旧車イベント「クラシックカーフェスティバル豊橋」の会場から
2022.03.31 画像・写真2022年3月27日、愛知県豊橋市にある豊橋市美術博物館の施設である民俗資料収蔵室を会場として、旧車イベント「クラシックカーフェスティバル豊橋」が開かれた。今回が初開催となるこのイベントは、地元のエンスージアストやショップ/ガレージなどが中心となって立ち上げた実行委員会が企画運営するもので、監修者として「コッパ・ディ・小海」などのクラシックカーイベントを長年にわたってプロデュースしている岡田邦雄氏が名を連ねた。
会場となった豊橋市多米町にある豊橋市民俗資料収蔵室は、1944年に建てられた旧多米小学校の校舎を利用した、土・日に一般公開されている施設。豊橋市内に残る唯一の木造校舎だそうで、地元では親しみを込めて「ふるため」と呼ばれているという。
風雨が激しかった前夜とは打って変わって好天に恵まれ、タイミングよく桜がほぼ満開となった校庭に集まった参加車両は100台弱。参加資格は原則として1977年以前に生産された車両および主催者が認めた車両で、うち約80台が「CCFT ふるため~大野宿ラリー」と題されたツーリングに出発した。コースはふるためを出発、浜名湖畔を通過してから新城市内に向かい、再びふるために帰ってくる全長約100kmで、途中26km付近の富岡ふるさと会館にはPC競技(タイム計測競技)の会場が設けられた。
大勢のギャラリーが訪れ盛況だった会場とツーリングコースから、参加車両を中心にリポーターの印象に残ったシーンを紹介しよう。
(文=沼田 亨/写真=沼田 亨、徳永 茂)
-
1/50参加車両はメイク、タイプや生産国別にゾーニングされていた。ここは右から「愛 5」のシングルナンバーが付いたシトロエンの「2CV」「DS23」「アミ6」、「トラクシオン アヴァン11BL」、さらに「アルファ・ロメオSZ(ES30)」などのラテン車が並んだ一角。
-
2/50こちらはラテンのバルケッタ(オープンスポーツ)。左から「パナール・ディナ ユニオール」「DBパナール HBR」「ナルディ750S」「バンディーニ750S」「エルミニ1500」。
-
3/50日本にある最も古いフェラーリという、手前の1949年「166インター」をはじめ「ディーノ206GT」「ディーノ246GT」などのフェラーリがそろった。
-
4/50こちらはジャパニーズ・レジェンドと名づけられた一角。手前から「ホンダS600」「日野ルノー カロッツェリア・ワタナベ スペシャル」、「プリンス・スカイライン2000GT-B」「スバルff-1 1300Gスポーツセダン」「いすゞ117クーペ」、そして「ダットサン・フェアレディ」など。
-
5/50建物(旧校舎)の裏側に並んだ「ポルシェ356」シリーズ。手前から2台は「356A」、続いて「356Bスーパー90」「356Bカブリオレ」「356Bスーパー90」。
-
6/50こちらには大柄なオープンカー。右から3代目と初代の「フォード・サンダーバード」、そして「メルセデス・ベンツ280SEカブリオレ」。
-
7/501920年代のサイクルカー(軽便車)。手前から「オースチン・セブン」のシャシーに飛行機を模した布張りボディーを載せたスペシャル、「アミルカー」、そして「モーガン3ホイーラー」。
-
8/50右から3台の「メッサーシュミットKR200」、「トロージャン・ハインケル200」、2台の「BMWイセッタ」といったバブルカー群。アップダウンが多いツーリングコースの走破は難しいということで、サイクルカーとバブルカーは参加しなかった。後方の建物は給食室だったところで、当日はここを会場として豊橋出身の自動車画家・木版画家である牧田哲明さんの作品展も実施された。
-
9/50給食室内に展示された牧田哲明さんの作品。木版画のほか鉛筆画、墨絵、版木や道具類なども公開された。
-
10/50牧田哲明さんと次女の塚越京子さん。塚越さんは実行委員会のメンバーでもあり、彼女がふるためとの縁をつないでくれたそうだ。桜に合わせたピンクとデニムのおそろいのコーディネートがオシャレ。ちなみに牧田さんのキャップには、大好きなアルファ・ロメオのエンブレムが。
-
11/50プログラムにも牧田さんの作品が使われた。下は今回のゼッケン。これはスタッフ車両用で、参加車両用は地色がブルーとなる。
-
12/50午前9時30分に、まずは4台のバルケッタがツーリングに向けてスタート。これは1954年「DBパナールHBR」。
-
13/50ほかの車両のスタートは10時。これはかなりモディファイされた1969年「アルピーヌA110」。
-
14/501966年「サーブ96モンテカルロ」。「豊橋市民俗資料収蔵室」という看板の上に、昔の小学校の定番アイテムだった二宮金次郎像が見える。
-
15/50公道へのアプローチを下る1966年「マトラ・ジェット」。1963年にデビューした世界初の市販ミドシップスポーツである「ルネ・ボネ・ジェット」のマイナーチェンジ版。
-
16/50先行スタートした4台のバルケッタが1957年「ロータス・エリート」に先導されて向かった先は?
-
17/50愛知県新城市にある、なんとその名も車神社。なぜその名がついたのかは不明だが、天正(1573~1593年)以前に設立された歴史ある神社という。この参道に見合うサイズとして、小柄なバルケッタが選ばれたのだ。
-
18/504台のバルケッタと「ロータス・エリート」の5台が社殿前に並び、交通安全のご祈祷(きとう)を受けた。
-
19/50ご覧のように社紋も車輪をモチーフとしている。
-
20/50バルケッタ以外の参加車両は車神社近くの富岡ふるさと会館で“出張ご祈祷(きとう)”を受けた。前が1969年、後ろが1967年式のSR311こと「ダットサン・フェアレディ2000」。
-
21/50ここはスタンプポイントも兼ねていた。1955年「MGA」のドライバーが巫女(みこ)さんからスタンプをもらっている。
-
22/50スタンプは当然ながら車輪をモチーフとした車神社の御朱印である。
-
23/50ご祈祷(きとう)とスタンプが済んだら、富岡ふるさと会館の敷地内でPC競技(例えば20mを5秒で、30mを6秒で走行といったふうに、決められた区間を指定時間にいかに近く走れるかを1/100秒単位で競う)を実施。
-
24/50PC競技中の1968年「プリンス・スカイライン2000GT-B」。
-
25/50ツーリングコースの大半は風光明媚(めいび)で交通量の少ないワインディングロードで、参加者には好評だった。少々モディファイされた1973年「ディーノ246GT」に「マトラ・ジェット」と「フィアット・ディーノ クーペ」が続く。
-
26/501949年「シトロエン・トラクシオン アヴァン11BL」。このトラクシオン アヴァン、なぜこんなアメリカ車みたいな顔つきなんだろう? と思いきや、警察用車両なのだそうだ。無線を積むスペースを確保するためにマスクを変える必要があったとのこと。
-
27/501954年「アーノルト・ブリストル」。ベルトーネに在籍していたスカリオーネが手がけた空力的なボディーで、2リッター直6 OHVエンジンをはじめ戦前のBMWをベースとする中身を包んだ希少車。
-
28/501963年に開かれた第1回日本グランプリの国内スポーツカー 1300~2500ccに出走、9位で完走した戦績を持つ1958年「ポルシェ356A」を先頭に3台の356が連なって行く。
-
29/50約100kmのコースのほぼ中間地点で、2つ目にして最後のスタンプポイントは新城市内にあるカフェ兼ギャラリーの大野宿 美術珈琲 鳳来館。ここは同施設の駐車場だが、右端に見える土蔵は登録有形文化財でギャラリーになっている。いっぽう左側に見えるのは、これも登録有形文化財である旧料亭菊水。クルマは1971年「アルファ・ロメオ・ジュリアスーパー1300」。
-
30/501991年「アルファ・ロメオSZ(ES30)」が通過していくのが大野宿 美術珈琲 鳳来館。これまた登録有形文化財となっている、1925(大正14)年に開業した旧大野銀行本館を使ったカフェ兼ギャラリー。
-
31/501965年「ASA 1000GT」。フェラーリが企画したフェラリーナ(小型フェラーリ)の製造権を買い取ったASAが100台ほど生産した希少車。スタイリングはジウジアーロ、シャシー設計はジオット・ビッザリーニ、1リッター直4 SOHCエンジンの設計はカルロ・キティというオールスターキャストによる珠玉のGTである。
-
32/50古風な家並みが残る宿場町である大野宿を行く、桜にも似た微妙で味わい深い色の「シトロエン2CV」。
-
33/50「いささか奇怪」などともいわれたマスクにクリフカットのルーフと個性たっぷりの姿は1968年「シトロエン・アミ6」。
-
34/501988年「フェラーリ・テスタロッサ」。後方に見えるクラシックな郵便ポストは現役である。
-
35/50これも大野宿を行く、輸出専用車の1960年「ダットサン・フェアレディSPL212」。前日にロケハンとしてコースを一周した際に、個人的に最も印象に残ったのが後方に見える“カンコー学生服”の看板だった。
-
36/50いわゆるハンドメイド時代の1970年「いすゞ117クーペ」。ちなみにカンコー学生服の看板のある洋品店、土曜に下見で通過した際は営業中で制服が飾られていた。
-
37/50猪鼻湖沿いの浜名湖レークサイドウェイを行く1970年「日産フェアレディZ432」。初代Zに「スカイライン2000GT-R」用の4バルブ、3キャブレター、2カムのS20型エンジンを積んだホットグレード。
-
38/501962年「日野ルノー カロッツェリア・ワタナベ スペシャル」。日本におけるカスタムカー製作の先駆けであるカロッツェリア・ワタナベの第1作といわれる貴重なワンオフ。ボディーパネルの一部がFRP製で、パワートレインは「日野コンテッサ900S」用。
-
39/501982年「フェラーリ512BBi」。終始リトラクタブルヘッドライトを上げて走っていた白いBB。
-
40/502008年「フェラーリSP1」。名古屋在住の世界的なフェラーリコレクターで、ギャラリーも開設している平松潤一郎氏の依頼により、フェラーリが約50年ぶりにワンオフ製作したスペシャルモデル。
-
41/501956年「ジャガーXK140ロードスター」。左上方に見えるのが猪鼻湖。
-
42/501953年「ブリストル403」。戦前型BMWをベースとする中身にカロッツェリア・トゥーリングによる空力的なボディーをかぶせた英国製サルーン。
-
43/50午後2時前には、ツーリングに参加した全車が無事ふるために帰還。会場には多くのギャラリーが訪れ、にぎわっていた。
-
44/50豊橋市民俗資料収蔵室の内部もちょこっとだけ紹介しよう。これは教室。机や椅子も残されているのがすごい。ちなみに還暦過ぎの筆者の通った小学校は、都内だったがこれとあまり違わない光景だった。
-
45/50タイムスリップしそうな廊下。ほかにも昭和30年代の一般家庭の茶の間を模した生活用具展示室や、地場産業だった製糸用具の展示室などに約1000点の資料を展示している。
-
46/50午後2時30分から実施された最後のプログラムとなる表彰式より。各地の旧車イベントでクラシックなレーシングウエアなどを展示販売しているダニー・ジェラルディンさんから「PMCS(プリンス・モータリスト・クラブ・スポーツ)」のメカニックスーツ(ツナギ)を、“ダニー賞”として「プリンス・スカイライン2000GT-B」のオーナーにプレゼント。
-
47/50その表彰式の最中に、ごう音を響かせて入場してきた1928年「アルヴィス12/50 SE」。なんでも道中で何度も不具合に襲われながらも休み休み会場を目指し、閉会直前になんとか滑り込んだとのこと。
-
48/50すべてのプログラムが終了し、参加車両はギャラリーに見送られながら三々五々に退場。これは女性ペアがドライブしていた1976年「マセラティ・カムシン」。
-
49/50ほぼ前後対称で前後に横開きのドアを持ち、前後シートは背中合わせで4座という電車のようなマイクロカーの1957年「ツェンダップ・ヤヌス」。
-
50/50帰路につく1973年「リライアント・リーガル3/30」。英国製の軽便な三輪サルーンだが、日本では希少車。