機能に加えて自転車の検知も追加された。またアクティブハイビームは対向車のヘッドライトや先行車のテールライトを検知して、自動的にハイビームをロービームに切り替えることで、相手にまぶしい思いをさせることなく走行できる。細かいところでは、ルームミラーの縁取りがなくなり、全部が鏡面となり可視範囲が広がった。
長距離走行を後にして思うのは、ボルボ全車に共通することながら、いくら乗っても一向に飽きないということ。余裕ある走行感覚による快適性、まだ一回も試したことはないが、無類の安全ボディーに対する信頼感なども印象的。ボルボにとって、V70はやはり金看板だ。
(文=笹目二朗/写真=小林 稔)
テスト車のデータ
ボルボV70 T5 SE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4815×1890×1545mm
ホイールベース:2815mm
車重:1720kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:245ps(180kW)/5500rpm
最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1500-4800rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94Q/(後)225/50R17 94Q(ブリヂストン・ブリザックVRX)
燃費:14.3km/リッター(JC08モード)
価格:529万円/テスト車=581万円
オプション装備:メタリックペイント(8万3000円)/チルトアップ機構付きガラスサンルーフ(17万7000円)/レザーパッケージ<本革シート+助手席8ウェイパワーシート+フロントシートヒーター+モダンウッドパネル+パドルシフト+リモートコントロール付き12セグ地上デジタルTV>(26万円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:2499km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(0)/高速道路(9)/山岳路(1)
テスト距離:833.7km
使用燃料:71.2リッター
参考燃費:11.7km/リッター(満タン法)

笹目 二朗
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