トヨタ SAIシリーズ(FF/CVT)【試乗速報】
「プログレ」を思い出す 2009.12.14 試乗記 トヨタ SAI G(FF/CVT)/S “ASパッケージ”(FF/CVT)……402万3650円/403万7950円
トヨタブランド、第2のハイブリッド専用車「SAI」は、“プリウスの上”に位置するモデルとして、大いに気になる存在だ。さっそくその第一印象をお伝えしよう。
国内のユーザー(だけ)を意識
トヨタというブランドにはどんなクルマでも揃っていそうな気がするが、意外なことに「SAI」は、けっこう初モノだったりする。全長4.6m級の4ドアセダンというのは、まあ普通にある。それを高級に仕立てて「和風」の雰囲気を込めるのもトヨタの特技だ。そしてハイブリッドは、もはやトヨタの基幹技術の一つとして、最近みるみる増殖している。でも、そんな3要素すべてを兼ね備えたクルマは、実はSAIが初めてなのだ。
全体のフォルムを眺めた第一印象は「大きめのプリウス」。その点では少し前に登場した「レクサスHS250h」と似ているが(それもそのはず、プラットフォームの大半を共用する姉妹車なのだから)、人をギョッとさせる鉄仮面スタイルではなく、フロントもリアも従来から慣れ親しんだ上質のセダン感覚でまとめられているところに、まず国内のユーザーを意識した狙いが見える。
乗ってみた感じも、「もっとよく走るプリウス」だ。初代プリウスから12年にわたって熟成されてきたTHS(トヨタ ハイブリッド システムで、今は第2世代のTHSII)だけに、いろいろな点で余裕も大きい。現行プリウスは1.8リッターエンジン+モーターで、実質2.4リッター級に匹敵する走りっぷり。それに対してSAIはエンジンを2.4リッター(150ps) に拡大強化し、143psのモーターとの組み合わせだから、もっとよく走って当たり前。
深くアクセルを踏むと、体感としては普通の3リッター並みにグッと行ける。ただし、全開ではけっして誉めたいほど静かではない。それより半開+α程度でモーターにも仕事をさせながらスイ〜ッと加速する(けっこうパンチ効きます)のが、独特の次世代感覚を味わうコツだ。
日常生活の良きパートナー
乗り心地も合格ラインを楽々と突破。ソフトな感覚の奥に逞しさも秘め、大きなうねりを乗り越える時も、基本的にフラットな姿勢を保つ。この感触は前後どちらのシートでも変わらない。これはセダンとして大切なポイントだ。
ただし、荒れた舗装など路面の凹凸に対しては、グレードごとに装着されるタイヤによって少し差が出る。これは一長一短で、基本車種「S」用の205/60R16は温和なタッチ、それに対して上級グレード「G」用の215/45R18は、コーナーで切り込んだ瞬間すぐ踏ん張り感が出るなど切れ味はいいが、段差やコブなどで一瞬ガツッと来ることがある。これはサイズだけでなく、それぞれの品種や設定速度レンジ(S用はH級、G用はW級)にもよるものだろうから、しなやかな18インチを履けたら理想的かもしれない。
室内は驚くほど広いわけではないが、心理的なくつろぎ感に満ちている。身長170cmのドライバーが楽な運転姿勢をとった後ろで、膝の前には拳骨2個ぶんの空間が残り、爪先も楽に伸ばせる。前席より着座位置がわずかに高いため、適度に囲まれながらも、閉じ込められたうっとうしさが薄い。
トランクは奥行きが浅いのが惜しいが、幅は最大1.6m以上あり、フルセットのゴルフバッグを4個積める。つまり、パーソナルユースに大きすぎず、ファミリーカーとしても不足しない、日常生活の友として、どこからどこまで適切な仕上がりのセダンというわけだ。
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小さなボディに宿る本質
そのうえで強調したいのが、インテリアに漂う高級感。「立派なセダンを買っちゃった」的な気分になれるポイントが多く、ドアの内張りなど、和服の生地を連想させたりする。こんな味付けは、欧米のブランド物はもちろん、輸出を念頭においたHS250hにもない。
そして、ここにSAIの本質も宿る。「小さい高級車」なのだ。これは近未来のトレンドを牽引するキーワード。これまでクラウンなどの高級セダンを愛用してきた人たちも、これからはダウンサイジング(コンパクト化)が求められる世相だということは理解している。でも、ただ小さいクルマに乗り換えるだけでは、なんだか格が下がるみたいで抵抗感もある。
一般的にセダンユーザーは、どちらかというと保守的な傾向があり、急激な変化を好まないからだ。そこで、サイズこそ少し小さいけれど、インテリアの仕上げや装備が高級というクルマがあれば、絶好の受け皿になる。トヨタでは、かつてプチクラウン的な「プログレ」が活躍していたが、それを時代の最先端センスで描き直したらSAIになった、と言える。
それに加えて、高級セダンのユーザーは、職場や地域社会でリーダー的な立場であることも多く、できれば環境問題に関心があることを示したい。本心では以前からプリウスにも興味津々だったかもしれない。だからハッチバックでなく、そこそこ適切なサイズで高級な仕立ての中に先進的なハイブリッド機構を盛り込んだSAIは、とても理想に近いのではないだろうか。12月7日の正式発売を待たず、見込みの5倍もの注文が殺到したのも、その価値の証明と言えるだろう。
(文=熊倉重春/写真=小林俊樹)

熊倉 重春
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