スバル・レガシィツーリングワゴン 2.5i EyeSight tS(4WD/CVT)【試乗記】
これぞ今風のスポーツモデル 2013.02.28 試乗記 スバル・レガシィツーリングワゴン 2.5i EyeSight tS(4WD/CVT)……401万4000円
「レガシィ」にSTI独自のスポーツチューニングを施した「2.5i EyeSight tS」。STIのコンプリートカーで初となる自然吸気エンジン搭載車の走りとは。
自然吸気のSTIモデル
「STI」のロゴが入った真っ赤なスタート/ストップボタンを押してエンジンをかけると、正面のマルチインフォメーションディスプレイに「STI Performance」の文字と「レガシィ」のフロントマスクが現れる。アレっ、旧型の顔じゃないの? という気もするが、ヘッドライトがピカッと光る動画風演出でカッコイイ。
「レガシィ2.5i EyeSight Sパッケージ」をベースに、STIが仕立てたコンプリートカーが、新しいレガシィの「tS」である。ワゴンとセダンに設定されるtSは、ベースモデルの68万円高。機能面での変更箇所は主に足まわりで、ホイールが17インチから18インチになり、専用チューンのビルシュタインダンパーやコイルスプリングを備える。控えめなリアスポイラーや左右2本出しマフラー、本革とアルカンターラ混成のシートなど、チューンの手は内外装にも及ぶが、自然吸気の2.5リッター水平対向4気筒やCVTはストックのままである。
BMWでいえば、「M」ではなく、「Mスポーツ」か。と思ったが、Mスポーツにも専用のマフラーやメーター類は装備されない。
さらにtSシリーズが普通のスポーツモデルと違うのは、その台数的希少性だ。今回のレガシィの場合、発売日の2012年11月13日から4カ月間に限定300台を受注生産する。つまり、先着300名様限りの、しかも期間限定モデルというわけだ。クルマを旬の高級野菜のように売る、なかなか頭のいいやり方だと思う。
ノンターボは大人の選択
「tS」とは「tuned by STI」の略である。tSのサスペンションチューニングの流儀は「固め過ぎないこと」。補強はしても、しなやかさは残す。レガシィtSのアシもまさにそうである。
今回は限界を試すような乗り方はできなかったが、町なかから高速道路まで、実用領域では乗り心地のよさが印象的だった。ノーマルのレガシィも乗り心地は悪くはないが、こちらはさらに輪をかけてなめらかで、“雑味”がない。スポーツモデルを強調するようなハードさはもちろんまったくない。ひとことで言うと、大人の足まわりである。
3人乗車で高速道路をハイペースで走り、「メルセデス・ベンツAクラス」の試乗会に乗りつけた。直後にステアリングを握った「A180スポーツ」と比べても、遜色なかった。レガシィははるかにフットプリントが大きいため、乗り心地のテイストは異なるが、上質さでは負けていないと思った。もっとも、レガシィtSのほうが高価だが。
173psの2.5リッターフラット4には手が入っていない。ツインテールパイプの専用マフラーで排圧が減っているとすれば、多少、吹け上がりは軽くなっているのかもしれないが、有意性のある差は感じられない。3人プラス、カメラ機材が載ると、正直言って、もうちょっとパワーがほしい。足まわりのフトコロがより深くなっただけに、余計にそう感じた。
だが、今度のレガシィtSはあえてノーマルのノンターボを選んだ。それも大人の味だろう。このご時世、アメリカンサイズのボディーをハイパワーターボで走らせることが必ずしもカッコいいか。その判断は人それぞれにしても、レギュラーガソリンでいけるノンターボエンジンは大きな現世御利益である。
ぶつからない技術も標準装備
もうひとつ、新しいレガシィtSは、tSシリーズ初のEyeSight搭載車である。tSを選ぶ人は、おそらくノーマルレガシィのユーザーより“ドライビングフリーダム”を強く欲するはずだが、そのクルマにも「ぶつからない技術」が盛り込まれた。
幸い自動ブレーキのお世話になることはなかったが、全車速追従機能付きのクルーズコントロールは高速道路で使用した。これでひとつ残念なのは、車間距離を3段階の最小に設定していても、“詰め”が甘く、結果として割り込みを誘ってしまうことである。かえって危険なので、そのうちスイッチに手が伸びなくなる。スバルに限らず、日本車のインテリジェントクルーズコントロールはみなそうだ。その点、ヨーロッパ車は日本のせっかちな車間距離にも合っていて、掛け値なしに使える。
試乗車を三鷹のSTIに返却したのは1月23日だった。その時に聞いた話では、12月21日の集計時点での受注台数は249台。300台まではまだ余裕があった。ちなみに、74%がツーリングワゴン。ボディーカラーは白、青、黒、銀の4色。この順番で人気が高く、白が52%、青が29%を占めるという。
この原稿を書くために、いま(2月11日)、STIのオフィシャルサイトを開いたら、販売終了となっていた。締め切りまで1カ月を残して完売とは、この時代に大したものである。あいかわらずスバルにはいいお客さんがついている。
(文=下野康史/写真=高橋信宏)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】 2026.9.1 2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
NEW
新型「三菱パジェロ」の外装・内装を写真でチェックする
2026.9.2画像・写真5年間のブランクを経て、三菱のフラッグシップSUV「パジェロ」がついに復活! 「グランドカリスマ -泰然自若-」をコンセプトにデザインされた本格クロスカントリーモデルは、どのような姿をしているのか? 内外装の詳細を、写真で紹介する。 -
NEW
復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.9.2デイリーコラム5年間の沈黙を経て、ついに登場した新型「三菱パジェロ」。スリーダイヤモンドが誇る荒野のフラッグシップは、いかにして復活を遂げたのか? 開発の経緯や内外装デザインの詳細、パワートレインに見るクルマの“狙い”をリポートする。 -
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
































