レアな日本車もいっぱい! 「バンコクモーターショー2017」リポート
2017.04.11 画像・写真2017年3月28日から4月9日にかけてタイで開催された、第38回バンコク国際モーターショー。そこには“日本では見られない日本車”がずらりと並び、この国ならではの展示や商談が行われていた! そんな興味深い会場の様子を、写真とともに紹介する。(文と写真=工藤貴宏)
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1/35サワディカー。桜が満開の東京から飛行機で約6時間。4600kmほど離れたタイの首都バンコクの郊外で行われた、第38回バンコク国際モーターショーを取材しました。このショーのここ数年の来場者は、東京モーターショー(2015年実績:81万2500人)を大きくしのぐ約170万人。タイの人々は、クルマに対する関心がとても高いのです。
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2/35会期は、まず3月27日がVIPデー(販売会社が優良顧客を招待する日)で、翌28日が正式開幕となるプレスデー。29日から4月9日までが一般公開日です。正式開幕前に優良顧客が招待されるモーターショーは世界を見渡してもここだけじゃないでしょうか? タイはお金持ちが優遇される社会なのです。
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3/35モーターショーにつきもの(?)の美女たち。その点、妥協しないのがタイ流です。「モーターショーを彩る女性の質と量はほかのどのショーにも負けていない」と、かつてイベントの代表者は地元誌のインタビューで語っていました。そうきたか。
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4/35ホンダは、日本ではまだ姿を見せていない新型「CR-V」を発表。タイは、北米に続いて世界で2番目に早い販売地域となりました。タイは日本同様に左側通行で右ハンドル。つまり日本仕様に近い車両です。それなのに日本よりも先にお披露目なんて……(涙)。新型CR-Vのタイ仕様は現地生産で、エンジンは自然吸気の2.4リッターガソリンと1.6リッターディーゼルターボ。3列シートです。現地価格は日本円で約450万円からと、かなりの高級車。
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5/35新型「ホンダCR-V」のインテリア。9段ATを搭載するディーゼル車のシフトセレクターは「レジェンド」や「NSX」のようなボタン式。2.4リッターのガソリン車はCVTで、普通のシフトレバーが組み合わされます。気がつけば、かつてはMT比率が高かったタイでも2ペダル車が増えてきました。
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6/35タイのユーザーはエアロパーツをはじめとするドレスアップが大好き。というわけで、ホンダ直系のカスタマイズブランド「Modulo(モデューロ)」も大人気。タイでは日本以上に知名度が高いのです。発売直後の新型「CR-V」(写真)を含め、すべての車種にエアロパーツが設定されているのだから驚き。
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7/35日本でもこの夏から販売される予定の新型「ホンダ・シビック」。タイではひと足早く、1年前からセダンの販売が始まっていて、この春からはハッチバックの販売がスタートしました。実は、タイでは新型シビックの人気が非常に高く、バンコクの街では驚くほどたくさん走っています。どうやらデザインがタイの人たちの好みに合っているようですね。新型シビックは、ホンダの世界最新の生産拠点であるプラチンブリ工場で作られています。ここは、量産車としては世界初となる「流動型セル生産方式」を採用したラインを備えるのが特徴です。
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8/35このクルマは何でしょう? 「ホンダBR-V」という3列シーターも選べるアジア向けコンパクトSUV。全長は約4.5m。1.5リッター自然吸気エンジンを積んでいて、価格は約240万円からです。タイは税金(内税となっている“ぜいたく税”)などの関係で日本よりもクルマの価格が高く表示されるので、それを差し引いて日本での価格設定を想定すると、200万円弱といったところでしょうか。
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9/35「ホンダ・モビリオ」。といっても、かつて日本で売っていたコンパクトミニバンとは無関係のアジア向けモデルです。ただ、コンパクトな3列シート車という意味では、日本で売っていたモビリオと共通ですね。よーく見ると、ドアの形状は小型SUVの「BR-V」と共通。つまり両車はコンポーネンツを一部共有しているというわけです。
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10/35さてここからはトヨタブースの様子を。アジア専用車の「VIOS(ヴィオス)」は、いうなれば「ヴィッツ」のセダン版。かつては日本でも「ベルタ」として販売されていたクルマの後継車ですね。タイ市場において、トヨタの乗用車の中では最も売れている車種です。
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11/35こちらは「トヨタ・カローラ」。「カローラ アルティス」という名前で、日本で売っている「カローラ アクシオ」とはプラットフォームからして別物です。サイズがアクシオよりもひとまわり大きい、日本以外の各地で販売されている通称“グローバルカローラ”ですね。北米向けと違ってアジア仕様は顔つきがラグジュアリーな雰囲気。メカニズム的には「オーリス」のセダン版といえます。
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12/35スポーティー大好き、エアロ大好き。そんなお国柄のタイだけに、「カムリ」だってエアロパーツでドレスアップ。日本ではちょっと考えられない仕様ですが、しっかりカタログモデルです。
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13/35こんな軽快な見た目の「カムリ」もあります。こうして世界戦略車をベースにローカライズされたデザインを見ていると、その国のユーザーの好みが見えてきますね。
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14/35これは新興国向けに開発された「トヨタ・イノーバ」というミニバン。タイでは2016年10月にフルモデルチェンジして「クリスタ」というサブネームが追加されました。日本のミニバンとは大きく異なり、「ハイラックス」をはじめとするトラックと共通のラダーフレームが用いられており、頑丈なのが特徴。すなわち悪路に強いのです。ただし、床が高いため乗降性はイマイチ。インドネシアからの輸入車です。
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15/35ちょっと一休み。モデルさんの服装が、例年に比べて色使いや露出度の点で華やかさに欠けるのは、タイ国王が昨年亡くなったため喪に服しているからなのだとか。とはいえ、会場内を歩いてみたところで、コスチューム以外に「自粛」を感じさせるようなものはありませんでした。
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16/35三菱自動車のブースは、展示車両のほとんどがピックアップトラックとSUV。ピックアップトラックはかつて日本にも輸入された「トライトン」の新型で、写真左上に見えるSUVはトライトンをベースに作られた「パジェロスポーツ」。どちらもタイでは大人気です。
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17/35創業100周年を祝う展示を行った、三菱自動車のブース。これは1917年から製造が始まった、日本初の量産乗用車とされる「三菱A型」のレプリカ。オリジナルは7人乗りですが、このレプリカはスケールダウンしていて1人乗りでした。作りはかなり精巧で、ディテールの再現も凝っていますね。レプリカといえども、さすがは自動車メーカー製。
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18/35マツダブースはやっぱり赤ですよ。しかし、今年の展示車両は新たにグレーが加わったり、白や黒もあったりで、かつてのような色彩の統一感はなくなりました。ちょっとマツダっぽくないと感じたのは筆者だけでしょうか。タイでは「デミオ」が「マツダ2」、「アクセラ」が「マツダ3」というように、北米や欧州と同じ車名が付けられています。マツダ2すなわちデミオのセダンもありますよ。
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19/35日本ではキャブオーバートラックやバスしか展開していないいすゞですが、タイではピックアップトラック&SUVのメーカーとして大きなシェアを持っています。ちなみにタイでピックアップトラックのニーズが大きいのは、税金が乗用車に比べて格段に安いから。日本でいう軽自動車感覚ですね。サイズはずいぶん違いますけれど。
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20/35こちらは「日産フロンティア」の上級仕様。ピックアップトラックを乗用車として使う人も多く、トラックにだってスポーティーなドレスアップが定番なのです。
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21/35タイにおける日産のセダンでは「ティアナ」に次ぐ2番目のポジションとなる、プレミアムセダン「シルフィ」。注目は床の「E85」の文字です。これはエタノールが85%混ざった燃料にも対応していることのアピール。タイではエタノールをブレンドした燃料がガソリンスタンドで普通に流通していて、純ガソリンよりも価格が安いから好まれるのです。
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22/35「ハイエース」はタイでもたくさん見られる日本車で、スーパーロングボディーが基本。送迎などでマイクロバス的に使われることも多いです。日本で見かける「コミューター」とは異なり、インテリアをゴージャスに仕立てた車両がとても多く、驚かされます。
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23/35この「ハイエース」は、インテリアを豪華に仕立てたタイならではの一台です。シートはすべて交換され、写真のように3列目以降はベッドになる設計。インテリアの内張りはすべて交換するという手の込んだ作りですね。こういったタイで多く見かける豪華仕様のハイエースを、一部の人たちは「タイエース」と呼ぶとか呼ばないとか。
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24/35こちらは「モーターショーアンバサダー」の皆さん。全員がバンコクの女子大生なのだそうです。見た目はもちろん、教養や知識、立ち居振る舞い、性格を含めて選ばれたのだとか。「約2週間のモーターショー開催中は毎日会場でのお役目があり、高いヒールを履いてたくさん歩くから、忍耐強くないとダメ」とは、関係者の弁。どうでもいい情報(?)を加えておくと、毎日異なるドレスが用意されているそうです。
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25/352017年3月のジュネーブモーターショーで初公開されたばかりの「マクラーレン720S」。注目はハンドル位置。東京で披露されたモデルは左ハンドルでしたが、タイではしっかり右ハンドルなのです。それ以前の話として、前回の東京モーターショーで出展のなかったマクラーレンのブースが、バンコクモーターショーには存在するということに驚かされます。うぅっ……。
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26/35ランボルギーニも出展していました。当然のように、全車右ハンドルです。そして青、オレンジ、緑と、ソリッドな原色系の車両を並べているあたりがタイらしいですね。ちなみにポルシェの展示もフロントローはソリッドな青、黄、オレンジでした。ええ、ここは明るい色が好まれるタイランドですから。
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27/35中国系メーカーでは、MGブランドを所有する上海汽車が出展。以前は英国ブランドであることを声高に主張していたのですが、最近はやめたようですね。2014年からタイの現地工場で生産していますが、同じ国内生産となると、日本車に対する価格的優位性がほとんど見いだせません。それゆえタイの人たちの間では、「どうせ買うならちょっと高くても信頼の日本車」という意識が根強く、思ったほどの販売拡大ができていないようです。街でもあまり見かけません。
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28/35バンコクモーターショーは、自動車の販売契約を行うトレードショーでもあります。会場内で1台でも多く売るために、会場限定の特別金利や値引きなどが用意されることが多いのです。このクルマも「金利0%で48回払い」をアピール。金利ゼロなら、手元に現金が無くてもちゅうちょなくローンを組める気分になってきます。
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29/35ここは、ホンダブースの裏側。一般入場時間の前なので皆さんくつろいでいますが、この写真に写っているスーツを着た人は全員、バンコク周辺の販売店から集められたセールススタッフなのです。たくさん並んだ円卓は、すべて商談用テーブル。期間中は「全メーカーあわせて数万台」という規模で新車が売れるのです(2016年実績は3万2571台)。それだけ売れれば、メーカー側だって気合が入るってものです。
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30/35ホンダの商談テーブルをのぞいてみたら……。モーターショー会場限定の特別低金利や値引き額などが車種別に書いてありました。こうして購買意欲をあおるのです。ちなみに2016年の会場での車両販売実績は、ホンダがトップで4308台。高級車の売れ行きもすさまじく、メルセデス・ベンツが1700台、ポルシェはなんと68台も!
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31/35こちらはスバルブースで入手した価格表。「XV」から「レヴォーグ」「アウトバック」「BRZ」そして写真には写っていませんが「WRX」もラインナップしています。興味深いのは価格。XVが129万8000バーツ(約420万円)なのに対し、レヴォーグは219万8000バーツ(約700万円)もします。これだけ大きな差がある理由は、XVがマレーシアでのノックダウン生産なのに対し、レヴォーグは日本からの完成車輸出で高い関税がかけられているから。日本人としては、どっちにしても、その高さに驚かずにはいられませんが。
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32/35トヨタの「アルファード」や「ヴェルファイア」は日本からの輸入による正規販売もありますが、日本円にして約1180万円~1700万円という超高級車。そんな高級車をバンコクの街中ではたくさん見かけるのですから、タイってお金持ちが多いんですね。並行輸入も盛んに行われていて、リアウィンドウに日本の排出ガス基準のステッカーを貼ったままの車両も少なくありません。これはもしかして、「日本からの輸入車に乗っている」という自慢アピールになるのでしょうか?
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33/35バイクにトゥクトゥクに三輪車。すべて電動車です。こういう車両の展示はタイらしいですね……。と思いきや、H SEM MOTORという会社は中国の会社の製品。こういうジャンルには、中国資本がどんどん入り込んでいるようです。
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34/35ここまでまったく触れませんでしたが、タイの道には二輪車が多い。モーターショーでは二輪ブースも広く、純レーサー&レーサーレプリカの展示も人気が高いです。なんだか、かつての日本みたいですね。
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35/35タイといえばマッサージ(ちょっと強引)。モーターショー会場の部品展示スペースには、マッサージ機の展示も多数。写真のマッサージ機は、クルマのシートに取り付けできるタイプですね。展示を見て歩き疲れたら、こういう場所で一休みすればいいという、来場者にやさしいモーターショーなのです。東京モーターショーにも足マッサージがあればいいと思いませんか? それではお付き合いありがとうございました。