100万円台で購入できるカーマニア納得の“素うどん的名作ハッチバック”を探す
2026.09.17 デイリーコラム基本性能の純粋な手応えにこだわる
いわゆる美食の世界には、一周回って最後にたどり着く境地というものがあるらしい。高級食材をふんだんに使った豪華絢爛な料理を食べ飽きた人が、「丁寧に引いた一番出汁でいただく、ネギと生姜だけの素うどん」に傾倒したりするわけだ。
筆者のようなド庶民からすると、それはそれでスノッブな感じがして少々イヤなのだが、「うまい素うどんこそが沁みる」という感覚はよく分かる。わざわざ自分で出汁を引くまではしないものの、街道沿いのうどん店でいただく数百円の簡素な(だがおいしい)うどんこそが、SNS受けを狙った見栄えだけの料理以上に、私を泣かせるのである。
そして「私を泣かせるクルマ」も、根本的に考えれば「素うどん的なクルマ」である場合が多いように思う。
過剰で巨大な液晶ディスプレイや、使うかどうかも怪しい無数の運転支援システムではなく、「走る・曲がる・止まる」に関する純粋な手応えにこそ、私は泣くのだ。いや実際のところ泣くまではいかないのだが、感動はするのである。
もちろんこのあたりの感覚は人それぞれだろうが、筆者と同様の、またはある程度近い感覚をお持ちの各位に向け、総額100万円台の予算で検討可能な「素うどん的名作中古車」をハッチバックモデルに絞って3車種ご紹介したい。
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どこを切り取っても痛快
ルノー・トゥインゴ(3代目/MT車推奨)
まず一杯目……じゃなくて1台目は、フランス車ながらかけうどん的な味わいの3代目「ルノー・トゥインゴ」だ。
ダイムラーとの共同開発によって生まれた3代目トゥインゴのトピックは、RRレイアウトを採用した点にある──といわれる場合が多い。フロントにエンジンがないことの恩恵により、確かに前輪の切れ角は驚異的。最小回転半径4.3mという無類の取り回し性を誇っている。
だがカーガイたちを唸らせるのは、トゥインゴの小回り性能だけではない。ブレーキングからステアリングを切り込んだ瞬間、フロントが軽やかにスッと内側を向き、リアタイヤが路面をしっかり蹴り出す独特のトラクション感を生む──といった感触にも、われわれは感動するのだ。
サスペンションのストロークをたっぷり使いながら、荒れ気味の路面や段差をいなしていくトゥインゴの挙動は、まさにルノーが得意とする「日常におけるよき足」そのもの。パワーこそないが、約1tの軽量な車体を0.9リッター直3ターボエンジンの乾いたビートとともに走らせる感覚は、どこを切り取っても痛快だ。シンプルを極めたインテリアとも相まって、独自の味わい深さを堪能できるだろう。
MT車の中古車価格は総額150万円前後が目安で、EDC(エフィシェント・デュアルクラッチ・トランスミッション)でもOKなら、総額90万円前後からイケる。
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クルマの“基準点”たる存在
フォルクスワーゲン・ゴルフ
(7代目/「TSIトレンドライン」または「TSIコンフォートライン」推奨)
続いては現代ハッチバックの大定番といえる7代目「ゴルフ」の、上級グレードではなくベースグレードおよび中間グレードだ。
1.4リッター直4ターボとなる「TSIハイライン」や、2リッター直4ターボの「GTI」などの上級グレードはリアサスペンションが4リンク式であるのに対し、1.2リッター直4ターボを搭載する「TSIトレンドライン」および「TSIコンフォートライン」は、シンプルなトレーリングアーム式を採用している。
「単なるコストダウンでしょ」と思うかもしれないが、このリアサスを侮ってはいけない。フロントに搭載される1.2リッターエンジンの軽さとも相まって、回頭時におけるノーズの入りはきわめて素直。コーナリングと直進安定性の“純度”とでも表現すべき部分は、ときに上位モデルを凌駕(りょうが)するほどだ。
大パワーや電子デバイスに頼らずとも、「車体そのものの出来のよさ」だけでこれほど濃密な安心感と操縦性を生み出せるのかと、乗るたびに襟を正したくなる私にとっての“基準点”である。中古車価格は、マイナーチェンジを受けた俗に「ゴルフ7.5」と呼ばれる2017年5月以降のモデルであっても、総額150万円程度からだ。
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狙いは“じゃないほう”
スズキ・スイフト
(3代目/「スイフトスポーツ」ではないやつ)
クルマ好きの間では、とかく「スイスポ(スイフトスポーツ)」ばかりが脚光を浴びている先代の「スズキ・スイフト」。だが“素うどん”としてのうまさに着眼するなら、1.2リッター直4エンジンを搭載する「スイスポじゃないほう」も捨てがたい。
その最大の武器は、スズキの(当時の)新型プラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」がもたらした驚異の軽量性だ。骨格のスムーズな結合と超高張力鋼板の最適配置により、2016年12月に発表された3代目スイフト(スズキは2004年発表のZC11S系を初代としている)の車両重量はわずか900kg前後。グレードによっては800kg台後半だったりもする。現代の安全基準を十分に満たしながら、1tを下回るウェイトに抑え込んでいるわけだ。
軽いというのはそれだけで、クルマのあらゆる動的質感において基本的には正義となる。特に欧州仕様のダンパーが奢られた「RS」系グレードを走らせてみると、まるで自分の手足のように車体が向きを変える軽快な挙動に、誰もが驚くはずだ。
RS系の中古車は流通台数が少ないのがネックではあるが、それでも総額130万円前後の予算感にて、十分に好条件な物件を見つけることができるだろう。
(文=玉川ニコ/写真=メルセデス・ベンツ、ルノー、フォルクスワーゲン、スズキ/編集=櫻井健一/※一部画像は生成AIによりつくられたイメージです)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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