目指すは世界シェア5割! ホンダが二輪事業の今後の展開を発表
2025.01.28 自動車ニュース本田技研工業は2025年1月28日、二輪事業の今後の取り組みに関する説明会を開催。マーケットごとの今後の展望や、環境負荷低減へ向けた取り組みなどを発表した。
グローバルでの市場規模は6000万台へ
二輪事業はホンダにとって祖業であり、グローバルでの累計生産台数は5億台が視野に入っているという。世界各地で事業を展開している現在では、小型のコミューターからレジャー等に使われる大型モデル、電動車まで幅広い商品をラインナップ。23の国と地域、37の生産拠点で年間2000万台を超える生産能力を持ち、3万店以上の販売店を通じて顧客に製品を届けている。
2024年度の販売台数は、世界シェア約4割となる2020万台の見通しで、このうちの約85%(1717万台)をインド、インドネシア、タイ、ベトナムなどのアジア地域が占めるという(日本、欧州、米国は6%の120万台)。また2024年暦年の販売台数では、37の国と地域で過去最高を記録したとしている。
いっぽう、今後の二輪車の需要については、最大市場であるインドを含めた南西アジア、インドネシア、フィリピン、およびブラジルをはじめとする中南米などを中心に、人口増や所得向上を背景にさらなる伸長が見込まれるという。それに伴い市場も拡大し、現状の5000万台規模から、2030年には電動車を含めて6000万台規模に成長する見通しとされている。
ホンダではこの需要拡大・市場拡大に確実に対応し、長期的には電動二輪車も含めて世界シェア5割を目指して取り組みを加速していくとしている。
需要拡大の見込めるグローバルサウスでの成長を目指す
マーケットごとに現状を見ていくと、二輪車の最大市場であるインドでは、最量販スクーターの「アクティバ」をはじめ、若者向けの「ディオ」、ライトモーターサイクル「シャイン」「SP」など、コミューターモデルを中心に商品ラインナップを拡充。販売ネットワークやサービスの充実なども相まって、シェアNo.1に手が届くところまで着実に販売台数を伸ばしているという。
今後はさらなる拡販に向け、生産工場の自動化や現地サプライヤーの積極的な開拓・活用などを推進。加えて、インドで生産される商品力、競争力の高い商品を、利用者のニーズが近い中南米へ輸出するなど、グローバルで効率的な商品展開を行い、さらなる事業拡大を図っていくとしている。
またアセアン各国や、パキスタン、バングラデシュ、ブラジルでも需要の拡大を見込んでおり、グローバルでの商品力、販売・サービス、調達・生産力の強さを最大活用し、事業の盤石化を進めていくという。
いっぽう、趣味として楽しめる大型車の需要が高い欧州では、「CB」「CBR」「アフリカツイン」「レブル」シリーズといった、各商品の魅力向上に取り組んできたほか、「ホーネット」「トランザルプ」といった、欧州で歴史のあるブランドを復活。さらにデュアルクラッチトランスミッションや「ホンダE-クラッチ」といった技術の導入など、「操る楽しさ」を求めるライダーの嗜好(しこう)に応える商品ラインナップや技術を拡充してきた。その結果、欧州主要5カ国(イタリア、ドイツ、フランス、スペイン、英国)では、2024年暦年でシェアNo.1を達成。また、これらの大型モデルは多品種・少量生産となるが、プラットフォームの共通化を進め、開発・調達、生産効率の向上も図っているという。今後は、さらに魅力的な商品の提供に向けて、二輪車として世界で初めて電動過給機を搭載したV型3気筒エンジンの開発を進めていくとしている。
ホンダではこうした取り組みもあり、2018年度では大半がアジアに偏っていた二輪事業の収益は、2023年度には欧州を含めた先進国、南米など、グローバルでバランスよく獲得できるようになり、収益額の増大はもちろん、事業体質の向上にも大きく貢献しているという。
インドに電動二輪車の新工場を開設
いっぽう環境負荷低減の取り組みに関しては、ホンダでは2040年にすべての二輪製品でカーボンニュートラルを実現することを目指しており、ICE(内燃機関)の進化とともに製品の電動化にも取り組んでいるという。
電動二輪車の普及へ向けた取り組みは、以下のとおり。
【商品ラインナップの拡充】
2030年の電動二輪車のグローバル販売台数目標を400万台とし、同年までに30機種の電動モデル投入を目指す。
この目標達成へ向け、ホンダでは2024年を電動二輪車のグローバル展開元年と位置づけ、市場への参入を本格化してきた。同年10月には、インドネシアで交換式バッテリー「ホンダ・モバイルパワーパックe:」を用いる「CUV e:」と、固定式バッテリーを搭載した「アイコンe:」の、2つの電動グローバルモデルを発表。前者は欧州・日本を含む20カ国での販売を予定している。また11月には、インドでもモバイルパワーパックe:を搭載した「アクティバe:」、固定式バッテリーの「QC1」をインド専用モデルとして発表。2030年までの目標となる30機種中、13機種を投入し、計画を着実に進めているとのことだ。
また「EICMA(ミラノモーターサーイクルショー)2024」では、ホンダ初の電動スポーツモデルを示唆する「EVファンコンセプト」、近未来の都市型モビリティーを具現した「EVアーバンコンセプト」を公開。多様化するニーズに応えるバリエーションの展開により、電動二輪車においてもリーディングカンパニーを目指していくという。
【充電・利用環境の整備】
日本、インドネシア、タイに続き、インドでも交換式バッテリーを搭載する電動二輪車の普及促進に向け、現地法人Honda Power Pack Energy India Private Limitedによるバッテリーシェアリングサービス事業を展開。アクティバe:の発売に合わせて、ベンガルール、デリー、ムンバイの3都市で、街なかでバッテリー交換ができるシェアリングサービス「Honda e:Swap(ホンダ イースワップ)」を開始する。
また、インド全土で6000店舗という業界最大の販売ネットワークを活用し、アフターサービス、メンテナンスを強化するほか、このネットワークを生かして充電ネットワークも拡充。今後順次投入していく固定式バッテリー搭載車両の、電欠に対する不安を解消していく。これらの取り組みにより、インドの電動二輪車マーケットにおいても、シェアNo.1の獲得を目指すとしている。
【保有コストの低減】
電動二輪車を3年間保有した際にかかる総費用が、ICE車と同等となる価格帯での販売を目指し、2028年にインドで電動二輪車専用工場を稼働させる。多くのモデルでモジュールを共通化し、高効率に多彩なモデルを生産。また主要部品であるバッテリーについても、二輪車の特性にあった仕様の構築、安定調達に向けて、バッテリーメーカーと協働して準備を進めていく。
【バッテリーの利活用・リソースサーキュレーション】
バッテリーの二次活用やリサイクルなどの取り組みも推進する。インドではすでに、分散型電源・グリッド事業を展開するOMCパワー社と協業し、使用済みのモバイルパワーパックe:を電力不安定地域や非電化地区での給電装置として活用。個人商店や学校での給電に役立てる取り組みを開始している。最終的には、貴金属などの素材のリサイクルを含めた、循環型バリューチェーンの構築に取り組んでいく。
企業活動における環境負荷低減も推進
これらの施策による電動車の普及に加え、ホンダでは二輪車ならではの幅広いニーズや使用環境に対応しながらカーボンニュートラルを実現するため、ICE車の環境負荷低減にも継続的に取り組んでいくとしている。燃費改善によるCO2削減に加え、エタノールなどの混合燃料に対応するモデルとして、ブラジルで導入実績のあるフレックスフューエルモデルの適用地域を拡大。インドでは他社に先駆けてフレックスフューエル対応の「CB300F」を投入するなど、地域のエネルギー事情に合わせた商品展開を図るとしている。
さらに企業活動における環境負荷低減にも取り組んでおり、熊本製作所では太陽光発電システムおよびリチウムイオン蓄電池の導入により、2025年3月期で9.3MWの自家発電能力と20MWhの蓄電容量を実現。ブラジルのマナウス工場では1000ha規模の森林保存区を保持し、森林のCO2吸収効果によるカーボンニュートラルへの貢献に取り組んでいる。
さらに、環境に優しいバイオエンジニアリングプラスチックの適用拡大や、四輪車のバンパーリサイクル材の二輪車への適用など、環境負荷の低い、持続可能な資源の活用も推進。環境負荷ゼロの循環型社会を目指したコンセプト「Triple Action to ZERO」の方針のもと、さまざまな取り組みを進めていくとしている。
(webCG)
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