クラシックモーターショー「ノスタルジック2デイズ」の会場から
2020.03.03 画像・写真2020年2月22日、23日の2日間、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、『ノスタルジックヒーロー』など旧車専門誌のプロデュースによる恒例の「ノスタルジック2デイズ」が開かれた。「日本最大級のクラシックモーターショー」というキャッチフレーズを掲げ、実車をはじめパーツやオートモビリア(クルマ趣味の小物)などのショップによる展示即売を中心とするこのイベント、今回は会場面積を従来の1.7倍に拡大し、出展者数も増加した。
折あしく新型コロナウイルス感染拡大の影響により、若干の出展中止はあったものの、会場には例年より多くの車両が並んだ。トピックとなる主催者展示は、1964年にちなんだ車両の企画展を実施。会場ではレーシングドライバーのトークショーやタレントによるライブなども行われた。リポーターの目に留まった展示車両を中心に紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)
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1/40今回の企画展のテーマは「1964年にちなんだ車両」。これら2台は、1964年の第2回日本グランプリに向けて必勝を期してつくられたGT-IIクラス用のホモロゲーションモデルである「プリンス・スカイラインGT」(レプリカ)と、レース直前に急きょ空輸されスカイラインGTに立ちはだかった、最新鋭のミドシップスポーツである「ポルシェ・カレラGTS」(904)。本来なら勝ち目はまったくない、ファミリーセダンがベースのスカイラインGTが、練習走行中のクラッシュによって完調には遠かったポルシェを決勝で一瞬ながらリードした……というスカイライン伝説誕生の歴史的瞬間を再現している。
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2/40企画展示車両の1964年「プリンス・グロリア デラックス」は、東京オリンピックの際に日本オリンピック委員会(JOC)に公用車として提供されたヒストリーを持つ個体。カタログにはないソリッドカラーのライトブルーで塗られており、オリンピック終了後に販売された際の証明書(写真右上)も残されている。手前に置かれた聖火リレー用のトーチは、当時スペアとして用意された未使用のホンモノとのこと。
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3/40これも1964年にちなんだ企画展示車両である「ホンダRA271」。同年8月にニュルブルクリンクで開かれたドイツGPに投入された第1期ホンダF1の実戦デビュー車。220PSを発生する1.5リッターV12 DOHC 48バルブエンジンを横向きにミドシップする。ホンダコレクションホールの所蔵車両。
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4/40『ノスタルジックヒーロー』誌に連載中の林 克己氏のコレクションから、1950年代の希少なミニカー2台の特別展示。「F/F(フライングフェザー)」(写真手前)と「フジキャビン」(同左)は、戦前に日産で自動車エンジニア/デザイナーとしてのキャリアをスタートさせ、自動車以外の分野でもマルチな才能を発揮した富谷龍一氏が設計/デザインに携わっている。
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5/40ダットサンのボディー製造を手がけていた住江製作所が1955年から200台弱を製造販売した「F/F(フライングフェザー)」のインテリア。同車は「最大の仕事を最小の消費で」という富谷氏の持論を具体化した、極めて簡素な2人乗りの軽自動車だった。
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6/40「F/F(フライングフェザー)」は、12.5PSを発生する空冷350cc 90度V型2気筒エンジンをラダーフレームのリアエンドに積み、ダットサン用の3段MTを介して後輪を駆動した。
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7/40富士自動車(富士重工業とは無関係)が1955年から100台弱を製造販売した「フジキャビン」は、前2輪、後ろ1輪のキャビンスクーターともいうべき2人乗りの軽三輪自動車。FRPのフルモノコックボディーのリアに5.5PSを発生する125cc単気筒空冷2ストロークエンジンを積んで後輪を駆動する。車重130kgという超軽量設計だった。
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8/40運転席と助手席とがオフセットされた「フジキャビン」のインテリア。ステアリングホイールの形状を含め、軽飛行機的な雰囲気もある。
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9/40出展された販売車両の中で、リポーターが最も注目した超希少車が「スズキ・フロンテ800デラックス」。1965年から69年にかけての生産台数がわずか2717台というスズキ初の小型乗用車である。3気筒水冷2ストロークエンジンで前輪を駆動する国産初の小型FFサルーンで、そのコンセプトおよび設計にはDKW(アウディのルーツ)の影響がうかがえる。
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10/40この「スズキ・フロンテ800デラックス」は、1969年1月初度登録の最終モデル。出展したオートサークルがボディーからエンジンまですべてに手を入れているが、欠品もほとんどなく、コンディションは上々だったという。写真左上はリアビュー。以下時計回りに、41PS、8.1kgf・mを発生する785cc 3気筒水冷2ストロークエンジン。ラジエーターがバルクヘッド直前に位置するレイアウトもDKWに倣っている。運転席のみヘッドレスト部分まで延びたハイバックシートは、最終型のみの特徴。シンプルなインパネ。ギアボックスは4段コラムMTである。
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11/401971年「マツダ・サバンナ クーペGSII」。最初期型サバンナのトップグレードで、「埼55」ナンバー付きのワンオーナー車。リポーターはこのクルマを二十数年前に取材したことがあるのだが、新車から乗り続けていたオーナーが亡くなったため引き取られたとのこと。「売約済み」となっていたが、新たなオーナーは無事に「埼55」ナンバーを引き継げるそうなので、まずはめでたし。
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12/401977年「スバル・レオーネ1600スーパーカスタム」。初代レオーネセダンの後期型の上級グレード。一時期までスバル小型車の特徴だったサッシュレスドアを最初に採用したのが、この初代レオーネだった。
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13/40「日産マーチ スーパーターボ」。初代マーチの1リッター直4 SOHCエンジンを930ccに縮小、スーパーチャージャーとターボチャージャーを備えた日本初のツインチャージドユニット搭載車である競技専用車両「マーチR」のロードバージョンとして1989年に登場。
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14/40「トヨタ・スターレット ターボS」。FFに転換した3代目スターレットに加えられた、「韋駄天ターボ」とうたったホットモデル。その1988年以降の後期型。トムスの通称“井桁”ホイールを履いている。
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15/40ブリスターフェンダーで武装したボディーに1.2リッター直4 SOHCインタークーラー付きターボユニットを積んだ「ホンダ・シティ ターボII」。アルミホイールは無限製。手前にあるのは初代シティと同時にデビューした、ラゲッジルームに積載可能な原付きバイク「モトコンポ」。
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16/40「オペル・カデットC」などと基本設計を共有するゼネラルモーターズのグルーバルカー(Tカー)構想のもとに誕生した初代「いすゞ・ジェミニ」。これは1979年にマイナーチェンジを受けた中期型の「1800LS/G」で、純正アルミホイールを含めオリジナルの姿を保っている。
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17/40「いすゞ・ピアッツァ イルムシャー」。初代ピアッツァに1985年に追加されたモデルで、オペルのチューナーとして名をはせたドイツのイルムシャーがサスペンションなどをチューニング。エンジンは2リッターSOHCターボを搭載。俗に“ヒトデ”と呼ばれたホイールカバーは「アスカ」と「ジェミニ」のイルムシャーバージョンにも使われた。
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18/40マツダのブースに展示された1980年「マツダ・ファミリア1500XG」。今年創立100周年を迎えたマツダの、記念事業のひとつとして2015年から5カ年計画で実施されている「ONE MAZDA RESTORE」という社内プロジェクトでレストアされた個体。マツダ最大のヒット作となった、いわゆる“赤いファミリア”である。
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19/40燃料消費が多いことから、石油危機後に評価が落ちたロータリーエンジンを、軽量でコンパクトというメリットを生かしてスポーツカー用ユニットとしてよみがえらせた「マツダ・サバンナRX-7」(SA22C)。1978年のデビュー当時のイメージカラーであるメタリックグリーンをまとったこの個体は、ロータリーエンジンのピストンにあたる、オムスビ型のローターをかたどった純正アルミホイールを履いている。
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20/401972年に登場した、マツダ最後のフルオリジナル軽乗用車である「シャンテ」。1ローターのロータリーエンジン搭載を計画していたものの、諸般の事情から軽トラック「ポーター」用の360cc 2気筒水冷2ストロークエンジンをフロントに積み、オーソドックスに後輪を駆動する。360cc規格の軽で最長となる2200mmのホイールベースは、同時代のリッターカーである「トヨタ・パブリカ」(2160mm)より長かった。
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21/401980年「トヨタ・セリカXX」。2代目「セリカ リフトバック」のノーズを延ばし、「クラウン」や「マークII」に使われていた2リッター、または2.6リッター(後に2.8リッターに)直6 SOHCエンジンを搭載した初代XX。車名のXX(ダブルエックス)がアメリカでは成人映画のレーティング用語だっため、輸出仕様は「スープラ」を名乗った。
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22/40日本国内では初代、北米では3代目となるA70系の「トヨタ・スープラ」。手前は1988年「3.0GTターボリミテッド」、後ろは1991年「2.5GTツインターボ リミテッド」。これらはブリスターフェンダーを備えたワイドボディー仕様だが、1986年のデビュー当初の国内仕様は3リッターターボエンジン搭載車を含め5ナンバー規格に収まるナローボディーだった。
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23/401982年「トヨタ・ソアラ2800GTエクストラ」。ゴールドのツートンカラーがゴージャスな、初代ソアラのデビュー時のトップグレード。フルオリジナルの未再生車で、5段MT仕様。
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24/40「日産プレジデントBタイプ」。1972年式というから、65年にデビューした初代プレジデントの最終型。やや車高が下げられているが、そのほかはオリジナルの姿が保たれている。エンジンはV8ではなく、3リッター直6 OHVを積む。
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25/401979年「日産ローレル4ドアハードトップ2000SGL-Eメダリスト」。同門の「セドリック/グロリア」が先鞭(せんべん)をつけた4ドアハードトップが設定された3代目ローレル(C230)。その後期型の高級グレード。
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26/40「日産チェリー2ドアX-1」。1970年にデビューした初代チェリーのホットグレード。日本、そして世界で唯一であろうチェリーを得意とする、毎回広島から遠路はるばるやってくる竹口自動車のデモカー。サイドストライプは純正オプションと同じパターン。
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27/40昨2019年にそろって生誕50周年を迎えた日産の「フェアレディZ」と「(スカイライン)GT-R」。これは2リッター直6 DOHC 24バルブのS20型エンジンを積んだ「フェアレディZ432」(PS30)と「スカイライン2000GT-R」(PGC10)。外国人の来場者も興味津々で眺めていた。
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28/40「ダットサン240K GT」。通称“ケンメリ”こと4代目スカイラインのハードトップGTの輸出仕様で、オーストラリアから逆輸入された。エンジンはシングルキャブ仕様の2.4リッター直6 SOHCのL24を積む。
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29/401977年「日産スカイライン1800GL」。直6エンジンを搭載した「2000GT」系に対して、“ショートノーズ”と俗称される直4エンジン搭載の、4代目スカイラインの基本となるモデル。ケンメリといえば2000GT系の丸テールライトの印象が強いため、このテールライトは逆に新鮮に見える。
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30/40東京オートサロン2020にも出展されていたトップシークレットのマシン。通称“ジャパン”こと5代目「日産スカイライン ハードトップ2000GT」(KGC210)のノーズに、ノーマルのL20Eに代えて輸出用のRB30のブロックにR32~R34のGT-R用RB26DETTのヘッドを載せたNA仕様のエンジンを搭載。いわば「スカイライン3000GT-R」?
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31/40手前からR30の「ターボRS」、R31の「GTS-R」、R32~R34の「GT-R」と、6代目から10代目までの「日産スカイライン」の最強モデルを並べたSHIBATA/R31 HOUSEのブース。
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32/401979年「日産ガゼール」。3代目「シルビア」(S110)の販売店違いの双子車で、シャシーは4代目「サニー」(B310)や2代目「バイオレット」(A10)用がベース。懐かしいゴッティのアルミホイールを履いている。
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33/401984年「日産300ZXターボ50thアニバーサリー」。日産創立50周年を記念して北米でリリースされた特別仕様車。3代目「フェアレディZ」(Z31)の3リッターターボ車をベースにオーバーフェンダーやフロントスポイラー、サイドシルプロテクター、リアスポイラーなどを装着。フロントフェンダー後部には「50thアニバーサリー」のオーナメントが貼られている。
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34/40新車以来の「沖4」ナンバーが付いた、右側通行時代の沖縄向け(左ハンドル)「ダットサン・トラック」。左の520型は1971年式、右の620型は1974年式で、どちらも1.3リッター直4 OHVエンジンを積む。
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35/40通常とは逆に、「トミカリミテッドヴィンテージ」(1/64スケール)のミニカーを1/1で再現したCRAZY KEN'S CAR CLUBの「いすゞ・ベレット1600GTクラブマンレーサー仕様」。
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36/401970年「ホンダ1300クーペ9S」。熱烈な空冷エンジン信奉者だった本田宗一郎肝いりの、DDAC(二重空冷)と呼ばれる特殊なエンジンを積んだ、ホンダ四輪車史上最大の問題作。4キャブレター仕様の総アルミ製1.3リッター直4空冷SOHCエンジンは、当時の水準を大きく上回る110PSを発生した。
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37/40「選ばれし10台」と題され、一般公募から選ばれて展示された10台のオーナー車両の中から、1981年「三菱ミラージュ1600GT」。同時代の国産ハッチバック車の中では抜群にスタイリッシュだった初代ミラージュ。販売台数に比して残存車両が少ない車種のひとつだが、この個体は見たところフルオリジナルで、程度も良好。
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38/40これも「選ばれし10台」から、1978年「フォルクスワーゲン・ゴルフGLE」。“ゴルフ1”こと初代ゴルフの、日本では希少な現存車両。純正スチールホイールを含めオリジナルの姿が保たれている。
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39/401971年「ジャガーXJ6 Sr1」。やけに現代風の大径ホイールを履いていると思ったら、なんとエンジンが初代「トヨタ・アリスト」用の3リッター直6ツインターボ(2JZ-GTE)に換装されていた。トランスミッションもアリスト用の4段ATである。
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40/40クラシックなロールス・ロイス/ベントレーのエキスパートであるワクイミュージアム。目下力を入れているのが、1965年から80年までつくられた「ロールス・ロイス・シルバーシャドウ」とその姉妹車「ベントレーT」の、ワクイミュージアムがBespoke(ビスポーク)と呼ぶオーダーによるレストア車の販売。リビルド済みの前後サブフレーム/サスペンション、パワートレインと塗装前のボディーが展示されていた。