DS N°4エトワール ハイブリッド(FF/6AT)
文化の運び手 2026.05.20 試乗記 DSオートモビルから「DS N°4」が登場。そのいでたちは前衛的でありながらきらびやかであり、さすが「パリのアバンギャルド」を自任するブランドというほかない。あいにくの空模様ではあったものの、350km余りをドライブした。大事なことが書いてある
DS N°4(ディーエス・ナンバーフォー、フランス語読みだとヌメロキャトル)は、2021年にパリでデビューした「DS 4」のフェイスリフト版である。数字の前にN°がつく車名は、先に上陸したDSブランドの旗艦にして100%電気自動車(BEV)の「N°8(ヌメロユイット)」で初採用されている。DS 4も小改良を機に同じ方式に改名されたわけで、DSはこのN°+数字でネーミングを統一するつもりらしい(と書いたあとで「DS N°7」が発表になった)。
DS 4からDS N°4になって、何がどう変わったのか? といえば、文字どおり、輝きを増している。まずはフロントのグリルを横方向にガバチョと広げ、グリル中央の「DS」マークと、ヘッドライト下のV字型のシグネチャーライトを飛び石状に並べたLEDライトで結ぶことで、昼間っからキラキラさせているのだ。三角形を組み合わせてつくったようなDSのマークも光る。
リアは、中央にあったDSのロゴをやめて「DS AUTOMOBILES」と大書している。その下には同じ字体でN°4とあり、どこのなんというクルマか、分かるようになった。だって、書いてあるわけですからね。
日本仕様のパワーユニットはいまのところ、1.2リッター3気筒+電気モーター内蔵6段DCTのマイルドハイブリッドのみ。プジョーの「208」や「3008」、それに「シトロエンC4」や「アルファ・ロメオ・ジュニア」など、ステランティスのCセグメントを中心とする小型車で多用されているおなじみのシステムである。本国には電気自動車と1.6リッター4気筒+モーターのプラグインハイブリッドの設定もあるので、こちらの導入も期待したいところだ。
発進時にボディーが震える
新しいエクステリアデザインをチラリと確認し、ボディーとツライチのドアノブにいささか戸惑う。どうやって開けるの? テコの原理で、ノブの進行方向前のほうを押すと、前ヒンジで後ろのほうが飛び出る。
着座位置はさほど高くない。フロントのスクリーンがやや寝ているのは、クーペとSUVのクロスオーバーだから、であろう。「エトワール」というグレードのインテリアにはアルカンターラが多用されている。この日本発の人工皮革を、スポーティネスではなく、エレガンスの演出に使っている例は、最近珍しいのではあるまいか。
センターコンソールのギアセレクター周辺には、DSブランド独自のクル・ド・パリ文様なるギョーシェ彫りが施されたクロームが光っている。ブレゲの職人が手がけた、なんてことになるとめちゃんこお高くなるわけだけれど、私的にはこちらで十分。素直にいいなぁ、と思う。
スターターボタンを押すと、即座にエンジンが始動する。ハイブリッドといっても、ステランティスの1.2リッター3気筒直噴ターボ+電気モーターのそれは、エンジンが主役のマイルドハイブリッドだから、である。でもって、車重1490kgに比してモーターのアシストがちょっと足りないのか、発進の際、軽くボディーがぶるぶるっと震える。まるでエンジンがノッキングしているみたい……。直噴過給エンジンで11.5の高圧縮比ゆえか、真相は不明ながら、環境性能を大いに意識している、と感じさせる。筆者が体験した範囲だと、シトロエンC4ハイブリッドも低速時にギクシャクする傾向があったけれど、ノッキング的な現象の記憶はない。
節度の利いたダンピング
この違いは奈辺にありや? と考えてみると、C4とDS N°4は同じCセグメントで、近しい関係にあるように見えて、じつはプラットフォームが異なっている。前者は「CMP」というBセグメント用、後者は「EMP2」というC/Dセグメント用を使っている。さらに前者は18インチ、後者は19インチを採用するなど、装備面の違いもあって、前者は1370kg、後者は1490kgと、つまりN°4は120kgも重い。重いとエンジンはつらいよ。
走りだしてしまえば、DS N°4は快適な陸のハイスピードクルーザーである。その意味では、なるほど、「シトロエンDS」のスピリットを引き継いでいる。サスペンションのバネは柔らかめの設定で、といってもふわふわではなく、節度のあるダンピングによって首都高速の目地段差でも余韻を残さない。19インチということもあって、ショックはしかと伝えるものの、角が取れて和らいでいる。「ミシュランeプライマシー」の205/55という穏当な幅と偏平率の仕事に違いない。ボディーは金庫のような丈夫さではなくて、竹のようなしなやかさを感じさせ、路面の突起をやさしく包み込んでいる感じもする。
ステアリングはイマドキとしてはねっとりとしており、やや重い。その重さが優れた高速直進性につながっている……のかもしれない。
120km/hあたりまで、高速巡航時の室内は静かである。車重には遮音材のぶんも含まれているのだろう。ただし、し~ん。という息の詰まるような静かさではなくて、ロードノイズとウインドノイズが控えめに入ってくる。雑な音がしない。自然な静かさ、というべき心地よさだ。
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フランスはいいなぁ
1.2リッター直3ターボは最高出力136PS/5500rpm、最大トルク230N・m/1750rpm。電気モーターは最高出力20PS(15kW)/4264rpm、最大トルク51N・m/750-2499rpmで、システム最高出力は145PS。Cセグメントとしては大柄なボディーで、車重は1490kgと重め。だけど加速性能は十分。ご不満を抱かれる向きは、ドライブモードを「スポーツ」に切り替えれば、満足されると思う。ステランティスの1.2リッターマイルドハイブリッドは表彰ものだ。
ただし、アクセルをガバチョと踏み込み、3気筒直噴ターボを6000rpmまで無理やり回すようなことはお勧めしない。エレガントな外見に似合わぬ、少々やぼな音を小排気量ターボが発するからだ。あくまでスムーズな中間加速を小粋に楽しむ。もしかして電池のエネルギー残量によってモーターのアシスト量が変わっているような気もするけれど、仮にそうだとしても、特に気になるわけではない。そんなことより、巡行時の快適さに思いをはせてみよう。こんなにエスプリの効いた、柔らかい気持ちで乗れる陸のクルーザーは珍しい。
月並みながらシャンソンとかジャズを聴きながら、ミシュランガイドを片手に遠くまで行ってみたい。と筆者的には思う。わがニッポンは美食の国だからして。星付きはもちろんよいけれど、ビブグルマン(価格以上の価値)でもそうとうよい。
同時に、フランスはいいなぁ。パリにまた行って、エトワールをグルグル走りたい。DS N°4はそういうことも思わせる。つまるところ、いまのフランスからの文化大使なのだ。
(文=今尾直樹/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=ステランティス ジャパン)
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テスト車のデータ
DS N°4エトワール ハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4415×1830×1495mm
ホイールベース:2680mm
車重:1490kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.4kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
タイヤ:(前)205/55R19 97V XL/(後)205/55R19 97V XL(ミシュランeプライマシー)
燃費:20.1km/リッター(WLTCモード)
価格:625万円/テスト車=638万2020円
オプション装備:ボディーカラー<クリスタルパール>(9万円)/ETC2.0車載器(4万2020円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1239km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:349.0km
使用燃料:29.6リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.8km/リッター(満タン法)/12.1km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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