スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(4WD/CVT)
ここから反撃が始まる 2026.01.05 試乗記 デビューから8年を迎え、大幅な改良が施された「スズキ・クロスビー」。内外装に車体にパワートレインにと、全方位的に手が加えられた“AセグメントSUVの元祖”は、フォロワーであるダイハツ・トヨタ連合のライバルとも伍(ご)して戦える実力を獲得していた。手の込んだマイナーチェンジ
フロントエンドの造形をがらりと変えた新しいクロスビーは、スズキ自身は「新型」をうたうが、一般的にはマイナーチェンジと受け止められることが多いだろう。軽自動車用、Aセグメント用、Bセグメント用と3種類ある「ハーテクト」のプラットフォームのうち、Aセグ用を使う設計にも変更はないようだし、フロントフードとサイドフェンダー以外の上屋のプレスパネルも、従来のままだからだ。少なくとも、見た目はやはりマイナーっぽい。
2017年12月のデビュー当初は、月間販売(月販)目標の2000台前後をキープしていたクロスビーだが、貴重な5ナンバーサイズSUVとして正面から競合する「トヨタ・ライズ/ダイハツ・ロッキー」が発売された2019年秋以降は、月販1000台前後に後退。対するライズ/ロッキーは合計で1万台超を連発している。クロスビーの販売台数が、圧倒的な販売力をもつトヨタのライズを下回るのは想定内としても、実際はダイハツ名義のロッキーにもゆずっている。
今や8年選手のクロスビーは、とうにフルモデルチェンジしていても不思議でない。しかし、近年はモデルライフが長期化傾向にあるうえに、クロスビーは国内専用車で生産台数も稼ぎにくい……というわけで、今回はマイナーチェンジになったのだろう。
とはいえ、今回のクロスビーは、顔まわりの整形に加えて、ダッシュボードもまったく新しく、パワートレインと先進運転支援システム(ADAS)も完全刷新されている。パワトレは1リッター3気筒ターボ+6ATから1.2リッター3気筒+CVTに乗せ換えられて、ADASは単眼カメラ+赤外線センサーの「デュアルセンサーブレーキサポート」から広角単眼カメラ+ミリ波レーダーの「デュアルブレーキセンサーサポートII」へアップデートされたのだ。つまり、下手なフルモデルチェンジよりよほど大規模な改良なわけで、スズキが新型とうたう気持ちもわかる。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
質感を高めたインテリアのジレンマ
クロスビーの販売が伸び悩んだ理由としては、従来のデザインが、女性には好評でも男性のウケが今ひとつだったことに加えて、ADASも含めた運転支援機能と燃費に課題があった……というのがスズキの認識らしい。今回は、これらのテーマを重点的に改良したという。
フロントエンドは丸目ライトを踏襲しつつ、ご覧のように、基本造形をラウンド基調からスクエア基調に変えた。Aピラー以後のプロポーションは従来のままだが、リアコンビランプをエッジーな形状とすることで、ふくよかで丸っこいヒップラインを水平モチーフのフロントエンドと見事になじませている。こういう厳しい制約下できっちり結果を出すデザインは、さすが規制だらけの軽自動車で鍛えられた(?)スズキだ。
真新しいインテリアデザインは、ダッシュボードからドアトリムにめぐらせた“革”にまず驚く。それは表面シボからステッチ、さらに微妙なハリとシワまで、笑ってしまうほど本物っぽいが、実際に触ると表面はカチカチのハード樹脂成形パネル。この種のイミテーションは、そうではないとわかった瞬間の落胆が、その精巧さに比例して大きくなることに、今回あらためて気づかされた。
というわけで、この革風パネルは好き嫌いが分かれそうだが、電動パーキングブレーキと同時に新設されたセンターコンソールやヘッドアップディスプレイ(ともに上級グレード専用)、カラー液晶メーター、最新意匠のステアリングホイールなどなど、インテリア全体では質感と使い勝手は確実に向上している。
アクセル特性を変える「スポーツモード」や「スノーモード」、ブレーキLSDによる「グリップコントロール」、そして「ヒルディセントコントロール」などのスイッチも健在だが、これらの機能が、今回試乗した4WDだけでなくFWDにも用意されるのは新しい。これも先述の運転支援機能の充実化の一環か。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
動力性能は必要にして十分
走りにおけるハイライトは、やはり「スイフト」や「ソリオ」に続いて搭載された最新パワートレインだろう。従来の1リッターターボは、それこそ120km/hからでも力強く加速しようとするほどパワフルだった。そこから最高出力で19PS、最大トルクで42N・mのディチューンとなる1.2リッターは、なるほど110km/hくらいから明らかに加速が鈍る。
とはいえ、自然吸気とは思えない超フラットなトルク特性と無段階変速のおかげもあって、余力はないものの“必要十分”な地力は確保されている。マイルドハイブリッドも継承されてはいるのだが、そのスペックから想像されるように、あくまで燃費向上が主眼の黒子に徹するタイプで、モーターアシストを体感できる瞬間はほぼない。
聞けば、車体やシャシー方面でも、今回はなかなかマニアックな手が加わっているという。まずは車体剛性と静粛性のアップだ。車体の構造用接着剤自体は以前から使われていたが、今回はフロアやフロントバルクヘッド部などに、減衰タイプの接剤剤が追加された。
またサスペンションについても、前後ダンパーのピストンバルブを再チューニングしたほか、フロントではリバウンドスプリングを追加し、スタビライザーリンクの剛性も強化。またFWDのリアサスペンションには、要となるコンプライアンスブッシュ部分にスイフトと共通の取り付けボルトやワッシャーを使うことで、締めつけトルクをアップしたという。
さらに、コーナーでステアリングを切り増す(=ドライバーがアンダーステアを感じている)ようなシーンで、内輪のブレーキを作動させる「アクティブコーナリングサポート」機能も追加している。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
明確に感じられる魅力度のアップ
走りだすと、なるほど静粛性のレベルアップは明らかだ。路面の凹凸によるポコポコというドラミング音が、完全に払しょくされたとはいわないがずいぶん遠くなったのは、減衰接着剤とダンパー改良の恩恵か。エンジンを高回転まで引っ張ったときのサウンドも、さわやかで耳ざわりではない。
今回試乗した4WDの直線性は、FWDにリアのしなやかさで少しゆずり、横方向の押さえもやや緩く思えたのは否定しないが、単独で乗るかぎりはそう気にならない。ADASのアップデートもあって、アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストによる高速巡航も、それなりに安定していて快適だ。
フロントのリバウンドスプリングや新スタビライザーリンクの採用は、ロール剛性や操舵の正確性を引き上げるのがねらいと思われ、いわれてみれば所作全体が落ち着いて大人っぽくなった感がある。とはいえ、Bセグ用ハーテクトを土台とするスイフトや「フロンクス」のパリッとした高剛性感におよばないのは、プラットフォームのちがいによるところか。
新しいクロスビーの最後のテーマである燃費にしても、デビュー直後に試乗(参照)したときの車載燃費計値が13.1km/リッターだったのに対して、距離はちがえど似たようなパターンで走った今回のそれは18.2km/リッターと、明白に改善している(ともに4WD)。差は約39%で、その向上率がWLTCモード燃費のそれ(は約24%)より良好だったのは、スイフトの試乗でも感じたことだが、どんな乗りかたをしても燃費の悪化が最小限……という最新「Z12E」型エンジンの美点が存分に発揮されたからだろう。
今回のクロスビーのアップデートは市場でも好評のようで、発売初月の2025年10月と翌11月の登録台数は、ひとまず月販目標の2000台を超えて、宿敵ロッキーにも勝った。見ても乗っても明確に魅力アップしたクロスビーゆえ、この勢いは年明けも続いてほしい。
(文=佐野弘宗/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=スズキ)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3760×1670×1705mm
ホイールベース:2435mm
車重:1030kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:80PS(59kW)/5700rpm
エンジン最大トルク:108N・m(11.0kgf・m)/4500rpm
モーター最高出力:3.1PS(2.3kW)/1100rpm
モーター最大トルク:60N・m(6.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)175/60R16 82H/(後)175/60R16 82H(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:21.0km/リッター(WLTCモード)
価格:250万0300円/テスト車=300万4430円
オプション装備:ボディーカラー<ミスティックブルーメタリック×ホワイト2トーンルーフ>(5万5000円)/全方位モニター付きメモリーナビゲーション・スズキコネクト対応通信機(27万0600円)/アップグレードパッケージ<レザー調&はっ水ファブリックシート表皮[ブラウンステッチ]+インパネカラーパネル[サファリカーキ]+ドアトリムカラーパネル[サファリカーキ]+フロントドアアームレスト[レザー調]+ヘッドアップディスプレイ[カラー]+残照式3ポジションルームランプ[フロント・センター]+ラゲッジルームランプ[LED]>(6万9300円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン、スタウト>(3万5090円)/ETC車載器(2万4200円)/ドライブレコーダー(4万9940円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:982km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:447.8km
使用燃料:25.1リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:17.8km/リッター(満タン法)/18.2km/リッター(車載燃費計計測値)
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆【ニュース】スズキがコンパクトSUV「クロスビー」を大幅改良 デザインも機能も走りも強化
◆【試乗記】スズキ・クロスビー ハイブリッドMZ(FF/CVT)
◆【連載 カーマニア人間国宝への道】第324回:カーマニアの愛されキャラ

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
アウディA6アバントTFSIクワトロ200kW(4WD/7AT)【試乗記】 2026.10.5 今も昔もアウディの中核を担うアッパーモデル「A6」。その最新世代の「アバント」に試乗した。堂々とした優雅なボディーに最新のハイブリッドシステムを搭載したステーションワゴンは、いかなる走りを見せてくれるのか。その実力をリポートする。
-
ホンダN-BOXカスタム ターボ コーディネートスタイル2トーン(FF/CVT)【試乗記】 2026.10.3 フロントグリルとメッキパーツの面積が大きくなって迫力が増した最新の「ホンダN-BOXカスタム ターボ」に試乗。マイナーチェンジで進化した内外装の仕上がりと、軽四輪車の販売で11年連続の首位を誇る“絶対王者”の走りを報告する。
-
日産エルグランドG e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.9.30 日産のプレミアムミニバン「エルグランド」がフルモデルチェンジ。その動力を担う第3世代の「e-POWER」は優れたドライバビリティーとともに、懸案だった高速燃費の改善もうたう。ロングドライブで進化のほどを確かめた。
-
ポルシェ911ターボS(4WD/8AT)【試乗記】 2026.9.29 「ポルシェ911」シリーズのなかでも最上位に位置するモデル「ターボS」。ポルシェ独自のハイブリッドと2基の電動ターボチャージャーを得た最新モデルは、どのような走りを備えているのか? 最高出力711PSのハイパフォーマンスモデルの実力に触れた。
-
NEW
“クルマづくりのプロ”の話をライブで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.10.7From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、10月15日(木)の夜、19時半から実施します。 -
NEW
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか?
2026.10.7デイリーコラムいよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。 -
NEW
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】
2026.10.7試乗記新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。 -
NEW
第131回:新型三菱パジェロ(後編) ―レトロブームには頼らない? 最新のデザイントレンドを追求した三菱の思惑―
2026.10.7カーデザイン曼荼羅正式発表を間近に控え、ますますファンの間で話題が盛り上がっている新型「三菱パジェロ」。歴史的な旗艦の復活だというのに、三菱があえてレトロブームに乗らなかった理由とは? カーデザインの識者とともに、新型パジェロに見る最新のデザイントレンドを探る。 -
写真で解説する「スズキeスカイ」
2026.10.6画像・写真軽規格の新型電気自動車「スズキeスカイ」がデビュー。2026年10月6日に東京都内で発表会が開催された。スズキが総力をあげて開発したというニューモデルの見どころや、会場における社長の談話を紹介する。 -
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】
2026.10.6試乗記「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。





















































