「アストンマーティン100周年記念展示」の会場から
2013.05.27 画像・写真2013年5月25日、26日、神奈川県横浜市の山下公園にて、アストンマーティンアジアパシフィック主催の「アストンマーティン100周年記念展示」が実施された。これはタイトルのとおり、アストンマーティン100年の変遷を歴代モデルで表現したもので、「アストンマーティン・オーナーズクラブ・ジャパン」の協力により、日本にある最古のモデルという1931年「インターナショナル 1.5リッター ルマン2シーター」に始まる15台のクラシックと、現行モデル5台の計20台が展示された。希少な歴代アストンを、これだけまとめて目にする機会はめったにあるものではなく、これを目当てに訪れたクルマ好きはもちろんのこと、たまたま居合わせた観光客も足を止めて熱心に見入っていた。会場からクラシックモデルを中心に、写真で紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

年代順に並べられた15台のクラシック・アストン。
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年代順に並べられた15台のクラシック・アストン。
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会場奥の一段高くなったステージには、日本にある最古のアストンという1931年「インターナショナル 1.5リッター ルマン2シーター」と最新の「ヴァンキッシュ」の2台が。前者は31年シーズンのワークスマシンと同じスペックのカスタマー仕様で、わずか6台が製作され、現存は2台のみという超希少車である。
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「インターナショナル 1.5リッター ルマン2シーター」のインパネ。ドライサンプの1.5リッター直4 SOHCエンジンは70psを発生したといわれるが、イエーガー製のタコメーターは4200rpmからイエローゾーン、4700rpmからレッドゾーン。
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1933年「ルマン 1.5リッター 2/4シーター ショートシャシー」。先の31年型(1stシリーズ)に対して、こちらは2ndシリーズ。新車当時、最高速は84.9mph(136.6km/h)を記録したという。
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1938年「2リッター 15/98 ショートシャシー」。直4 SOHCエンジンは2リッターに拡大され、98psを発生。31年や33年モデルに比べると、ラジエターグリルがより傾斜してモダンになっているのがわかる。前後フェンダーも、前2車のようなスポーティーなサイクルフェンダーではない。
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戦後1947年に実業家であるデイヴィド・ブラウンの傘下となってからデビューした「DB」(David Brownの頭文字)シリーズ。これは1954年「DB2/4 Mk1 ドロップヘッドクーペ」。2座のサルーン(アストンはクーペをこう呼ぶ)またはドロップヘッドクーペ(コンバーチブル)だったDB2を2+2にしたモデルで、50~55年に作られた。2.9リッター直6 DOHCエンジンを積む。
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前後バンパーを外すなどコンペティション風に仕立てられた1958年「DB2/4 Mk3 サルーン」。今日まで受け継がれているフロントグリルのオープニング形状は、アストンのレーシングマシンから引用したものだ。
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「DB2/4 Mk3 サルーン」の後ろ姿。テールゲート付きの、今でいう3ドアハッチバッククーペで、後席バックレストを畳めば2人での旅行には十分な荷物が積めるグランドツアラーだった。
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1962年「DB4 Mk4 ドロップヘッドクーペ」。58年に登場したDB4は、鋼板製のプラットフォームに小径の鋼管による骨格を組み、それにアルミ外皮をかぶせた、いわゆるスーパーレッジェラ工法を初採用したアストン。エンジンは3.7リッター直6 DOHC。
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「DB4 Mk4 ドロップヘッドクーペ」のインパネ。姿は優雅だが、ステアリングはノンパワーだから、かなりの手応えがあるに違いない。「DB4 Mk4 ドロップヘッドクーペ」のインパネ。姿は優雅だが、ステアリングはノンパワーだから、かなりの手応えがあるに違いない。「DB4 Mk4 ドロップヘッドクーペ」のインパネ。姿は優雅だが、ステアリングはノンパワーだから、かなりの手応えがあるに違いない。
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1965年「DB5 ヴァンテージ サルーン」。映画『007ゴールドフィンガー』でボンドカーに起用されて大活躍、世界にアストンの名を広めたモデルで、63年から65年まで作られた。直6 DOHCエンジンは4リッターに拡大され、ヴァンテージ仕様では314psを発生するという。
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1970年「DB6 Mk2 サルーン」。「DB5」のホイールベース/全長を延長し、ドアから後ろをリスタイルしたDB6。65年に登場、69年にMk2に発展し70年まで作られた。この個体は当時の代理店だったコーンズにより正規輸入され、なおかつ新車からのワンオーナー車でフルオリジナルという、垂涎(すいぜん)ものの一台。保安基準に適合させるために日本で装着されたフェンダーミラーとサイドマーカーランプが、ディーラー車の証しである。
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前方からの眺めはバンパーを除いては同じ「DB5」と「DB6」だが、後ろから見るとこんなに違う。手前のDB5の、50年代生まれの「DB4」以来のクラシックな姿に対し、奥のDB6は空力を意識したカムテール(コーダトロンカ)で、リフトを抑えるため後端が反り返っている。
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1986年「V8サルーン Sr4」。「DBS」のボディーにV8 DOHC 5.3リッターを積んだ「DBS V8」として70年に登場。72年にデイヴィド・ブラウンが経営権を手放した直後にマイナーチェンジして「V8」に改称、最終的にSr5まで発展し89年まで作られた。
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「V8ヴァンテージ ヴォランテ」。1978年に「DB6ヴォランテ」以来のコンバーチブルとして登場したV8ヴォランテ。これは86年に登場した高性能版のヴァンテージ。ブリスターフェンダー、フロントスポイラー、サイドステップなどで武装している。
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1989年「ラゴンダ Sr4」。76年に衝撃的なデビューを飾った、アストン初の本格的な量産4ドアサルーン。87年に登場した、最終型となるSr4はボディーのエッジが若干丸められ、ヘッドライトをポップアップ式から固定式に改めるなどのマイナーチェンジが施された。初期型よりはインパクトが薄まったとはいうものの、この存在感。
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真横から見た「ラゴンダ」。ボディーサイズは全長5363mm、全幅1800mm、全高1320mm、ホイールベース2911mm。
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1986年「V8 ヴァンテージ ザガート」。V8のシャシーにザガートが特製ボディーを架装したモデルで、クーペが50台、コンバーチブルが25台作られたという。ボンネットのバルジは、5.3リッターV8に装着された4基のダブルチョーク・ウェバーキャブレターをクリアするためのもの。
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「V8 ヴァンテージ ザガート」のリアビュー。「オーテック・ザガート・ステルビオ」にも通じる、80年代のザガート特有のデザインテイストである。
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1991年「ヴィラージュ」。20年近い長命を保った「V8」シリーズに代わって、89年にデビュー。V8系から受け継いだシャシーに4バルブ化された5.3リッターV8 DOHCエンジンを搭載、モダンではあるが、あまり個性的とはいえないボディーを架装している。
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2003年「V12ヴァンキッシュ」。フォード傘下時代の2001年にデビューした、6リッターV12 DOHCエンジンを積むフラッグシップ。2002年公開の007シリーズの20作目『ダイ・アナザー・デイ』に、久々にボンドカーとして登場した。
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2003年「DB7 ヴァンテージ ザガート」。DB7はフォード傘下にあってジャガーのコンポーネンツを流用して開発された量産モデルだが、DB7 ヴァンテージ ザガートは往年の「DB4 GTザガート」の現代版ともいうべきスペシャル。切り詰めたDB7のシャシーに「ヴァンキッシュ」と同じ6リッターV12 DOHCエンジンを搭載、生産台数は99台という。
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後ろから見下ろした「DB7 ヴァンテージ ザガート」。ザガートのトレードマークともいえるダブルバブルのルーフに合わせて、リアウィンドウも複雑な形状をしていることがよくわかる。
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来場者にあいさつする、アストンマーティン・ラゴンダ社チーフコマーシャルオフィサーのマイケル・バンダー・サンデ氏。「100周年を迎えたこの年に、日本のオーナーズクラブのみなさんの協力により、過去のすばらしいモデルがそろったこの場にいることができて、とてもうれしい。みなさんも美しいクルマは眺めて愛(め)でるだけではなく、ぜひ運転して楽しんでいただきたい」などと語った。
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最前列には現行モデル4台が並んだ。左から「V8ヴァンキッシュ」、「DB9」、「ラピードS」そして「シグネット」。