第157回:涅槃だぜN-WGN!
2020.01.07 カーマニア人間国宝への道「N-WGN」は国民車になれるか?
令和最初のお正月、あけましておめでとうございます。
が、カーマニアたる自分には、令和元年に乗り残した有力ニューモデルがありました。「ホンダN-WGN」です。
このクルマはすこぶる評判がいい。「N-BOX」の全高を低くして車重も軽くなってるんだから当然だ。デザインも超絶シンプル。小学3年生が描いたじどうしゃの絵みたいで、心にグッと来るものがある。
ホンダのデザインは、このところ低迷していた。いや、低迷していたのは普通車だけで、軽はNシリーズからこっち、シンプル&ストレート路線が大成功していたが、普通車デザインの低迷ぶりは目を覆うばかりだった。
が、次期「ホンダ・フィット」や「ホンダe」のデザインを見ると、ホンダは今後全面的にデザインをシンプル&ストレート路線に変更しそうな気配を感じる。新型N-WGNのデザインもその延長線上かつNシリーズの正常進化版。よりシンプル度が増していて凄(すご)みすら感じさせる。
N-BOXに代表される軽ハイトワゴンは、そもそもあまりにも全高が過剰だ。シートに座って手を伸ばしても天井に手が届くか届かないかってのは、さすがに高すぎるだろ! その点、N-WGNのようなトールワゴンはちょうどいい。走りも確実に良くなっているはず。
それらを勘案すると、カーマニアの色即是空な終着駅としてひとつの有力候補であり、国民車にもふさわしかろう!
某サイトで全日本国民車評議会議長を名乗っている伊達軍曹も、2代目N-WGNは「日本国民ならびに国内居住者各位に強く推奨したい、素晴らしい大衆実用車」と称賛している。
「足るを知る」の世界
私は一昨年、当連載にて「スイフトスポーツを国民車に!」とブチ上げたが、スイスポは国民車になれません。それはわかってます。
が、N-WGNならなれる! なってほしい! こういうクルマがN-BOXより売れて、販売台数日本一の座につくべきだ! それが正義というものだ! みたいなことをカーマニアとして感じていた。が、肝心の試乗がまだだった。
思えばこのクルマは、電動パーキングブレーキの不具合で生産停止中。再開は年明けらしい。今試乗すれば逆にタイムリーだったりするかも!
そこで、近所のホンダディーラーに電話して、試乗させていただくことにしました。
近所のホンダディーラーでは、白の「N-WGN L・Honda SENSING」(FF/自然吸気)が待っていた。車両本体価格136万円ちょっとの売れ筋グレードだ。
こうして間近で対面すると、白いN-WGNってのは、働くクルマの香りが非常に濃厚ですね。サイドに会社名が入ってないほうが不自然! というくらい営業車っぽい。あるいは介護施設のクルマか。この優しい感じがメチャはまる。
運転してみると、走りはすべてが自然だった。ノンターボの660ccエンジンは低速トルクが豊かで、車重が軽い分、N-BOXより一段軽快。アクセルを軽く踏むだけで軽やかに加速する。そこからグイッと踏み込んでも大して加速力は増さないが、この実用域のトルクと全開域での非力さ、まさに「足るを知る」の世界である。足まわりはふんわりしなやか。以上試乗記終わり。そんな感じだった。
カーマニアには不向き
確かに大変よくできたクルマである。猛烈によくできていて、どこにもケチのつけようがない。運転感覚も自然そのもので、運転していることすら忘れる。まるで呼吸である。あるいは涅槃(ねはん)。涅槃だぜN-WGN!
なんだか昔の「カローラ」を思い出すな……。
私はかつて、7代目カローラ(正確には「スプリンターセダン」)を2週間ほど通勤に使ったことがあるのですが、その時とちょっと似た感覚があった。スプリンターセダンも、どこにも欠点はないけれど、あまりの刺激のなさゆえに白一色の監禁部屋にいるようで、叫び出したくなったのだ。おやじ涅槃で待つ。
これだったらN-BOXのほうが、「背が高すぎて持て余すぜ!」と感じる分、刺激がある。「タント」なら「こんなに背が高いのにこの重心の低さはナニ!? すげえっ!」と感動する。しかしN-WGNは自然すぎてそういうものがナイ。
カーマニアが求める国民車とは、普遍的でありながら、どこかに欠点や過剰を持つクルマだったのだ。初代「フォルクスワーゲン・ビートル」とか初代「Mini」みたいに。しかしN-WGNはそっちではなかった……。
これだったら、見た目だけでも多少刺激が欲しい。せめて「カスタム」にしたいな。今度のカスタムはかつてのそれと違って、ほんのささやかなカスタム感でちょうどいい感じだし。
でもボディーカラーを見ると、カスタムは「ミッドナイトブルービーム」とか「プレミアムベルベットパープル」とか、オラオラ路線が継続されている。
ノーマルのほうで私が気に入った「ガーデングリーン」とか「ホライズンシーブルー」みたいなホンワカしたのは設定がない。
う~ん……。
結論。N-WGNはカーマニアには向きませんでした! やっぱカーマニアとしては、「スイフトスポーツを国民車に!」。
(文と写真=清水草一/編集=大沢 遼)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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