トヨタ・ヴィッツRSターボ(5MT)【ブリーフテスト】
トヨタ・ヴィッツRSターボ(5MT) 2003.05.23 試乗記 ……262.3万円 総合評価……★★豆GT&荒法師
不用意にスロットルペダルを踏み込めば、ステアリングホイールが手のなかで踊り、「ドコ行っちゃうの!?」と、ドライバー、青ざめる。久々に楽しむ過給機付きハッチバック。ヴィッツターボは、弾丸のごとくカッ飛んでいく。
もしアナタのクルマの後方から来る小さなヴィッツがたちまちバックビューミラーいっぱいに広がったなら、グリルを確認してみた方がいい。「Turbo」の小さなエンブレムが……なんて、ちょっと汗くさい、活劇調の記述がしたくなる、なんだか懐かしいドライブフィール。お帰り、スターレットターボ!?
“Powered by TRD”の1.5リッターターボは、厚くスムーズに、しかし絶対的には過剰なトルクを供給する。おとなしい外観とはうらはらな、荒々しい加速。ハイウェイでは、はじけ飛ぶ豆GT。峠では荒法師。暴れる前輪をものともせずスロットルを開ければ、よく利くLSD(オプション)の恩恵で、小粒なボディはグイグイ力まかせに曲がっていく。
疾風怒濤の走りに、しばし夢中。しかし、すぐ醒める。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ヴィッツは、1999年1月に発表されたトヨタの新世代コンパクトカー。欧州戦略車でもある。3ドア、5ドア、2種類のハッチバックボディをもち、エンジンラインナップは、デビュー当初は1リッターと1.3リッター、2000年10月に1.5リッターが追加された。2001年12月、1リッターモデルがフェイスリフトを受け、環境性能向上が図られた。
2002年12月25日、ヴィッツはマイナーチェンジを受け、新開発の1.3リッター直4(2SN-FE型)とCVTを組み合わせたモデルが加わった。従来の1.3リッター(2NZ-FE型)も併存する。グレードは、下から「B」「F」「U」、フロントベンチ風シートを備えた「ペアスタイル」、レトロ調「クラヴィア」、スポーティな「RS」で構成される。
テスト車のヴィッツターボ(TURBO Powered by TRD)は、ボディのカスタマイズなどを行うトヨタ自動車の関連会社「トヨタモデリスタインターナショナル」が2003年1月23日に発売したスペシャルモデル。開発を担当したのは、トヨタのモータースポーツ部門「TRD」(トヨタレーシングディベロップメント)だ。
(グレード概要)
「ヴィッツ1.5RS」をベースに、「専用ターボチャージャー」を搭載。そのほか標準装備の専用部品は「クーリングダクト」「ECU」「インタークーラー&パイピング」「オイルクーラー」「ラジエター」「サスペンションキット」「クラッチカバー」「フロントエンブレム(Turbo)」である。3ドア(179.8万円)と5ドア(185.0万円)がある。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
サイドシルに装着された、「RS」の文字が入ったスカッフプレートをまたいでドライバーズシートへ。ヴィッツターボのインパネまわりで、ベースとなった「RS」と変わるところはない。空調ダイヤルやパワーウィンドウスイッチ周辺にカーボン調パネルを用いて“スポーティ”を演出。エアコンはマニュアル。標準ではオーディオレス(4スピーカーは設置済み)である。一方、トンネルコンソール上や、センターコンソール両脇など、使いやすいモノ入れが備わるのが、ヴィッツもともとの美点。基本的な日常性は犠牲にされない。
(前席)……★★★
ディーラーオプションのスパルコ製バケットシートが装着されたテスト車。派手な形状がウレシイが、乗降性が考慮されたためか、実際のホールド性は「必要十分」だが「期待以上」ではない。バックレストには、4点式シートベルト用の穴が開けられ、スポーツ気分を盛り上げる。ただ、シートを取り付けるステーの位置が高いのが気になるところ。興が削がれる。着座位置が高まり、腰高感が強まるうえ、膝下が短いドライバーだと、ちょっとツラいかも。スパルコほか、レカロのシートも選択できる。
(後席)……★★
ラゲッジスペースより、後席の居住性にスペースが振られたヴィッツゆえ、膝前、頭上ともスペース的な問題はない。そのうえリアシート本体の、短めの座面、薄いシートバックで、さらに空間を稼ぐ。シート自体は腰のないクッションでオシリがズブズブ沈むのが減点要素。走行中は路面からの入力も直接的で、つまり座り心地はいまひとつ。
(荷室)……★★
ヴィッツターボのラゲッジルームは、奥行き40cm、トノカバーまでの高さ55cm。床面最大幅は130cmあるが、それはほんの手前だけのハナシ。実際には、ストラットタワーに挟まれて、実用面積は小さい。
本格的に荷物を運ぶときには、分割可倒式になったリアシートの背もたれを倒せばいい。荷室フロアとは段差ができるが、1m前後の奥行きを確保できる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
TRDの手でターボ化された1.5リッター“1NZ-FE”ユニット。ベース車より40psと5.4kgm大きい、150ps/6400rpmの最高出力と20.0kgm/4800rpmの最大トルクを発生する。過給機のインペラー(コンプレッサー)はボールベアリング式の軸受けをもち、「専用EPU」「インタークーラー」は当然として、横幅をアップした「専用ラジエター」、さらには「専用オイルクーラー」が採用される、かなりの本格派だ。
スペック上の最大トルク発生回転数は高めだが、タコメーターの針が3500rpmも指せば、“必要十分”をはるかに超える駆動力が噴出する。ときに前輪を軽々と空転させるさまは圧巻で、たとえば料金所からのスタートダッシュがヴィッツターボの醍醐味のひとつだが、せめてファイナルだけでも「もうちょっとギア比を上げても……」と弱気に思わないでもない。とはいえ、過給の特性そのものは、突然ターボが立ち上がるタイプではなく、ごく自然にトルクが付与される。穏やかな運転も、もちろん受け付ける。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
ヴィッツターボは、“つるし”のままでも専用サスペンションが奢られるが、テスト車は、さらにスポーティかつ10mmのローダウンが可能な「スポーツサスペンションキット」が組まれていた。ホイール&タイヤも、「185/55R15」から「195/45ZR16」にグレードアップ。
全体に硬めだが、乗り心地はじゅうぶん日常のアシに使えるレベルで、路面状態によってことさらボディが揺すられるようなこともない。ただ、高速道路などでの継ぎ目では、かなりのハーシュがある。オプションバケットシートの厚いクッションのおかげで、だいぶ緩和されるとはいえ……。
ハンドリングは、ほとばしるターボパワーを、太いタイヤのグリップと、ヘリカルLSDで強引に路面に伝える豪快なもの。タイトコーナーでもグイグイ曲がっていく。ただ、所期の興奮が醒めると、いわゆるスポーツ走行が、単調な作業に感じられる。さらなる刺激を求めて、サーキットでタイムトライアルか、ダートでラリーにトライする?
(写真=清水健太)
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【テストデータ】
報告者 :webCG 青木禎之
テスト日 :2003年5月13日
テスト車の形態 :広報車

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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