日産 スカイライン【特集/webCG青木禎之】
冷たいスカイライン-webCG記者が見た新世代サルーン- 2002.01.03 試乗記 スカイライン 300GT(5AT) ……362.0万円 250GT Sコレクション(4AT) ……335.0万円 「スカイライン」。日本のクルマ好きのココロを、妖しくゆする栄えある名前。「ストレート6」「FR」「丸型リアランプ」そして「スポーティ」。そんな伝統を、新世代スカイラインは、かなぐり捨てるのか? webCG記者には、クルマを専門とするマスコミュニケーションに携わる者として、穏やかならざるものがあった……。■新しいカタチ
最初に乗ったのは、2.5リッターのSコレクションだった。新しい日産スカイラインのプレス向け試乗会は、雨。乗るのはGT-Rならぬ普通仕様の4ドア版だけれど、そこは天下のスポーティサルーン。3リッターと2.5リッター、2種類あるうちの、多少なりともエンジン出力の小さいモデルからお手合わせ願おうと思ったのだ。
1999年の東京モーターショーに出展されたプロトタイプ「XVL」ゆずりのボディスタイルをとる新型は、先代より185mmも長い2850mm(!!)のホイールベースをもつ。11代目にして初めて輸出される北米市場をにらんで、じゅうぶんな室内空間を確保するためである。「スカイライン」という重い名前を背負って「動力性能」と「商品性」の狭間で揺れた歴代モデル。
今回も、振り子は正しく「居住性」へと振れた。違うのは、先代より30mmと95mm拡大された横幅と全高に対し、全長は逆に30mm短縮されたこと。いうまでもなく、長い直列6気筒エンジンを捨て、V6を選んだからこそ可能となった。
全長4675mm、全幅1750mm、全高1470mm。フロントドアの前端から前輪までが長く、タイヤから前のオーバーハングが短い、先代とは明かに縦横比が変わったフォルムは、「これが新しいスポーティのカタチだ」と言われれば、納得できる。
■リアルな走行感覚
ステアリングを切って路上に出ようとしたとたん、「ああ、これはイイ」と思った。芯金に軽量なマグネシウムダイキャストを用いた本革巻きステアリングホイールは、しっとり指に優しい。
スムーズな操作感。適度な重さ。ロック・トゥ・ロック=2.89、「15.9:1」という速いステアリングギア比をもつニュースカイラインは、5.5mという最小回転半径とあわせ、ボディの大きさを感じさせない。
乗り心地は滑らかだ。フロントサスペンションは、A型だったロアアームが2本のリンクに分離されて路面からの入力を上手にいなし、リアサスは、ダンパーとスプリングが別配置となってフリクションが低減された。アーム類のアルミ化による、前が約25%、後で約20%ものバネ下荷重軽減も、効果的に効いているのだろう。さらに、ダンパー内に薄いゴムを入れ、微振幅高周波振動を抑える「リップルコントロール・ショックアブソーバー」を装着することで、スカイラインは、大変上品に走るようになった。まるでグロリアのように。
テスト車は、バックスキン調のエクセーヌと合皮を用いたブラック内装の「Sセレクション」。タイヤは、ノーマルの「205/65R16」ではなく、「215/55R17」とひとまわり大きなオプションサイズを履いていた。銘柄は、ブリヂストンのスポーツシリーズ「ポテンザ」ではなく、ラグジュアリーな「レグノRE33S」。ちなみに最後の「S」は、「スカイライン専用開発」の意味である。
セフィーロで初めて採用されたVQユニットは直噴化され、eVTC(電子制御連続可変バルブタイミングコントロール)を搭載、従来より5psアップの215ps/6400rpmの最高出力と、0.5kgm太い27.5kgm/4400rpmの最大トルクを発生する。軽やかに回る。濡れた坂道を、給排気系にファインチューニングを受け、等長エグゾーストマニフォルドをもつ縦置きユニットは、快音を発してニューモデルを走らせる。「めくるめく疾走感」は感じさせない。もっと、リアルな走行感覚だ。
■CD値=0.27
3リッターモデルも、当然のことながら、基本的な性格は変わらない。最高出力260ps/6400rpm、最大トルク33.0kgm/4800rpmと、492cc分力強い。ただ、2.5リッターモデルの、クルマ全体のリファインに置いていかれたかのような4段ATに替え5段ATが奢られたことで、250GTより45.0万円高い価格に説得力がある。250GTが280.0万円、300GTが325.0円となる。
V6ユニットの重心がフロントホイールより後にある「フロントミドシップ」による、前:後=58:42というFR車として理想的な重量配分。 長いホイールベースによる広い室内。そして、ボディ下面の空気の流れまでコントロールした空力性能のよさが、ニュースカイラインのテクニカルハイライトである。 ドラッグ係数(CD値)は0.27(リアスポイラー装着車は0.26!)という驚異的な低さ。しかも「4ドアセダン世界初のゼロリフト」(プレス資料)を実現して「乗り心地のよさと高速安定性を両立」(同)した。
「パッと見、スタイリングはXVLと同じですが、ルーフの形状やCピラーの角度を1度単位で変えて、風洞実験しました」と、試乗会場でお話をうかがったデザイナーは胸を張る。「高速道路を走ってみてください。今日は雨ですが、路面からの水はねが格段に少ないはずです」とは、走行実験の担当者。「クルマがあまり汚れませんよ」との言葉に、カメラマンが目を輝かせる。
■スカイラインのDNA
富士五湖道路で文字通りのフラットライドを楽しみながら、しかしココロは晴れない。日産の看板モデルが、北米市場に撃って出るのは大歓迎だ。ドメスティックスターから、グローバルプレイヤーに脱皮するスカイラインを応援したい。そのためのロングホイールベース化、居住性重視、V6ユニットの搭載も理解できる。
「でも」と、試乗に先立って受けた説明会の内容を思い出しながら考える。「FMパッケージ」と名づけられた新しいレイアウトを、ルマン24時間レースをはじめとした、レースフィールドからのフィードバックと謳うのは詭弁じゃないのか。新型の安楽な乗り心地をして、「耐久レースではこの方が速いんです。だから、これがスポーティなスカイラインのDNA」と説明するのは、ズルいよ。
4ドアサルーンのステアリングホイールを握りながら、釈然としない気持ちを整理をしながら、しかしリポーターは、胸の奥のモヤモヤの本当の理由を知っている。いままで、クルマ好きはストレート6を積むタイトなFRモデルを賞賛してきたけれど、実は、それは贔屓の引き倒し。世の一般的な、そして圧倒的に多数のユーザーが望んでいた「スカイライン」は、実は広くてラグジュアリーなクルマだったんじゃあないか……。新しいモデルの成功と日産の復活を願いながら、ヒヤリと冷たいものを感じる。
(文=webCG青木禎之/写真=河野敦樹/2001年7月)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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