「LF-Zエレクトリファイド」が旗印 レクサスは今後どんなブランドを目指すのか?
2021.04.21 デイリーコラムLF-30エレクトリファイドの進化版
先日開幕した上海モーターショーで今後の電気自動車(EV)戦略を公開したトヨタだが、まるでそれを先導するかのように、レクサスもさる3月31日、EVコンセプト「LF-Zエレクトリファイド」と「ブランド変革に向けた取り組み」を公表している。これらは2019年秋の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「LF-30エレクトリファイド」と次世代電動化ビジョン「レクサス・エレクトリファイド」の進化・発展版といっていい。
まずコンセプトカーだが、今回のLF-Zエレクトリファイド(以下LF-Z)は、ガルウイングドアが印象的だった2019年のLF-30エレクトリファイド(同じくLF-30)より、デザインも車体サイズもずいぶんと現実的になった。
2019年のLF-30のスリーサイズは全長×全幅×全高=5.1m弱×2m弱×1.6mで、いうなれば「ランボルギーニ・ウルス」の全幅と全高をちょっとだけ小さくした感じの巨大SUVクーペだった。しかし、今回のLF-Zでは全長が一気に約20cm短くなった。いうなれば「レクサスRX」のキャビンを10cmほどチョップトップしたようなディメンションになり、明らかに現実味を増している。
そして、FRクーペSUVのようなロングノーズプロポーションは、いかにも近い将来に世界的に流行しそうな現実感がある。ちなみにLF-Zは豊満なヒップラインに呼応するかのように「リアへの高出力モーターの搭載」もうたうが、完全なEV専用設計ゆえに、実際のレイアウトはもちろん“FR”ではないだろう。
LF-Zについては「2025年までに実現を見据えた走り、デザインや技術を搭載」したとも説明されている。上海でうたわれたトヨタ全体のEV戦略と考え合わせれば、これは今後4年以内に発売されるレクサスEVの事実上のプロトタイプかもしれない。そう考えると、がぜん興味がわく。
予想を上回る電動化のスピード
「前後の駆動輪を独立して制御することで、FF、FR、AWDなど、走行シーンに応じた適切な駆動方式を提供できます。アクセル、ブレーキ、ハンドル操作に応じて、駆動力配分をコントロールし、ドライバーの意図する力強い加速感や爽快なコーナリング性能をもたらします」といった技術的特徴は基本的にLF-30時代と同じ。ただ、今回はその4WD技術に新しく「DIRECT4」という商品名らしき呼称が与えられただけでなく、LF-30にあった“4輪のインホイールモーター”の文言が消えた。
市販されるLF-Zの基本骨格にも、スバルと共同開発されたEV専用プラットフォーム「e-TNGA」が使われるはずだ。量産化はまだむずかしいインホイールモーターの表記がなくなったのも、現実のe-TNGAがそうでないからだろう。
EV性能にまつわる数値も、最高出力400kW(約544PS)/最大トルク700N・mというモーターのスペックは以前のLF-30と変わらない。いっぽうで、電池容量は110kWhから90kWhに縮小しつつも、0-100km/h加速3.0秒、航続距離600km(WLTPモード)といった性能は大幅に向上している。これらはもちろん、現時点で“見込み”だろうが、この種の数字は本気の目標というケースも多い。数年内の発売予定となればなおさらだ。
もし、このとおりの性能が実現したとすれば、加速性能は「ポルシェ・タイカン」の最強グレード「ターボS」にかぎりなく近く、同時に航続距離は「テスラ・モデルS」に匹敵することになる。なかなか高いハードルにも見えるが、EVの技術進化は日進月歩。これも、まったく現実的なのかもしれない。
もうひとつ注目したいのはLF-30にあった「ステアバイワイヤの採用」という表現がLF-Zでも継続されて、先日発表されたトヨタの「bZ4X」も搭載するとしているところだ。操舵システムの完全バイワイヤ化はある意味“夢の技術”だが、ここまで繰り返し堂々とうたうということは、e-TNGAでついに実用化のメドをつけたのだろうか。
2019年当時のレクサス次世代電動化ビジョンは「2025年には全車種に電動車を設定し、電動車の販売比率がガソリンエンジン車の比率を上回ることを目標」としていたが、今の目で見ると、これはあまりに悠長だ。この点はレクサス=トヨタの見立てよりも、現実のスピードが上回った。で、今回の新戦略では「2025年までに(中略)適時、適材、適所の考え方のもと、10以上のEV、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車等の電動車を含む、約20車種の新型や改良モデルを投入」と、以前より踏み込んだ内容のロードマップを公表した。
モデルチェンジラッシュのレクサス
それにしても、実質あと4年ちょっとで20車種とは! レクサスの現行車種すべてがフルモデルチェンジ/マイナーチェンジしたとしても、20車種には届かない。となると、今回のEVコンセプト「LF-Z」の市販版はもちろん、巷間でまことしやかにウワサされている「LQ」の市販化は確定だろうか。LQとは「ランクル」由来の「LX」とは異なる乗用車設計(GA-Lプラットフォーム?)のフラッグシップSUVといわれている。
レクサスはさらに「基幹モデルのセダンやSUVラインナップの強化・拡充にとどまらず、クルマを操る楽しさを提供し続けるスポーツモデル、新しいショーファーの在り方やこれまでにない新ジャンルのモデル等の可能性を追求」ともアピールしている。となれば、スポーツカーか、あるいは中国向けの「LM」を発展させたミニバン的ななにかをショーファーモデルとして世界展開か……と妄想は広がる。また、欧州はもちろん、北米や中国市場の状況を見るに、さらに数車種のEVは必要かもしれない。なにせ、トヨタブランドは2025年までに、じつに15車種のEVを投入するというくらいなのだ。
というわけで、レクサスの今後5年間は怒涛の展開になりそうだ。同カンパニーの佐藤恒治プレジデントは今後の商品展開について「今年発表する2車種の新型モデルを皮切りに」と明言した。ここでいう新型モデルは、順当に考えると秋の北米発売予定という「IS500 Fパフォーマンス」と、上海で初公開された「ES」の改良モデルだろうか。ただ、佐藤プレジデントのいう新型モデルに派生モデルやマイナーチェンジを含まないならば、「NX」か「CT」あたりが今年中にフルモデルチェンジするのかもしれない。
……と妄想は広がるばかりだが、これから先は新型車スクープを得意とするメディアさんにお任せしたいところだ。
(文=佐野弘宗/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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