三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ(4WD/CVT)
新時代の幕開け 2026.01.06 試乗記 「三菱デリカミニ」がフルモデルチェンジ。ただし、先代のデビューからわずか2年足らずで……という期間も異例なら、見た目がほとんどそのままというのもまた異例だ。これで中身もそのままならさらに異例だが、こちらは逆に異例なほどの進化を遂げていた。三菱自動車の英断
自動車というのはなんである。アイデアである。ということをあらためて思い知らされたのが三菱デリカミニである。2023年に発売されるや、キュートな外観とキャンディーズの往年のヒット曲『年下の男の子』の替え歌の元気なCMで、軽自動車界に旋風を巻き起こしたことは記憶に新しい。
デリカミニは2020年に送り出された「eKクロス スペース」のお仕立て直しバージョンである。そのeKクロス スペースは「日産ルークス」と共通の「eKスペース」の地上高を若干上げ、「デリカD:5」そっくりのダイナミックシールド顔を与えた三菱独自の、いわゆる軽スーパーハイトワゴンのクロスオーバーSUVだけれど、三菱ファン以外にはあまり注目されなかった……というのが実情だった。
三菱自動車はこのアイデアを諦めなかった。その読みがすばらしい。マイナーチェンジの際、テコ入れとしてダイナミックシールド顔を捨て、「ディフェンダー」風の、「デリ丸。」なるキャラクターが成り立つほど、激おこにも見えるファニーなマスクを与え、名称をデリカミニに改めた。フェイスリフト前のデザインのほうがそれこそデリカミニだったのに……。
ともかく、この改名は大英断だった。デリカは三菱を象徴する老舗ブランドで、ミニバンをSUV風に仕立てた先駆的モデルでもある。「パジェロミニ」という軽SUV、往年の呼び方だと軽RVをほうふつさせもする。eKクロス スペースの車名のままでは、『年下の男の子』をもってしても、難しかったのではあるまいか。
デリ丸。なるキャラクターもヨカッタ。ぬいぐるみだけでなく、ゆるキャラもつくって、「悪い子はいねぇが」と年越しキャンプ場めぐりをしても話題になりそうである。
室内の広さに驚く
日産ルークス/三菱eKスペースの5年ぶりの全面改良を機に、初代のコンセプトをそっくり引き継いで再登場したのが2代目デリカミニである。見た目もそっくりで、見分けがつかない。Dピラーの形状が、先代は三角というか斜めというか、なのに対して新型はスクエア、というのが私の見分け方法である。
エンジンとプラットフォームは先代からの継承・発展型としつつの、ボディーは一新、というタイプのモデルチェンジで、2495mmのホイールベースは先代と同じだ。ご参考までに日本一のベストセラーたる「ホンダN-BOX」のホイールベースは2520mmと、さらに25mm長い。ところが室内長は、新型ルークス/eKスペース、そしてデリカミニは2315mmと、N-BOXの2125mmより90mm長い。
ということもあって、新型デリカミニの筆者のファーストインパクトは室内のとんでもない広さである。フロントガラスが遠い。曲率も大きめで、ワイドに広がっている。コックピットもシンプル&クリーンな造形で好感が持てるし、ツートンのブラウンの合成皮革のシートもオシャレ。シリーズ最上級グレード「Tプレミアム DELIMARUパッケージ」ということもあって、インテリアは小型車クラスと比しても上質に感じる。車両価格290万7300円と、「スズキ・ソリオ」のOEMである「デリカD:2」を買ってお釣りがくるほどなのだから、それもまた当然としても、ここまでデラックスに仕立てたところがエラい。
走りだして驚くのはふわふわの乗り心地だ。まるで「シトロエン2CV」みたい。これがセカンドインパクトである。ただし、タイヤが若干硬い。165/60R16の「ダンロップ・エナセーブEC300+」なるOEM用の低燃費用タイヤと合っていない……と感じた。ところがそのうち、この固めの靴底が元気ハツラツなSUV感を生み出しているのかもしれない、と思うに至った。スムーズな路面、もしくは速度が60km/h以上になると、がぜん、タイヤの硬さが気にならなくなることもある。
高速移動は得意種目
コストダウンもあって、マイルドハイブリッドのシステムを廃した659cc直列3気筒ターボは最高出力64PSを5600rpmで、最大トルク100N・mを2400-4000rpmで発生する。まるで自然吸気エンジンみたいなフラットなトルクの出方が特徴で、街なかだと静かだし、CVTの反応も上々で、扱いやすい。
だけど、こんなにふわふわの足まわりで、全高は1800mm、トレッドは1300mmポッキリという極端な背高のっぽボディーである。高速巡航は大丈夫なのか? 翌早朝、山梨方面まで140kmも走るというのに……といささか不安に思った。結局それはまったくの杞憂(きゆう)だった。新型デリカミニは高速巡航が得意種目だったのだ。
ひとつにはカヤバの「プロスムース」なるショックアブソーバーの採用である。カーペットライド(乗り心地)とライントレース性(操安性)の高次元での両立を狙ったというこのショックアブソーバーは特殊なシステムを用いることなく、独自のオイルの添加剤、構成部品の素材、形状によってそれを実現しているのだ。低速時にはふわふわなのに、高速時にはしっかりして目地段差でもタンタンと通過する。軽自動車に電子制御の可変ダンパーがおごられる時代になったのか……と錯覚するほどに。
もうひとつはフルタイム4WDである。ビスカスカップリングの前後輪間の回転速度差を小さく設定することで、駆動力をつねに4輪に配分しているというこのチューニングのおかげで、首都高速の江戸橋ジャンクション付近の中速コーナーも安定感たっぷりで駆け抜ける。リアがじつにしっかりしていて頼もしい。
燃費は「もう少しがんばりましょう」
上り坂やワインディングロードではもうちょっとパワーが欲しい、と感じる。だけど、660ccの軽なのだから致し方がない。3気筒DOHCターボは高回転まで回すと、ヴィイイイインというメカニカルなサウンドを発して、やってます。がんばってます。とアピールする。
ドライブモードには「ノーマル」「パワー」のほか、「グラベル」や「スノー」もある。ノーマルからパワーに切り替えると、エンジン回転が500rpmほど上がり、アクセルに対する反応ががぜんよくなる。デリ丸。の元気なイメージにふさわしい。とは思ったものの、ノーマルでも十分な加速が得られるし、静かなほうがよいので、もっぱらノーマルで走った。
フルタイム4WDということもあって、燃費は期待を下回った。河口湖到着後、西湖方面まで足を延ばすと燃料計の針が残すところ4分の1になったのでガソリンを入れた。トリップ222kmで20.0リッター、つまり、リッター11.1kmだった。実用上、航続距離がもうちょっと長いとありがたい。燃料タンクの容量は27リッターである。ホンダN-BOXの場合、FWDで27リッター、4WDは25リッターだから、日産&三菱陣営はがんばってはいるわけだけれど。
結論としては、もはやリッターカーはいらない。と筆者は申し上げたい。軽自動車の弱点だった高い高速走行安定性を備えている。新しいデリ丸。は軽300万円時代の扉を開けたのだ。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=三菱自動車)
テスト車のデータ
三菱デリカミニTプレミアム DELIMARUパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1815mm
ホイールベース:2495mm
車重:1050kg
駆動方式:4WD
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:64PS(47kW)/5600rpm
エンジン最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/2400-4000rpm
タイヤ:(前)165/60R15 75V/(後)165/60R15 77H(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:17.8km/リッター(WLTCモード)
価格:290万7300円/テスト車=307万0320円
オプション装備:ボディーカラー<アッシュグリーンメタリック/ブラックマイカ>(8万2500円) ※以下、販売店オプション サイドデカール(5万1700円)/フロアマット<プレミアム>(2万8820円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1523km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:239.8km
使用燃料:15.0リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:16.0km/リッター(満タン法)/15.8km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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