【スペック】全長×全幅×全高=4900×1795×1510mm/ホイールベース=2900mm/車重=1780kg/駆動方式=FR/4.5リッターV8DOHC32バルブ(333ps/6400rpm、46.0kgm/4000rpm)/価格=567万円(テスト車=610万500円)

日産フーガ450GTスポーツパッケージ(FR/5AT)【試乗記】

輸入車市場を食えるか 2005.09.13 試乗記 笹目 二朗 日産フーガ450GTスポーツパッケージ(FR/5AT) ……610万500円 日産の高級スポーティサルーン「フーガ」。新しく追加された、4.5リッターV8エンジンを搭載するトップグレード「450GT」に試乗した。

並のフーガでない

ラクシャリーセダンである「日産フーガ」に、高性能版の「450GT」が追加された。簡単にいえば、V6エンジンが搭載されているはずのノーズに4.5リッターV8を押し込んだ仕様。これまでも北米仕様の「インフィニティM45」は存在したが、旧セドリックのボディ・サイズ車にV8エンジンを搭載した日産車の、日本市場への投入は初めてである。

このVK45DEエンジンは、333ps/6400rpmと46.0kgm/4000rpmにチューンされる。「メルセデス・ベンツE500」や「BMW545i」「トヨタ・クラウンマジェスタ」などと同等の、実用セダン型高性能車の範疇だ。しかし、ボディ外観のどこにもV8の文字は見当たらず、対外的に威嚇することなしに秘めたる高性能を味わうことができる。
とはいえ、抜き去ったあとで何者かを知らしめるヒントもちゃんと用意されている。「450GT」の文字と、デュアルで左右に覗く4本のテールパイプを見れば、並のフーガでないことは一目瞭然。

できの良いAT

5段ATはもちろんマニュアルシフトもできるが、Dポジションのままでもコーナー手前で無用にシフトアップなどしないように、パワーを効果的に利用する工夫もされている。
高性能AT車を楽しむのに左足ブレーキは有効な手段であるのだが、ドイツ車の一部にはアクセルとブレーキのペダルを同時に踏むとエンジンがストールするなど、過剰な防備をするものもあり、スムーズな運転の妨げになっている例もある。が、このフーガ450GTの場合には賢明なチューンが施されている。確かにブレーキペダルをチョンと踏んだ場合、エンジン回転はその場に止まるが、リカバリーが早く、次の加速に支障がない。また低速(1速)ではこの設定が解除され、ブレーキリリース直後の発進時に加速を開始しないもどかしさは皆無で、車列の隙間を縫って右折横断するとか、迅速に列に加わるような場合にもヒヤッとすることはない。
ATのできもさることながら、このエンジンなかなかレスポンスがいい。フルスロットルによる駿足こそこの車の最大の魅力で、一切の荒々しさとは無縁に洗練された加速Gの爽快さを味わえる。

【テスト車のオプション内容】
プライバシーガラス=3万1500円/BOSEサラウンド・サウンドシステム=18万9000円/インテリジェントクルーズコントロール(低速追従機能付)+ステアリングスイッチ+インテリジェントブレーキアシスト+前席緊急ブレーキ感応型プリクラッシュシートベルト=17万8500円/ETC=3万1500円

総じて静粛にして快適

この手の高性能セダンにありがちなのは、ローダウンゆえの低い地上高、太いタイヤとガチガチに固めた酷い乗り心地などが想定されるが、フーガ450GTはそうしたネガティブな要素はない。総じて静粛にして快適な乗り心地が得られており、操縦安定性もハイパワーに見合うレベルが確保されている。これでフェラーリやポルシェを追い上げるのも楽しいかもしれない。

実用上の不満な点は2度踏みリリース方式のサイドブレーキ。これは緊急時に反復使用できない不安があるし、同じ操作でまったく逆の仕事をさせることに問題があると思う。554.4万円もする高価格車にして何故ここをケチるのか理解できない。

ともあれ、手持ちの駒のなかから既成のユニットを有効利用して比較的簡単に追加した車種であるが、一部のユーザーにとっては非常に魅力的な車種に仕上がっている。これまでは輸入車によって占められていた市場だけに、ほかの面でも波及効果はありそうだ。

(文=笹目二朗/写真=荒川正幸/2005年9月)

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