個性派レーシングカーが激走! 「K4-GP 富士 10時間耐久」参戦マシン
2022.08.25 画像・写真2022年8月16日、静岡県小山町の富士スピードウェイで「K4-GP 富士 10時間耐久」が開かれた。「K4-GP」とは、「あまりお金をかけずに、みんなで楽しめるモータースポーツ」をコンセプトに、2001年に始まった軽自動車を中心とする耐久レースである。近年では毎年1月/2月に7時間耐久、8月に5時間耐久と10時間耐久が富士スピードウェイで開催されてきたが、新型コロナ禍によって2020年2月の7時間耐久を最後に一時休止。そして2年の空白を経て2022年1月に7時間耐久が復活、続いて夏の5時間/10時間耐久は3年ぶりの開催となった。
参加資格は基本的に軽自動車および軽規格のエンジンを使ったマシンで、参加車両はGP-1-N(自然吸気エンジンのAT車)、GP-1-T(過給機付きエンジンのAT車)、GP-2-F(現行軽規格の自然吸気エンジンのMT車)、GP-2(旧規格の自然吸気エンジンのMT車)、GP-3-F(現行軽規格の過給機付きエンジン車)、GP-3(旧規格の過給機付きエンジン車)、GP-4(レース専用のR車両、排気量900cc未満)、GP-5(レース専用のR車両、排気量900cc以上1200cc以下)の8クラスに分けられる。いずれも過給係数は1.5で、660ccターボは990cc換算となる。そして燃費制限があるのが特徴で、クラス別に使用可能な燃料量がレースごとに定められている。
軽が主体のためハードルが低く、また往年のレーシングマシンのレプリカなどユニークな車両が参加するため、楽しく和やかな雰囲気のレースである。しかし、勝つためには効率的に速く走らせるための高度な戦略と技量が必要とされる、とてもシビアなレースでもあるのだ。今回の出走車両は休止前の120~140台と比べたらやや少なめの101台だったが、それでも100台超がグリッドに並ぶレースは、めったにあるものではないだろう。それだけのマシンが競いながらも大きなインシデントはなく、セーフティーカー導入も2回のみで終わったレースの模様を、出走車両を中心に紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)
-
1/40101台の出走車両が並んだメインストレート。今回はGP-3クラス(旧規格の過給機付きエンジン搭載、自然吸気の場合は900cc以上1200cc以下)のマシンが先頭に並んだ。同クラス内での順序は一説によると「参加費を振り込んだ順」とのことだが、真偽は不明。
-
2/40K4-GPの特徴のひとつであるチームスタッフの仮装。ちなみに写真左上の美女3名は仮装ではなく、チームをバックアップするプロのキャンギャルである。
-
3/40こちらも仮装のみなさん。K4-GPでは、仮装は単なる遊びではない。規則書に「スタート要員はサーキットにふさわしくない仮装をすること。仮装もコンテストですので、仮装を軽んじるチームは場合によっては参加をお断りいたします」と明記されているのだ。
-
4/40スタートは変則ルマン式。午前8時、この写真でもわかる『ゲゲゲの鬼太郎』の「目玉おやじ」をはじめ仮装したチームスタッフがマシンに駆け寄り、ウインドシールに貼られた安全確認シールを剝がしてスタート! ただしローリングスタートなので、最初はペースカーにしたがってのフォーメーションラップである。
-
5/40仮装したチームスタッフがグリーン上に退避して、マシンがスタート。毎回、これを見ると江ノ島あたりの海水浴場のイモ洗い状態を連想する。
-
6/40隊列を整えながら1周を終え、2周目の1コーナーに向かうマシン群。スタートの1ラップに5分以上かかっていることがおわかりだろう。
-
7/404周のフォーメーションラップを終え、5周目にようやくグリーンフラッグ。いよいよレーシングスピードで走行開始。
-
8/40これまでは先頭からスタートしていた、絶対スピードでは最速のマシンであるレース専用のR車両(排気量900cc未満のGP-4クラスと900cc以上1200cc以下のGP-5クラス、過給係数は1.5)が、今回は最後尾から間隔を開けてスタートした。
-
9/40GP-5クラス3位となった「MATSUBA TT12」。660cc直3 DOHCターボユニットを使ったシングルシーター「フォーミュラ・スズキKei」のシャシーに「アルファ・ロメオ・ティーポ33/TT12」を模したカウルをかぶせたマシン。
-
10/40「フォードGT40」を80%に縮小した、その名も「フォードGT35」と「トヨタ7」を模した「FR-7」の、ホンモノ同士では見られないバトル。シャシーは前者が「カドウェル」、後者は「VIVACE」。いずれもワンメイクのミドシップレーシングカーである。
-
11/40「スバル・ヴィヴィオ」のボディーを大胆にカットしてR車両とした「ミニライト VIVIO ts」。総合2位、GP-5クラス2位を獲得した。
-
12/40現行軽規格の過給機付きエンジン車(自然吸気の場合は900cc以上1200cc以下)によるGP-3-Fクラスで2位となった「プラス1 S660」。見てのとおり「ホンダS660」だが、まだ車両価格が高くベースカーにするのは不向きなのか(?)、出走は1台だけだった。
-
13/40現行軽規格の自然吸気エンジンのMT車によるGP-2-Fクラスで優勝した「スタマジヴィツアー アルト」こと先代「スズキ・アルト」。
-
14/40赤ベコのトボケた表情がいい「RedBeco HONDA」は、自然吸気エンジンのAT車によるGP-1-Nクラスで優勝した。新車市場では不評だったテールゲートを持たない2代目「ホンダ・トゥデイ」の前期型だが、K4-GPでは昔から人気車種である。
-
15/40もともと犬っぽい(?)ルックスの「ダイハツ・エッセ」がベースの、これもシャレの利いた「ACNミニパトエッセ」。
-
16/40過給機付きエンジンのAT車によるGP-1-Tクラスで優勝した「CASTLEリンクマンクラブW」。ベース車両である2代目「スズキ・アルト ワークス」のデビューは1988年だから、もう30年以上前になるわけだ。
-
17/40GP-1-Nクラスで3位となった「スバル・プレオ バン」。車種選択といい、飾り気のないルックスといい、そして「デイサービス16号車プレオ」というエントリー名といい、「普段は訪問介護に使っています」という雰囲気。こういう普通の軽とバリバリのレーシングカーが同じ土俵で戦うところもK4-GPの魅力のひとつ。
-
18/40長年にわたって参戦している「サンク参号機ゼロ改」こと初代「ルノー・トゥインゴ」。旧規格の過給機付きエンジン車(自然吸気の場合は900cc以上1200cc以下)によるGP-3クラスで5位入賞。ちなみに輸入車の場合、軽規格の全長3400mm、全幅1480mmに対して+30mmの全長3430mm、全幅1510mmのいずれかを満たしていれば類似車両として参加可能。トゥインゴは全長3430mmなので、ギリでオーケーとなるわけだ。
-
19/40排気量900cc未満のR車両によるGP-4クラスで2位となった「IMAGE 936 nsj」は、「ザウルスジュニア」のシャシーに「ポルシェ936」風ボディーを載せたマシン。後方を走る「正田製作所未来塾VIVIO」こと「スバル・ヴィヴィオ」は、旧規格の過給機付きエンジン車のGP-3クラスで優勝。過給機付きエンジン車では、ターボよりもスーパーチャージャー付きのヴィヴィオのほうがK4-GPでは昔から強いのだ。
-
20/40現行規格の過給機付きエンジン車によるGP-3-Fクラスで優勝した「ケータハム・セブン160」と、旧規格の自然吸気エンジンのMT車によるGP-2クラスで優勝した「タンサンほいてR」のバトル。後者は常識的なテールゲート付きに変更された2代目「ホンダ・トゥデイ」の後期型だが、4ドア/5ドア仕様も含めた2代目トゥデイは、自然吸気エンジンの軽ではピカイチの速さを誇るのだ。
-
21/40「ザウルスジュニア」のシャシーに「トヨタ7」を模したボディーを載せた「ヨタシチ君」は、GP-4クラスにおいて4位でフィニッシュ。
-
22/40見た目は「ホンダS600」風だがシングルシーターの「工房名岐S600MINT-R」と「ロータス23B」風の「MAD23AT」のバトル。前者は「ザウルスジュニア」のシャシーにホンモノのS600用エンジンをミドシップ。後者は「スバル・サンバー」のシャシーを流用、ということはMRではなくRR。
-
23/40「ポルシェ356」風の「ケロヨンR」。これもシャシーは「ザウルスジュニア」。
-
24/40スタートから4時間少々を経過したところで、最終コーナーを立ち上がってホームストレートを行く参戦車両。
-
25/40参戦車両が多いだけに、常時数台がピットインしている状況。それでもマナーはきちんと守られており、混乱は起きない。ピットロードの制限速度は60km/h。
-
26/40ドライバー交代中の、長年にわたって参戦している「キャトレールフレンチブルーi」こと「ルノー4」。車体寸法のうち、1485mmという全幅が軽規格の1480mm+30mmという参加規定を満たしており、エンジンは1108cc直4 OHVのため、旧規格の過給機付きエンジン車(自然吸気の場合は900cc以上1200cc以下)というGP-3クラスに属する。
-
27/40給油中の光景。トータルの使用燃料量、一回あたりの給油量、給油回数に加えて、ガソリンスタンドに至るルートや制限速度などもキッチリと管理されている。
-
28/409時間過ぎまで上位を走行していたが、リタイアした「エルシーヨシモトガレージビート」。「ホンダ・ビート」はこれを含め3台が出走した。
-
29/40「ザウルスジュニア」に「フィアット・アバルト1000TCR」風のボディーを載せた、その名も「フィアット・アダルト」。ルーフパネルが外れるようになっており、ドライバーはそこから乗降していた。
-
30/40総合2位、GP-4クラス優勝を果たした「TEAM-T弐号機」。過去に数度の総合優勝を経験しているマシンで、ベースは軽自動車のエンジンを使ったフォーミュラカー「FK4」。
-
31/40「フォーミュラ・スズキkei」のシャシーに「フェラーリ512M」風ボディーを載せた「CRUSADERS SPL」に、ナンバー付きの「ODCR1」こと「スバルR1」が続く、なかなかシュールな光景。前者はGP-5クラス5位、後者はGP-1-Nクラス2位でフィニッシュ。
-
32/40300Rを横並びで駆け抜ける3台。アウト側の「タンサンほいてR」こと「ホンダ・トゥデイ」は総合4位、GP-2クラス優勝。R車両以外では最上位だったが、GP-2クラスは2019年夏の10時間耐久以来4連覇とか。
-
33/40「スズキ・カプチーノ」をブリスターフェンダーなどでモディファイした「Hara Cars EA11R」。中盤でウォールにヒットして右リア周辺を傷めたが、応急処置を施して完走した。
-
34/40「ザウルスジュニア」のシャシーを使った「ザウルス マクラーレン8B」。エントリー名から察するに「マクラーレンM8B」を模したのかと思うが、エッジが少々まろやかなカウル形状は「M6A」風?
-
35/40「ザウルス」のシャシーを使った「MEBIUS 908」。ヘッドライトが埋め込まれているが、エントリー名から察するにボディーカウルのイメージは「ポルシェ908/3」なのか?
-
36/40総合およびGP-5クラス優勝に輝いた、今回の覇者である「SARAH-R」。「VIVACE」のシャシーに載るボディーカウルは、白一色なのでわかりにくいが、ポルシェのカンナム用マシンである「917PA」を模したもの。エンジンはスズキ製660cc直3 DOHCターボ。
-
37/409時間30分過ぎに、この日2度目のセーフティーカーが入った。早く解除されないか、あるいはできるだけ引っ張ってくれないか、チームによって思いはさまざまだったはず。
-
38/40トップでフィニッシュしたカーナンバー83の「SARAH-R」。正式タイムは10時間2分13秒291、224ラップ。平均速度101.804km/h、2分20秒167のファステストラップはクラス5位だった。
-
39/40「SARAH-R」を走らせたチーム「ss☆μ銀座メンタルクリニック」のメンバー。開催当初から20年の参戦歴があり、冬季や一時期出張開催されていたマレーシアのセパンサーキットでは総合優勝したことがあるが、夏は初勝利という。ファステストラップがクラス5位だったことからもわかるように「淡々と同じペースでラップを刻んでいたら、周囲がだんだん後退していった」という印象とか。なお、計算上はフィニッシュ時の燃料残量が1.5~1.8リッターのはずだったが、後日計量したら500cc未満だったそうだ。「2回目のセーフティーカーが入らなかったら、おそらくガス欠リタイアだった」ということで、「勝てるときは運も味方する」と結論づけた。
-
40/40以前はフィニッシュ後に完走した全車がホームストレートに並んで表彰式が行われたが、今回は状況を鑑みてポディウムでのクラス別の暫定表彰のみだった。これは総合優勝を果たした「SARAH-R」を含むGP-5クラス。