メルセデスの意地を見た! 新型「CLA」で注目したい自動車のテクノロジー
2026.08.10 デイリーコラム中国市場は意識している
メルセデス・ベンツ日本は2026年7月9日にセダンタイプの「CLA」とワゴンタイプの「CLAシューティングブレーク」を発売し、同年7月29日に「CLA with EQテクノロジー」と「CLAシューティングブレークwith EQテクノロジー」を国内で披露した。前者は新開発の1.5リッター直列4気筒エンジン(M252型)と、48V駆動のモーターを統合した新開発の8段DCTを搭載。後者は電気自動車(BEV)である。
エンジン搭載モデルもBEVも「MMA(Mercedes-Benz Modular Architecture)」と呼ぶ新世代プラットフォームを適用。また、自社開発したオペレーティングシステムの「MB.OS」と「第4世代MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザーエクスペリエンス)」を搭載している点で共通している。
メルセデス・ベンツ日本はBEV版CLAの発表に合わせ、「セーフティー」「ドライブトレイン」「MB.OS」の3つの領域について、本国から担当技術者を招いて「新型CLAに関する技術説明会」を開いた。初モノづくしなので気合いが入っているのだろう。
MB.OSのパートでは、それが提供する世界観を示すイメージ動画が提示された。映像に映し出された文字から、中国で生活する人々の琴線に触れるような内容となっていることが伝わってきた。プレスリリースによればCLAのインテリアは「ミニマルで先進的な空間」とのことだが、使いやすいかどうかは別にして、「ミニマル」は物理スイッチの数を最小限に留めた操作系を指すものと思われ、「先進的」はダッシュボード全面をディスプレイにした「MBUXスーパースクリーン」を指すと思われる。
「インテリアは『日本庭園』に着想を得た、本質的なものだけを残すというデザイン思想」との記述もあるが、小堀遠州作の庭園に着想を得たというよりも、新宿大ガード側から望む歌舞伎町方面のギラギラな夜景からインスピレーションを得た、と聞いたほうがしっくりくる。車内でカラオケができることをウリにはしていないものの、国内外の自動車メーカー関係者から「中国のユーザーが好む」と聞く要素を取り入れたインテリアという印象だ(個人的には嫌いではない)。
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BEVを軸にした基本構造
MB.OSにおける特徴のひとつは、「MBUXバーチャルアシスタント」を備えることだ。これは対話型AIで、スクリーンに常時表示されるアバター(3種類から選べる)に向かって話しかけると、対話形式で知りたいこと(最新ニュースなど)や、やりたいこと(目的地の設定など)を提案してくれる。
対話型AIは2026年6月11日に改良型「Sクラス」が発表された際に、「高価格帯のモデルから順次実装されていくことになる」と予測したが、まさかこんなに早く、それもメルセデス・ベンツのラインナップのなかでは普及価格帯に位置するモデルに導入されるとは思っていなかった。これはちょっと驚き。対話型AIは意外に早く、当たり前の装備になっていくのかもしれない。
「セーフティー」のパートでは、側面衝突の際、いかにAピラーからCピラーにかけてのサイドパネルのエッジ部分の変形を抑えるかについて説明があった。CLAはパノラミックルーフを採用しているのでルーフにセンターブレース(補強部品)を配することができず強度を確保するのが難しいとの説明だった。
これ、“BEVあるある”である。パノラミックルーフは「上方視界を大きく確保することで、室内にいっそうの開放感と明るさをもたらす」というメーカー側の説明は半ば方便で、ヘッドルームを確保するのが真のねらいである。低ハイト化が進んでいるとはいえ、床下にバッテリーを搭載する都合上、床は高くなり、そのぶんヘッドルームはきつくなる。内張りのある固定ルーフではなく、ガラスルーフにしてシェードをなくせば、内張りのぶんだけ室内高をかせぐことができる。だからBEVはこぞってシェードなしのガラスルーフを採用するのだ。
では側面衝突時の安全性はどう確保するのか。技術者の説明によれば、Bピラーと、AピラーからCピラーにかけてのサイドパネルはホットスタンプの超高張力鋼板(骨格展示の写真で紫色に着色された部分)を採用。Bピラーで受けた側面衝突時のエネルギーはルーフで左右に分かれ、リア側ではリアドアのパーティングラインに沿って配される高張力鋼板(同赤色部分)に伝わる。
赤色の鋼板にはビードと呼ばれるくぼみが短い間隔で配されているが、力が加わった際はこのくぼみをきっかけにして座屈し、エネルギーを効果的に吸収する仕組み。このように衝突の際の変形モードをコントロールすることで、AピラーからCピラーにかけては変形させず、乗員の頭部を守る考えである。説明をうかがい、なるほどと合点がいった次第だ。
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高効率の飽くなき追求
車両が発生する走行抵抗のうち、空気抵抗は車速の上昇にともなって比率が高まっていく。平均車速が29km/hのCLTC(中国の試験モード)では全走行抵抗に占める空気抵抗の割合は23%、平均車速が46km/hのWLTPでは42%、平均車速が97km/hのメルセデス・ベンツ独自の高速モードでは57%に達する。
限られた電気エネルギーを効率よく使って電費を向上させるためには、空気抵抗をいかに減らすかが重要になる。BEVがこぞって格納式(ポップアップ式)ドアハンドルを採用するのは、空気抵抗低減の観点からだ。しかし中国では事故の衝撃でシステムがシャットダウンしてしまい、ドアハンドルが埋まったまま出てこないトラブルが発生。車両火災が発生した際に中にいる乗員を救出できない事故が相次いだという。
このような悲惨な事故を受け、中国では2027年1月以降に型式指定を受ける新型車から、電子制御のみで作動する格納式ドアハンドル車の販売が禁止される。CLAの格納式ドアハンドルはメカニカルなケーブルでもつながっているので、「システムがダウンした場合でも、内側からも、外側からもドアが開くようになっている」と、黄色いケーブルを示しながら技術者は説明した。中国での動きを受け、あえて強調したものと筆者は受け止めた。格納式ドアハンドルでも大丈夫ですよと。
「ドライブトレイン」のパートでは、リアに搭載するEDU(エレクトリック・ドライブ・ユニット)に「2段トランスミッションを採用した」点に意識が向いた。モーターはエンジンに比べれば効率の高い領域が広いのでエンジンのように多段トランスミッションを組み合わせることなく、変速なしのシングルギアで成立させるケースが圧倒的に多い。
例外は「ポルシェ・タイカン」で、CLAと同様にリアモーターと組み合わせている。タイカンの場合は、「発進加速性能と260km/hの最高速を両立させるため」との説明だった。CLAも同様。特に最高速(210km/hに設定)と高速域での効率を重視し、2段トランスミッションの採用に踏み切ったとのことである。ちなみに、CLAの2段トランスミッションはタイカンと同様、プラネタリーギアを用いている。ステップATの変速と同じ原理だ。
徹底した空気抵抗低減への取り組みといい、2段トランスミッションの採用といい、CLAは高速域の効率(電費)を重視した設計となっていることがうかがえる。ただギラギラしたインテリアで人の気を引こうとしているだけのクルマではない(ように感じられて、とても気になっている)。
(文=世良耕太<Kota Sera>/写真=webCG/編集=関 顕也)
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世良 耕太
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