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【スペック】全長×全幅×全高=4800×1780×1520mm/ホイールベース=2750mm/車重=1560kg/駆動方式=4WD/2.5リッター水平対向4DOHC16バルブ(173ps/5600rpm、24.0kgm/4100rpm)/価格=351万円(テスト車=401万4000円/LEGACYマッキントッシュ・サウンドシステム&HDDナビゲーションシステム=50万4000円)

スバル・レガシィツーリングワゴン 2.5i EyeSight tS(4WD/CVT)【試乗記】

これぞ今風のスポーツモデル 2013.02.28 試乗記 下野 康史 スバル・レガシィツーリングワゴン 2.5i EyeSight tS(4WD/CVT)
……401万4000円

「レガシィ」にSTI独自のスポーツチューニングを施した「2.5i EyeSight tS」。STIのコンプリートカーで初となる自然吸気エンジン搭載車の走りとは。
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自然吸気のSTIモデル

「STI」のロゴが入った真っ赤なスタート/ストップボタンを押してエンジンをかけると、正面のマルチインフォメーションディスプレイに「STI Performance」の文字と「レガシィ」のフロントマスクが現れる。アレっ、旧型の顔じゃないの? という気もするが、ヘッドライトがピカッと光る動画風演出でカッコイイ。

「レガシィ2.5i EyeSight Sパッケージ」をベースに、STIが仕立てたコンプリートカーが、新しいレガシィの「tS」である。ワゴンとセダンに設定されるtSは、ベースモデルの68万円高。機能面での変更箇所は主に足まわりで、ホイールが17インチから18インチになり、専用チューンのビルシュタインダンパーやコイルスプリングを備える。控えめなリアスポイラーや左右2本出しマフラー、本革とアルカンターラ混成のシートなど、チューンの手は内外装にも及ぶが、自然吸気の2.5リッター水平対向4気筒やCVTはストックのままである。

BMWでいえば、「M」ではなく、「Mスポーツ」か。と思ったが、Mスポーツにも専用のマフラーやメーター類は装備されない。
さらにtSシリーズが普通のスポーツモデルと違うのは、その台数的希少性だ。今回のレガシィの場合、発売日の2012年11月13日から4カ月間に限定300台を受注生産する。つまり、先着300名様限りの、しかも期間限定モデルというわけだ。クルマを旬の高級野菜のように売る、なかなか頭のいいやり方だと思う。

エンジンをかけるとメーターパネルに「STI Performance」のアニメーションが表示される。
エンジンをかけるとメーターパネルに「STI Performance」のアニメーションが表示される。 拡大
STI製の18インチホイール。テスト車には、STI製のフロントスポイラーに加え、ディーラーオプションのスカートリップ(1万500円)、サイドアンダースポイラー(5万7750円)、グレーのピンストライプ(1万2600円)が装着されていた。
STI製の18インチホイール。テスト車には、STI製のフロントスポイラーに加え、ディーラーオプションのスカートリップ(1万500円)、サイドアンダースポイラー(5万7750円)、グレーのピンストライプ(1万2600円)が装着されていた。 拡大
 
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ノンターボは大人の選択

「tS」とは「tuned by STI」の略である。tSのサスペンションチューニングの流儀は「固め過ぎないこと」。補強はしても、しなやかさは残す。レガシィtSのアシもまさにそうである。

今回は限界を試すような乗り方はできなかったが、町なかから高速道路まで、実用領域では乗り心地のよさが印象的だった。ノーマルのレガシィも乗り心地は悪くはないが、こちらはさらに輪をかけてなめらかで、“雑味”がない。スポーツモデルを強調するようなハードさはもちろんまったくない。ひとことで言うと、大人の足まわりである。

3人乗車で高速道路をハイペースで走り、「メルセデス・ベンツAクラス」の試乗会に乗りつけた。直後にステアリングを握った「A180スポーツ」と比べても、遜色なかった。レガシィははるかにフットプリントが大きいため、乗り心地のテイストは異なるが、上質さでは負けていないと思った。もっとも、レガシィtSのほうが高価だが。

173psの2.5リッターフラット4には手が入っていない。ツインテールパイプの専用マフラーで排圧が減っているとすれば、多少、吹け上がりは軽くなっているのかもしれないが、有意性のある差は感じられない。3人プラス、カメラ機材が載ると、正直言って、もうちょっとパワーがほしい。足まわりのフトコロがより深くなっただけに、余計にそう感じた。
だが、今度のレガシィtSはあえてノーマルのノンターボを選んだ。それも大人の味だろう。このご時世、アメリカンサイズのボディーをハイパワーターボで走らせることが必ずしもカッコいいか。その判断は人それぞれにしても、レギュラーガソリンでいけるノンターボエンジンは大きな現世御利益である。

インテリアには、赤いプッシュエンジンスイッチや、赤いステッチが施された専用の本革巻きステアリングホイールが装備されるほか、各所に「STI」のロゴが配される。
インテリアには、赤いプッシュエンジンスイッチや、赤いステッチが施された専用の本革巻きステアリングホイールが装備されるほか、各所に「STI」のロゴが配される。 拡大
グレーパンチングのアルカンターラとブラックレザーを組み合わせたシートには、赤いステッチとSTIの刺しゅうゴロが施される。
グレーパンチングのアルカンターラとブラックレザーを組み合わせたシートには、赤いステッチとSTIの刺しゅうゴロが施される。 拡大
2.5リッター水平対向4気筒NAエンジン。出力はベースモデルと変わらず、173ps、24.0kgmを発生する。
2.5リッター水平対向4気筒NAエンジン。出力はベースモデルと変わらず、173ps、24.0kgmを発生する。 拡大
 
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ぶつからない技術も標準装備

もうひとつ、新しいレガシィtSは、tSシリーズ初のEyeSight搭載車である。tSを選ぶ人は、おそらくノーマルレガシィのユーザーより“ドライビングフリーダム”を強く欲するはずだが、そのクルマにも「ぶつからない技術」が盛り込まれた。

幸い自動ブレーキのお世話になることはなかったが、全車速追従機能付きのクルーズコントロールは高速道路で使用した。これでひとつ残念なのは、車間距離を3段階の最小に設定していても、“詰め”が甘く、結果として割り込みを誘ってしまうことである。かえって危険なので、そのうちスイッチに手が伸びなくなる。スバルに限らず、日本車のインテリジェントクルーズコントロールはみなそうだ。その点、ヨーロッパ車は日本のせっかちな車間距離にも合っていて、掛け値なしに使える。

試乗車を三鷹のSTIに返却したのは1月23日だった。その時に聞いた話では、12月21日の集計時点での受注台数は249台。300台まではまだ余裕があった。ちなみに、74%がツーリングワゴン。ボディーカラーは白、青、黒、銀の4色。この順番で人気が高く、白が52%、青が29%を占めるという。
この原稿を書くために、いま(2月11日)、STIのオフィシャルサイトを開いたら、販売終了となっていた。締め切りまで1カ月を残して完売とは、この時代に大したものである。あいかわらずスバルにはいいお客さんがついている。

(文=下野康史/写真=高橋信宏)

 
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今回初めて「tSシリーズ」にも“ぶつからない技術”「EyeSight」が標準装備された。
今回初めて「tSシリーズ」にも“ぶつからない技術”「EyeSight」が標準装備された。 拡大
 
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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