スズキ・スイフトスポーツ(FF/6MT)
トルクありすぎ! 2017.11.08 試乗記 日本を代表するコンパクトスポーツ「スズキ・スイフトスポーツ」がついにフルモデルチェンジ。動力性能も操縦性も乗り心地も、全方位的に進化を遂げた新型だが、2日間にわたる試乗体験ではいまひとつ留飲が下がらなかった。その理由とは?今回も気合が入っている
カレラといえば「ポルシェ911」。GTIといえば「ゴルフ」。タイプRといえば「シビック」。ワークスといえば「アルト」。そしてスポーツといえば「スイフト」、と思ってもらえるくらいおなじみになってきたホットハッチスイフトがフルチェンジした。
現行スイフト本体も意欲作だが、今度のイエローバードもリキが入っている。新型プラットフォーム(車台)で構築されたボディーは、ワイドトレッド化で全幅1735mmになった。スイフト初の3ナンバーである。
エンジンは、従来の自然吸気1.6リッターから新世代の直噴4気筒1.4リッターターボに刷新された。「エスクード」用の「K14C」型にハイオク仕様の専用チューンを施したダウンサイジングターボユニットだ。これまで販売の3割を占めていたという2ペダル変速機は、CVTから6段ATに変わった。
すっかり四輪スズキの名物になった軽量仕上げもぬかりない。MTより20kg重いATでも、車重は990kgに収まる。5ナンバーだった先代スポーツより70kgも軽くなった。
今回、2日間約400kmを走らせたのは、MTのセーフティパッケージ装着車。この状態だと192万2400円。ナビやドライブレコーダーなどのオプションを備えた試乗車は220万円を超す。スイスポも高くなりにけり。
ATの方を試してみたい
新型スイフトスポーツの性格を決定づけているのは、エンジンである。140psの最高出力は、先代1.6リッターNAの4ps増しだが、最大トルクは5割近いアップの230Nmになった。「アバルト595」用のフィアット製1.4リッターターボは145psだが、最大トルクは180Nm、スポーツモードでも210Nmである。
実際、走りだすと、アンコ型のトルクを常に感じさせるエンジンである。途中からターボキックが炸裂するタイプではない。ターボの音もしない。ただ下から上まで全域でトルクが盛られている。知らずに乗ったら、排気量の見当がつかない。たかだか1.4リッターと聞いて、だれしもびっくりすると思う。
レッドゾーンは6250rpmからだが、6000rpmを超えたあたりでやや唐突にリミッターが働く。ギアリングは加速重視で、ローは50km/h手前で頭打ちになる。引っ張る楽しみはないが、モリモリと力強い。高いギアに入れたままでもよく粘るのは驚異的だ。
6段MTは3速をダブルコーンシンクロ化するなどの改良を受けている。作動は軽いが、「アルトワークス」のような画然としたゲート感はない。素早いシフトだとセカンドに入れるときにひっかかるのが気になった。このエンジンの性格だと、今度のスイスポはATのほうが、相性がいいかもしれない。
3ペダルMTで半自動運転を体験
セーフティパッケージには、ACC(アダプティブクルーズコントロール)が付いている。全車速対応ではないが、上は115km/hまで設定可能で追従走行ができる。
MTにACCの組み合わせは初めての経験だったが、高速道路では重宝した。ひとえにトルク型エンジンのおかげである。100km/hに設定したまま、追従走行で70~80km/hに落ちても、前が空けば6速トップのままグイグイ加速する。もっと加速がほしければ、シフトダウンすればいい。下はメーター上35km/hあたりまでカバーするACCの作動中でも、3速まで落とせる。なかなかおもしろい半自動加速体験だった。
ただ、MTだから、ペダルが3つもある。ACCで足フリー運転を長く続けたあと、ETCゲートが現れて制動に迫られたりすると、アレッ、ブレーキどれだっけとあわててしまうのは、ワタシだけ!?
約400kmの燃費は13.2km/リッター(満タン法)だった。これだけ力があれば納得だが、1.4リッターと思うと、いまひとつか。好燃費ならほかのモデルでと割り切っているのか、MTにもATにもアイドリングストップ機構は付かない。
ちょっとムキになりすぎな気も……
軽量でも安手な軽さがまったくないのは、ほかのスイフトと同じである。脚もボディーもしっかりしている。旧型スポーツは、乗り心地がいやってほど堅かったが、新型はその点でも進化して、ファミリーカーとして使える快適性を備えている。
操縦性能もスイスポ史上最良だ。これほどのトルクがあっても、シャシーが破綻をみせることはない。「コンチスポーツコンタクト5」の“グッジョブ”ぶりも際立つ。スタートダッシュでもコーナーからの脱出時でもトルクステアはよく抑え込まれている。
だが、2日間乗っていて、いまひとつ留飲が下がらなかった。理由は、「トルクありすぎ」と思った。子どものスポーツに親が出てきちゃったような気がする。こんなにムキにならなくても、例えば「RSt」用の3気筒996ccターボをちょっとチューンしてMTと組み合わせたくらいのほうが、“スポーツ”という語感本来の楽しいホットハッチに仕上がったのではないか。
なんていうのはあくまで個人の感想。効果は人それぞれです。600Nm台のトルクに慣れている編集部バイパーほったは、「大好きです」と言った。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
スズキ・スイフトスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3890×1735×1500mm
ホイールベース:2450mm
車重:970kg
駆動方式:FF
エンジン:1.4リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:140ps(103kW)/5500rpm
最大トルク:230Nm(23.4kgm)/2500-3500rpm
タイヤ:(前)195/45R17 81W/(後)195/45R17 81W(コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5)
燃費:16.4km/リッター(JC08モード)
価格:183万6000円/テスト車=221万7240円
オプション装備:セーフティパッケージ<デュアルセンサーブレーキサポート+車線逸脱抑制機能+車線逸脱警報機能+ふらつき警報機能+先行車発進お知らせ機能+ハイビームアシスト機能+SRSカーテンエアバッグ+フロントシートSRSサイドエアバッグ+アダプティブクルーズコントロール+リアシートベルトフォースリミッター&プリテンショナー[左右2人分]>+全方位モニター用カメラパッケージ<フロントカメラ+サイドカメラ[左右]+バックカメラ+フロント2ツイーター&リア2スピーカー+ステアリングハンズフリースイッチ>(14万4720円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン、チェッカー>(2万0142円)/スタンダードメモリーワイドナビセット<パナソニック>(14万4018円)/オーディオ交換ガーニッシュ+アンテナ変換ケーブル(8424円)/ドライブレコーダー+VTRケーブル(3万7260円)/ETC車載器<ビルトインタイプ>(2万1816円)/ETCナビゲーション接続ケーブル<パナソニック製ナビ接続用>(4860円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1832km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(5)/山岳路(2)
テスト距離:418.1km
使用燃料:31.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:13.2km/リッター(満タン法)/13.3km/リッター(車載燃費計計測値)
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下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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