ホンダ鷹栖テストコース雪上試乗会
2013.03.08 画像・写真北海道上川郡鷹栖町(たかすちょう)にあるホンダのテストコースで開催された雪上試乗会。雪に覆われたコースでホンダのファミリーカーから海外モデル、最新技術を備える試作車に軽トラックまで、たっぷりと試乗した。(文=工藤考浩/写真=本田技研工業)

雪上試乗会が行われたのは旭川のほど近く、鷹栖町にあるホンダのテストコースで「鷹栖プルービンググラウンド」と呼ばれる施設だ。1周6.8kmの高速周回コースのほか、ヨーロッパ郊外の道路を模したコース、ワインディングコースなどが設けられている。北海道の冬だから当然ながら一面の雪景色だ。
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雪上試乗会が行われたのは旭川のほど近く、鷹栖町にあるホンダのテストコースで「鷹栖プルービンググラウンド」と呼ばれる施設だ。1周6.8kmの高速周回コースのほか、ヨーロッパ郊外の道路を模したコース、ワインディングコースなどが設けられている。北海道の冬だから当然ながら一面の雪景色だ。
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まずはホンダの人気車、「N-ONE」を試乗。写真をご覧になってお分かりのように、試乗車にはけん引フックがセット済み。万が一コースアウトしてスタックしても、すぐに助けてもらえる。筆者は北海道出身で、しかも札幌でタクシー運転手をしていた経験もあるから、道産子のプライドにかけても、けん引フックのお世話にはなりたくないものだ。
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「N-ONE」はFFと4WDを試乗した。こちらの写真は4WD。乗り比べてみると違いは明らかで、4WDはコーナーで滑り始めてからのコントロールに安心感があった。いざという時に冷や汗をかく量が少なくてすむだろう。
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ちなみに4WDには親水ヒーテッドドアミラーが標準で装備される。サイドミラーには大雪や地吹雪の際、巻き上げられた雪が付着しやすいのでありがたい装備だ。
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続いてはホンダの高級ブランド、アキュラのSUV「RDX」。全長×全幅×全高=4660×1872×1678mmと「CR-V」よりもほんの少しだけ大きいボディーに、3.5リッターV6エンジンを搭載する。
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ボディーサイズも手頃で、デザインもかっこいい。アキュラブランドだけあって、内装も高級感たっぷり。ちなみに米国での販売価格は3万4320ドル(約320万円)から。日本で販売されないのが不思議なほど魅力的なクルマだった。
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こちらは国内でも買えるエレガントなSUV「CR-V」。2.4リッターエンジン搭載の4WDモデルは、クローズドの圧雪路面をVSA(車両挙動安定化制御システム)のお世話になりながら走ると最高に楽しい。「あ、だめかな」と思うか思わないかのタイミングでシステムが働き、さらにはモーションアダプティブEPSが、適切なステアリング操作までサポートしてくれる。運転が100倍くらいうまくなった気分だ。
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ハイブリッドスポーツ「CR-Z」の雪上での印象は「スポーツカーはどこを走ってもスポーツカー」だった。せっかくの「CR-Z」を雪道で乗っても楽しくないんじゃ……なんて思っていたが、大間違い。VSAのおかげで限界ギリギリ心臓ドキドキ、かつ安心スイスイのドライブを楽しむことができた。
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VSAをオフにしたら、ひょっとするともっと楽しかったりしないだろうか、と試してみたが、すぐオンに戻した。電子制御の介入がないほうがコントロールの楽しみはあるのだが、素直に機械のお世話になった方が速く安全に走れる。しかも、圧倒的に。
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つぎに試乗したのは「N BOX+」。いま一番売れている軽自動車をクローズドコース、しかも雪道で思う存分走らせることができるなんて、めったにあることではない。ちなみに試乗車は4WDモデルだ。雪が少ない地域の方には「N BOX」に4WDがあることを知らない方も多いのではないだろうか。参考までに「N BOX+」の場合4WDはFFの12万円高。
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「N BOX+」で雪上コースを走行して、背徳感のようなものを感じた。ファミリーカーで「エマージェンシーストップシグナル(急ブレーキでハザードが点滅)」やVSAを作動させながら、曲がりくねった雪道を疾走するのは、いけないことをしているような、はたまたそれが快感であるような危うさがある。
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市販車最後に登場するのは、「フィット」のスポーツバージョン「ハイブリッドRS」。こちらはFFのMTモデルだ。モーターによるアシストがあるハイブリッド車をMTで、しかも雪上でとなると、運転しにくいのではないかと心配だった。しかし、低回転からトルクを発生するモーターの特性なのか、アクセルを踏めば踏んだだけ前に出るという感じで気持ちよかった。こんな時に感じる「練習したらもっと速く(うまく)なれそうだな」という感覚って、どうしてこうも人を魅了するのだろう。
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最後に紹介する2車種は、ホンダの最新技術を搭載した試作車。後輪の左右を独立した2つのモーターで駆動する電動式の四輪駆動システム「スポーツハイブリッドSH-AWD」と、後輪のトー角を左右独立した電動アクチュエーターで制御する「プレシジョン・オール・ホイール・ステア」の性能を体験した。
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「スポーツハイブリッドSH-AWD」は2013年後半に発売が予定されている新型「アキュラRLX」に搭載される(そして次期「NSX」にも搭載されるといわれる!)、3.5リッターV6エンジンに3基のモーターと7段デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせたハイブリッドシステム。1基のモーターはトランスミッションに内蔵され、残りの2つは後輪の左右を独立して制御する。
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「スポーツハイブリッドSH-AWD」はとても自然な印象。「発売前の最新技術に試乗するんだ!」という意気込みのもとでステアリングを握ったが、ごく普通の4WDだと言われたらそうとしか思えないほど自然。けれども、スラロームの間をすり抜ける時の挙動は一般的な4WDよりもスムーズ。これは一般路でもぜひ試してみたい。
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もう一つのひみつ道具「プレシジョン・オール・ホイール・ステア」も新型「アキュラRLX」のFF車に搭載される技術。後輪のサスペンションアームに電動アクチュエーターを設け、左右独立してトーをコントロールするというもの。雪上では「このままではコースアウト」という場面で、予想よりもグイッと曲がってくれる……気がする。「気がする」というのはある意味正解(?)のようで、このシステムの開発陣は、できるだけ自然に、普段の運転で違和感を覚えることがないようにセッティングを詰めていったそう。
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最新技術に驚かされた後で登場させるのもアレだが、うしろにひっそり隠れるように止まっている軽トラック「アクティ」が、とても印象深い乗り物だった。この試乗会で大変お世話になったVSAなどの電子技術ナシの、素のクルマ。少し調子に乗ってしまうと、あっという間にコントロールを失う。それでも事故の心配のないテストコースだから「楽しい」なんて思ってしまうが、一般路だったらそんな余裕はない。安全装備のありがたさを身をもって感じる。
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雪上試乗会を通じて、あらためて安全技術の進歩を知った。特に「VSA(挙動安定化制御システム)」の効果は、きっとこれまで何百人、何千人もの命や財産を守ったことだろう。ホンダ技術者の皆さんには、いつの日か「人生安定化制御システム」を開発していただき、私を人生のコースアウトからも守ってほしいものだ。