「人とくるまのテクノロジー展 2017 横浜」の会場から
2017.05.26 画像・写真2017年5月24日~26日、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、恒例となる日本最大の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2017 横浜」が開かれた。これは自動車メーカーをはじめ、部品メーカー、材料メーカー、計測・解析機器メーカーなどが最新の自動車技術を展示する技術展で、1992年に始まり、今回で26回目となる。「社会が変わる、技術が変わる、くるまが変わる」をテーマに掲げた今回は、主催する自動車技術会が創立70周年を迎えた節目の年ということで、記念特別展示なども行われた。出展者数は過去最大規模という562社(1175小間)で、聞くところによれば、今では新規の出展希望を断らざるを得ず、広いブースを希望してもかなえられない状況という。たしかに会場のパシフィコ横浜の展示ホールは隅から隅まで展示ブースがびっしりで、コンコースにまでブースが立ち並んでいた。それに伴い来場者数も年々増えて、今や会場内の人口密度は、東京モーターショーのプレスデーと同じかそれ以上に感じられる。そんな会場から、リポーターの目に止まった展示を紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)
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1/28過去最大規模という、562社(1175小間)のブースで埋め尽くされた、会場のパシフィコ横浜。
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2/28自動車技術会創立70周年特別企画展示として、会場1階のコンコースに1950年代から1990年代までの実車9台が展示された。その中から1958年に誕生した「スバル360」(写真左。展示車両は1962年「スバル360デラックス」)と1955年「トヨペット・クラウン デラックス」(同右)。
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3/28ちょうど半世紀前の1967年に世界初の2ローター・ロータリーエンジン搭載車として発売された「マツダ・コスモスポーツ」のプロトタイプ。後ろは初代「トヨタ・カローラ」。
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4/28会場2Fコンコースには、同じく自動車技術会創立70周年特別企画展示として、エポックメイキングな技術や部品が展示された。これも50年をさかのぼる1967年に誕生した3代目「ダットサン・ブルーバード(510型)」に導入されたセミトレーリングアーム式リアサスペンション。日産としては初採用となる後輪独立懸架だった。
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5/281973年に初代「ホンダ・シビック」に搭載された、世界で初めてアメリカのマスキー法(排ガス規制法)をクリアしたCVCCエンジン。
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6/281981年に「ホンダ・アコード/ビガー」にオプション設定された「エレクトロ・ジャイロケータ」。車両に搭載したジャイロセンサーで進行方向、車速センサーで走行距離を検出する自立航法による世界初のカーナビ。CRTディスプレイに透明フィルムに印刷された地図をセットし、現在位置を確認しながら予定したルートをトレースしていくもので、ルート案内はしてくれない。長距離の場合は、左側に置かれたファイルに収められた地図の差し替えが必要だった。
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7/28コアテックの三輪スポーツEVのプロトタイプである「eFalcon」。レーシングカーコンストラクター/パーツサプライヤーである戸田レーシングとの共同開発で、シャシーはCFRP(炭素繊維強化樹脂)製、駆動はダイレクトドライブのインホイールモーターによる。性能は最高速度120km/h、航続距離180km。
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8/28「AKXY(アクシー)」と名付けられた、「自動車への安全・快適・環境への貢献」をテーマとする旭化成のコンセプトカー。快適な車内空間をつくりだす繊維やコミュニケーションシステム、環境負荷軽減に貢献する高機能樹脂など、同社が開発した素材や技術を満載した、実走可能なEV。
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9/28「TEEWAVE AC1」と名乗る、東レの新たなコンセプトカー。CFRPをはじめとする先端素材や技術の応用を提案するものだが、スタイリングは意外とクラシックだ。
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10/28テイジンは「ダイハツ・コペン」を、ハッチバッククーペに変身させていた。新たに造形されたリアクオーター以降はCFRP製で、内装にも同社が開発した新素材やアイデアがふんだんに使われていた。
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11/28スバルのブースに展示されていた、現行「インプレッサ」から採用された「スバルグローバルプラットフォーム」。
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12/28トヨタブースに展示されていた、「レクサスLC500h」に使われているマルチステージハイブリッドシステムの、ジェネレーター+モーター+システムステージ変速機構。
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13/28ダイカスト部品のトップメーカーであるリョービの展示。世界中の自動車メーカーに供給しているダイカスト部品で構成されている。
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14/28HKSが展示していた、同社製の電動スーパーチャージャーを装着した「アウディTT」用2.0 TFSIエンジン。ターボラグと燃費の改善を目的に、インタークーラーとスロットルの間に電動スーパーチャージャーを設置。低回転域ではスーパーチャージャー、中~高回転域はターボで過給する。
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15/28ヘッドアップディスプレイ(HUD)のトップメーカーである日本精機は、1999年「シボレー・コルベット」から2015年「アウディQ7」用に至るHUDの進化の歴史を展示(来場者は反対側から眺める)。開発中という世界初の3D HUDの体験コーナーもあったが、長蛇の列であきらめざるを得なかった。
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16/28ライトの専門メーカーである市光工業は、世界初というコミュニケーションライティングのアイデアを公開。車両をぐるりと囲んだライトの色や光り方の変化で、周囲の車両や歩行者に対して、これからクルマがとる行動を知らせようというもの。自動運転化に向けた提案である。
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17/28東芝が出展していた次世代コックピット。運転支援システムのひとつだが、ミラーに代わるカメラによる鮮明な映像が印象的だった。
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18/28ヴァレオジャパンが展示していたレーザースキャナー。従来のカメラやミリ波レーダーに代わる障害物検知システムで、昼夜や速度を問わず、静止しているものも、動くものも、あらゆる障害物を検知する。今年発売される、アウディのモデルから搭載されるという。
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19/28軽量化を目的とする樹脂製部品を展示していた、ダイキョーニシカワの樹脂製リアウィンドウ。コストの問題で、まだ量産化はされていないという。
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20/28同じくダイキョーニシカワの、こちらは製品化されている樹脂製オイルパン。
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21/28イギリスのエンジニアリング会社であるリカルドが展示していた、フォードと共同開発中という、1.5リッターのディーゼルエンジンと組み合わせるマイルドハイブリッドシステム。48V仕様のスターター/ジェネレーター、電動ターボチャージャーなどで構成される。
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22/28マグナがフォードと共同開発中というCFRP製のフロントサブフレーム。製品化の時期については未定とのことだった。
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23/28ムベアが出展していた、「BMW M4」にオプション設定されている、アルミ製スポークとCFRP製リムからなるハイブリッドホイール。鋳造アルミホイール比で40%、鍛造アルミホイール比で20%の軽量化を達成。解説員に「今日の超偏平タイヤだと、タワーパーキングの入出庫などでもホイールを傷つけやすいので、カーボン面を擦らないか不安……」と話したところ、「そういう事態を想定して、スポーク部分をリム表面より若干出っ張らせています」とのこと(写真左下参照)。
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24/28軽量化技術を得意とする、同じくムベアの差厚鋼管スタビライザー・バー。外径は一定だが、必要な強度に応じて部分的に肉厚が異なる差厚鋼管のスタビライザーは、鋼管を内製している同社だけのものとか。
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25/28カルソニックカンセイが出展していた、開発中という板金製のターボハウジング。鋳物製と比べて軽量化につながるほか、排気システムの効率向上にも貢献するという。
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26/28増えつつある3Dプリンターで製作した部品の出展。これはコイワイのブースに展示されていたもので、右側のアルミ製マニホールドの製作に要する時間は90時間とのこと。
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27/28ミツバが展示していた、世界初というブラシレスモーターを使ったダイレクトドライブ式ワイパー。燃料電池車(FCV)の「ホンダ・クラリティ フューエルセル」に使われている。リンク機構が不要になるため、軽量化に貢献する。
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28/28毎回大人気の、最新モデルの公道試乗。今回もFCV「トヨタ・ミライ」「ホンダ・クラリティ フューエルセル」をはじめ、各社の新型車13台が用意された。