モーターサイクルショー「Throttle Roll/スロットル・ロール」の会場から
2019.06.18 画像・写真2019年5月18日、オーストラリア・シドニーでカスタムバイクを中心にライフスタイルカルチャーをミックスしたイベント「Throttle Roll/スロットル・ロール」が2年ぶりに開催された。
2013年にスタートしたThrottle Rollは、昨2018年こそ諸事情により開催を見送ったが、今回で開催6回目を迎えたシドニーのカスタムバイクカルチャーを代表するイベント。これまでは野外スペースで開催されていたが、今回はシドニーの新たなトレンドスポットになりつつあるウォータールー地区の古い倉庫がその舞台となった。
主催は、チャリティーイベント「The Distinguished Gentleman’s Ride/ジェントルマンズ・ライド」の主催者でもある、マーク・ハーワー氏を中心としたモーターサイクルクラブ「Australian Café Racers」のメンバーたち。2階建ての倉庫の1階は事前登録した来場者の駐輪スペース。その2階に50台のカスタムバイクが並んだ。また隣接する平屋の倉庫はライブ会場となり、さらにその隣ではシドニーで人気を博すローカルフードのバンが並び、皆ドリンク片手に食事をしたり音楽を楽しんだり、もちろんカスタムバイク会場も盛り上がった。
オーストラリアとニュージーランドは、以前からビンテージバイク/カーの文化が盛んな場所としてマニアたちには知られていた。しかし、近年サーフィンとバイクカルチャーをミックスした「Deus EX Machina/デウス・エクス・マキナ」や、先にも紹介したバイクを使ったチャリティーイベント、The Distinguished Gentleman’s Rideの発祥の地としても知られている。また「BikeEXIF/バイク・エグジフ」「Pipeburn/パイプバーン」「Return of the CafeRacer/リターン・オブ・ザ・カフェレーサー」といった、今のカスタムバイクカルチャーをけん引してきたカスタムバイク系ポータルサイトが生まれた地域でもある。
そんな新しいバイクカルチャーの情報発信源でのイベントは、多様なスタイルのバイクとライダーとカルチャーが見事にミックスした、そして情熱にあふれたイベントであった。
(文と写真=河野正士)
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1/32会場は「The Commune Waterloo」と呼ばれる、古い倉庫を利用したイベントスペース。2階建ての左側建物は、2階が展示スペース、1階が事前登録者用バイクパーキングスペース。右側の建物は天井の高い平屋で、ライブスペースとフードコートとなる。この会場は、このイベントを最後に、取り壊しが決定しているという。
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2/32カスタムバイクの展示スペース。展示車両は50台で、すべて壇上に上げられ、解説のためのプレートがセットされていた。イベント当日は天気がよく、ドリンクを片手に、仲間や家族とバイクをじっくり見て歩く人たちであふれていた。
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3/32オーストラリアでも人気の「ヤマハTW」のカスタム。この車両はTWの兄弟車でもある、前後にバルーンタイヤを履き砂漠などを走行するファンバイク「BW200」のフロントまわりを移植。吸気まわりをシンプルにしたり、小型タンクを装着したりと、TWの定番カスタムメニューも取り入れられている。
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4/321926年式「ダグラスEW」のフレームに、1973年式の「ホンダCB125」用エンジンを搭載した、ボードトラックレーサースタイルのマシン。フロントのガーダーフォークも1936年式ダグラスのものだ。エンジン各部は磨き込まれ、またハンドシフト仕様にカスタムされている。
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5/32イメージしたのは1970年代にアメリカを走っていた「ヨシムラ-ホンダCR750」。ベースマシンは1972年式の「ホンダCB750」。オーナーはコツコツとパーツを集め、可能な限りヨシムラが走らせたマシンのスタイルを追い求めたという。エンジンは排気量を836ccに拡大。それに合わせカムやクラッチなども強化されている。
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6/321968年式の「トライアンフT120ボンネビル」のエンジンを、650ccから750ccにボアアップし、リジッドフレームにセット。「The British Bobber/ブリティッシュ・ボバー」と名付けられ、スタイルだけでなく、走りも楽しめるマシンとなっている。
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7/32カワサキの空冷単気筒マシン、1984年式「KZ250」をベースにしたマシン。フレームはスタンダードをベースにしながら、リアまわりをリジッドにカスタム。フロントには、この車両のために製作したというリーフスプリングサスペンションをセット。シートまわりの造形も美しい。
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8/32オーナーは女性。チョッパーに乗るパートナーとともに、旅に出られるバイクを造りたかったという。ベースマシンは1977年製の「スズキGS750」。リアをリジッド化し、フロントには1942年式「ハーレーダビッドソンWLA」用のスプリンガーフォークをセットした。
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9/32オーストラリア生まれのカスタムスクータースタイルのブランド、Hunter Scooterのプロダクトをベースに、さらにカスタムを進めたマシン。スタンダードの「Hunter150」はやや腰高のシルエットだが、この車両は前後サスペンションをローダウンし、ロー&ロングなスタイルを造り上げている。
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10/32ベースモデルである2007年型「ホンダCBF250」のスタイルを想像すると、その変貌(へんぼう)ぶりに驚く。この車両は搬入時にエンジンを掛けて会場入りしてきたが、その見た目を裏切らぬワイルドな排気音だった。
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11/32日本では“働くバイク”として知られている「ホンダCD250」だが、オーストラリアではスタンダードバイクとして広く認知されているという。オーナーは安価にサーキット走行を楽しめる車両としてCD250をベースにした。そしてシルバーラメの外装は、1970年代に発売された単気筒エンジンを搭載したドゥカティのスポーツモデルがイメージソースとなったという。
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12/32Oily Rag Customsが造り上げた「ヤマハSR400」ベースのカスタムマシン。排気量を535ccまで拡大したエンジンにはスーパーチャージャーをセット。冷却フィンを2インチ拡大したことも含め、エンジンは迫力を増している。またリアを中心にフレームまわりも大幅に変更。倒立フォークやシングルタイプのリアショックも採用する。
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13/32欧州を中心に人気が高まっている、“TR1”と呼ばれる空冷V型2気筒エンジンを搭載した「ヤマハXV1000」がベース。XV1000はプレス型のバックボーンフレームを使用していることからスタイルを造り上げるのが難しく、カスタムには技術力とともに斬新なアイデアも求められる。この車両は他車のパーツを流用するなどして、スポーティーにまとまっていた。
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14/32二輪はもちろん、四輪のホットロッドカーのカスタムなども製作するカスタムビルダー、MOTOR RETROが、自らが楽しむために造り上げたマシン。外装類はすべてアルミ鋼鈑からたたき出したオリジナル。ベースは1977年式の「BMW R100RS」。まだ製作途中で、さらに細部を詰めていくという。フロントにはビューエルのブレーキシステムを移植しており、そのためにホイールをワンオフ製作している。
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15/32同じくMOTOR RETROが製作したホンダの6気筒エンジン搭載マシン「CBX1000」。MOTOR RETROはヴォーンとジョルジオの2人組のユニットファクトリー。板金加工のスペシャリストで、他のカスタムビルダーの仕事もサポートしている。先ほど紹介したBMWはジョルジオの、このCBXはヴォーンの仕事。外装類はすべてヴォーンによるハンドメイドだ。
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16/32ベースマシンは1955年式の「ヴィンセント1300ブラックシャドウ」。同じくMOTOR RETROのヴォーンが製作したマシンだ。最新モデルの前後足まわりに、ヴォーンが製作した外装類をセット。さらには自身でセットアップしたフューエルインジェクションシステムも搭載している。
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17/32世界中のファンにその名が知られているオーストラリアのドゥカティスペシャリスト、Vee Twoが製作したコンプリートマシン「ALCHEMY SV-1」。レースでの活躍によってポテンシャルの高さが認められ、そのストリートバージョンとして発売された。こちらのマシンは外装類がカスタムされており、クラシカルなテイストとなっている。
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18/32この車両にはディテール解説用のプレートがなく、オーナーも近くにいなかったため詳細を確認することができなかったが、ベースマシンはSOHC並列4気筒エンジンを抱く「ホンダCB750」。それをこういったテイストにカスタムする発想は、日本ではあまり見かけない。エンジン前方には、自動車のようなアルミ製グリルもデザインされている。
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19/32日本では“ハンターカブ”の名前で親しまれている「ホンダCT110」をベースに、モダンなスーパーモタードとスクランブラーのスタイルをミックスさせている。プレス鋼鈑とパイプで構成される典型的なカブ系フレームには、フレームパイプが追加され、それに燃料タンクやシートがセットされる。
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20/322015年に発表されたブガッティのコンセプトカー「ブガッティ・ビジョン グランツーリスモ」の大ファンであるオーナーが、自転車でそれを再現。すべてオーナーの手作りだが、そのクオリティーやボディーラインの美しさは、趣味のレベルを大きく超越している。
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21/32ヘルメットペイントはどの国でも人気。近年はヘルメットのスペシャリストではなく、画家やイラストレーター、タトゥーアーティストがヘルメットのデザインを手がけ、ペイントを施すことも増えている。
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22/32絵画や写真など、バイクにまつわるさまざまなアート作品も展示されていた。
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23/32カスタムバイクのようなスタイルの新型車を販売するイギリスのバイクブランド、MUTT Motorcycleがスポンサードした、バイク系ムービーの上映ポスター&スケジュール。ドキュメンタリーを中心とした映画だ。世界では今日でも多くのバイク映画が作り続けられている。
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24/32イベントは22時まで。日が落ちてくると、涼を求めて多くの来場者が通路に出てきて、ドリンクを片手にバイク談義に花を咲かせる。
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25/32ライブステージには常にバンドが上がり会場を盛り上げる。ロカビリー系のバンドが上がると写真のようにステージ前に女性が集まり、決まったステップを踏んで楽しんでいた。
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26/32オーストラリアのトップBMXライダーも来場し、ステージ前でその技を披露。
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27/32会場では「ヤマハXSR900」が当たる抽選会も開催。入場時に渡された登録用紙に名前を書いて応募するというもので、イベント終盤にはメインステージで抽選会が行われ、会場を離れていた当選者に電話で当選を報告した。
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28/32会場には女性だけのグループや、女性ライダーも多く見られた。その雰囲気はカジュアルないでたちから、オールレザーのハードなイメージ、フルプロテクションウエアを着込んだ本格派まで、実に幅広い。
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29/32会場前には自動車ディーラーがあったが、その前は来場者のバイクであふれていた。その状況に苦情などの心配もしたが、混乱はなかったようだ。
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30/32パーキングチケット付き入場券を購入したライダーは、展示会場の真下にあるパーキングスペースに愛車を止められる。スマートフォンや、いわゆるQRコードリーダーのようなデバイスを駆使し、完璧に来場車両を管理していた。
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31/32事前予約のパーキングチケット購入者用のパーキングエリア。カスタムバイクで来場するライダーも多く、このパーキングエリアも臨時の展示会場となる。
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32/32主催者であるマーク・ハーワー。彼と彼の仲間たちによってこのイベントが企画および運営されている。チャリティーイベント「The Distinguished Gentleman’s Ride/ジェントルマンズ・ライド」も彼らによって企画され、世界中にその波が広がっていった。