スバル・レガシィツーリングワゴン ブリッツェン6(4AT)【試乗記】
新しい旋律 2002.10.29 試乗記 スバル・レガシィツーリングワゴン ブリッツェン6(4AT) ……358.0万円 レガシィシリーズの最上級グレード「レガシィ6」。量産車としては、世界的にも数少ない水平対向6気筒エンジンを搭載するモデルに、スバルとポルシェデザインのコラボレーション「ブリツェン6」がラインナップに加わった。斬新な空力パーツを纏った6気筒モデルはどうなのか?特別なモデル
2002年8月、6気筒エンジンのレガシィに、同年12月までの期間限定スペシャルモデルである「ブリツェン6」が加わった。4気筒モデルで人気を得た、ポルシェデザインの手になる“モディファイド”レガシィのハイエンド版で、オーセンティックなセダン「B4 ブリッツェン6」(322.0万円)と「ツーリングワゴン ブリッツェン6」(355.0万円)の2種類が用意される。後者に乗る機会を得た。
3リッター水平対向6気筒24バルブを積むツーリングワゴンは、「プレミアムレッド」という艶やかな、深い赤のボディペイント。「フロントバンパー」「フロントグリル」「サイドスカート」「リアバンパー」「ルーフスポイラー」といった空力パーツ、そして「17インチアルミホイール」が、ブリッツェン6の特別な部分である。それぞれがボディと一体化して、自然な、しかしあたかも引き締まった体躯から盛り上がる筋肉のような、独特の迫力を醸し出す。リアドアより後ろのガラス類は、濃色タイプが採用された。これは過剰な日光を遮るのみならず、クルマの塊感を増す、視覚的な効果も高い。
ドアを開け、「Blitzen」のサイドシルプレートをまたいでドライバーズシートに座る。ブリッツェン6の内装は、ベージュの華やかなもの。レザーシートの背もたれには「Blitzen」の文字が浮き出ていて、乗員に、特別なモデルであることを主張する。平たく、硬い座り心地が硬派だ。サイドサポートの張り出しが、“スポーティ”を暗示する。
復活したフラット6
以前、スバルの“未来カー”「アルシオーネ」が登場したころ、クルマ好きが口にしたつまらない冗談のひとつに、「後ろ向きに走ればポルシェ」というのがあった。アルシオーネもポルシェ911も、シリンダーが地面と水平に配置される“フラット6”がウリ。いうまでもなく、スバルはそれをフロントに、ポルシェ911はリアに搭載する。「バックすれば……」云々は、個性的なエンジンをもつ両車だからこそ成立したフレーズといえる。
スバルの水平対向6気筒は、アルシオーネが生産を終了して以来、しばらくラインナップから落ちていたが、2000年5月に「ランカスター6」に搭載されて復活。2002年1月には、同社の主力モデル「レガシィ」にも採用された。今回、スバルの6気筒モデル「レガシィ6」に、ポルシェ(のいわば分家)によって手が加えられたのも、何かの縁というものだろう。
レガシィ6のフラット6は、もちろん、アルシオーネのそれとハードウェア的なつながりはない、まったくの新開発エンジンである。89.2×80mmのボア×ストローク、3リッターの排気量から、220ps/6000rpmの最高出力と、29.5/4400rpmの最大トルクを発生する。元来、4気筒モデルであるレガシィシリーズのエンジンベイに問題なく収まることからもわかるように、6気筒化されたエンジンの全長は、4気筒よりも20mm長いだけ。軽量コンパクトなパワーソースだ。
革巻きのステアリングホイールを握って、エンジンをかける。ブラックフェイスのメーターナセル内に赤いニードルが光り、続いて数字が点灯する。自然吸気の「EZ30」型ユニットは、等長のエグゾーストマニフォルドを備えるから、目覚めたあとも「ドコドコドコ……」という排気干渉のサウンドを響かせることはない。フラット6はスムーズに、粛々とまわっている。ドライバーの、はるか前方にあるかのように。
寡黙なアスリート
「弓」の字を倒したカタチの、目を引くリアウィングが印象的だった最初の「B4ブリッツェン」が登場したのは、1999年12月。「ポルシェ911」をデザインしたアレキサンダー“ブッツィー”ポルシェが興したポルシェデザインと、スバルのコラボレーションは成功を納め、セダンしかなかった「ブリッツェン」シリーズには、2001年1月にワゴンが加わった。だから、6気筒モデルの投入は、期待され、また予想されていたことだ。
現代的なオールアルミ6シリンダーを積むツーリングワゴン“ブリッツェン6”は、多気筒エンジン搭載車にありがちな、鼻先の重さがない。ボクサーのように交互にピストンが動作するさまから、「ボクサーユニット」と称されることもある水平対向ユニット。レガシィブリッツェン6のそれは、3リッターという排気量をもちながら、蝶のように軽やかに拳を繰り出し続ける。赤いツーリングワゴンは、ターボモデルの圧倒的な速さとはまた別の、“静かなスポーティ”を感じさせる6発ワゴンだ。寡黙なアスリートといったところか。
惜しむらくは、スロットルバタフライにメカニカルなチューンが施され、6気筒用にマッチングが図られたとはいえ、ATが4段のままなこと。搭載されるフラット6が、作動が滑らかで上品なエンジンなだけに、各ギアの守備範囲の広さと、シフトショックの大きさがなおさら残念だ。
駆動力は「VDC-4WD」という高度な電子制御システムを介して、4輪に配される。雨や雪など、走行条件が悪いときには、心強い駆動方式である。縁の下で支えているアクティブセイフティを、しかしドライバーは何ら気にとめる必要はない。穏やかなドライブを通じて、たとえブリッツェン6に備わるマッキントッシュのサウンドシステムの電源を入れなくても、スバルとポルシェデザインによる新しい旋律を楽しむことができる。水平対向6気筒の、控えめな伴奏つきで。
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏/2002年9月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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