第4戦バーレーンGP「今季初のダブルはトリプルチャンピオンの手で」【F1 2013 続報】
2013.04.22 自動車ニュース【F1 2013 続報】第4戦バーレーンGP「今季初のダブルはトリプルチャンピオンの手で」
2013年4月21日、バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第4戦バーレーンGP。これまで3戦して3人のウィナーが誕生した今シーズンは、最初の7戦で7人の勝者が名を連ねた、昨年同様の混戦の様相を呈している。しかし今年は早くも4戦目にして、レッドブルのセバスチャン・ベッテルが“ダブル”を達成。くしくもポディウムの面々は、昨年とまったく同じ顔ぶれになった。
■“ダブル”を目指す4強
2010年から中東諸国に吹き荒れた「アラブの春」の影響による不安定な情勢は、バーレーンでもまだくすぶり続けているようだ。2011年の開催中止を経て復活した昨年のバーレーンGPでは、サーキット周辺での抗議活動や大小の混乱が見られたものの無事行われ、セバスチャン・ベッテルが優勝し幕を閉じた。
今年もF1を統括するFIA(国際自動車連盟)、商業面を取り仕切るFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)ともに「安全面に問題はない」とし、GPサーカスは中東の小さな島国に足を踏み入れたのだが、反体制派の抗議に関する報道は、昨年ほどではないものの引き続き散見された。政府や既得権益層を打倒しようとする人たちにとっては、世界的に注目されるF1を“利用”し、自国の窮状をアピールしたい。一方で同国の王子を中心としたレースを開催する側にとっては、立ち直ったバーレーンの象徴としてF1を“活用”したい。両者の思惑は正反対のようで、同じ地平の上にあるようにも思えるが、9回目のF1バーレーンGPは予定通り行われたのだった。
これまでの3戦で、3つの異なるチームから3人の勝者が生まれた。初戦オーストラリアで勝ったロータスのキミ・ライコネン、2戦目マレーシアでのウィナー、レッドブルのセバスチャン・ベッテル、そして中国で優勝したフェラーリのフェルナンド・アロンソ。チャンピオンシップではランキング首位のベッテルから4位ルイス・ハミルトンまではわずかに12点の差しかなく、前年同様の混戦が続いている。
とはいえ、徐々にだが戦力図の輪郭も見えはじめている。レッドブル、ロータス、フェラーリ、メルセデスというトップ4チームのうち、メルセデスの「W04」は、予選でこそ速さを発揮するものの(ハミルトンは初戦3位、2戦目4位、3戦目1位)、レースペースでは劣り未勝利。ピレリタイヤを酷使する傾向にあるようで、決勝でズルズルと後退するシーンがよく見られている。3戦して1勝しているレッドブル「RB9」だが、こちらもややロングランに心配を残しているといえるだろう。
ロータス「E21」はその逆をいくマシンだ。ライコネンはこれまで予選7位、10位、そして前戦中国では2位を得たものの、比較的後方からスタートし、決勝では1位、7位、2位という結果を残している。そしてフェラーリ「F138」はアロンソが予選で5位、3位、3位、レースでは2位、リタイア、1位と追い上げる展開に持ち込む。
4つの直線と中高速ターンをちりばめたバーレーンのサーキットは、激しい加減速でタイヤへの縦方向の負荷がきついコースといわれる。また砂漠の真ん中にあるゆえコースが砂で汚れがち。30度を優に超える高い気温と相まって、タイヤにはひときわ厳しいコースである。そのためか、ピレリは当初ハードとソフトを投入する予定だったが、急きょソフトをミディアムに変更した。
今年初の“ダブル”を達成するのはどこの誰か。または別の陣営が勝者としてあらわれるのか。2013年シーズンの4戦目は幕を開けた。
■ロズベルグ、自身2度目のポールポジション
予選で強いメルセデスは、バーレーンでもその力を(やはり局所的に)発揮した。前戦のハミルトンに続き、今度はニコ・ロズベルグが最速タイムをマーク。初優勝した昨年の中国GP以来となる自身2度目のポールポジションを決めた。チームメイトのハミルトンは4番手タイムを記録したが、予選中に、ギアボックスを傷めたことで交換を余儀なくされて5グリッド降格となった。
ロズベルグから0.25秒遅れてベッテルが予選2位。以下、アロンソが3位、レッドブルのマーク・ウェバー5位、フェラーリのフェリッペ・マッサ6位、好調フォースインディアのポール・ディ・レスタ7位、同エイドリアン・スーティル8位、ライコネン9位、マクラーレンのジェンソン・バトンはアタックなしで10位という順位だった。
しかしハミルトンに加え、ウェバーが前戦の接触事故のペナルティーで3グリッド降格となったことで、最終的な上位グリッドは、フロントローにロズベルグとベッテル、2列目にアロンソ&マッサ、3列目ディ・レスタ&スーティル、4列目ウェバー&ライコネン、5列目ハミルトン&バトンという並びとなった。
■ベッテル、早々に首位奪取に成功、アロンソはトラブルで脱落
57周のレースは、スタート後数周の間、緊迫した接近戦となった。シグナルが変わると、ロズベルグを先頭にターン1になだれこんだ一団。2位に“スタートの鬼”アロンソが上がったものの、ターン5ではベッテルがその座を奪還することに成功した。
2周目、トップのメルセデスにレッドブルが並びかけるまでになり、翌周ベッテルがついに首位に立った。ロズベルグのタイヤは既に手負いの状態で、5周目にはアロンソに抜かれ、次の周にはディ・レスタにも先を越されてしまう。結局今回のポールシッターは4度もピットストップを行い、9位という惨めな順位でレースを終えることとなった。
一方、1位ベッテルはファステストラップで逃げの態勢を取りはじめ、5周目には後続にDRSを行使されない1秒以上のギャップを築いていた。この日のベッテルは次元の違う速さを見せていた。チームから「飛ばし過ぎ」の忠告を受けるほどのハイペースで飛ばし、大勢を占めた3ストップ作戦を難なくこなし、最終的に9秒のマージンを築いて優勝した。
スタート早々アロンソに起きたトラブルは、ベッテルの快勝を後押ししたはずだ。2位を走行していたフェラーリのエースに、リアウイングのDRSのフラップが開きっぱなしという問題が襲いかかったのだ。7周目にピットインし、メカニックがフラップを手で元の位置に戻したが、コース上で再びDRSを作動させるとやはりウイングが開いたまま。9周目に再ピットに入り、フラップを戻してレース再開。レース序盤で優勝戦線から脱落したアロンソは、DRSなしという厳しい状況で追い上げ、8位入賞でレースを終えた。
■白熱の5位争いは、ハミルトンが制す
独走劇を披露するベッテルの後方では、激しいポジション争いが繰り広げられていた。2ストップで2位まで上がっていたディ・レスタだったが、同じく2ストップを取ったライコネンのロータスに速さでかなわず、自身初の表彰台となる3位に照準を合わせていた。だが残り7周というところで、もう1台のロータス、グロジャンの猛追を防ぎ切れず、結果4位でゴールした。
ウェバー、マクラーレンの2台、そしてメルセデスのペアによる5位争いは白熱した。中でも序盤11位まで落ちた精彩欠くハミルトンは、2度目のタイヤ交換を済ませると見違えるように速さを取り戻し、終盤にはウェバーの真後ろまでつけて丁々発止と渡り合った。ファイナルラップ、ついにウェバーを料理し、5位の座を確実なものとした。
マクラーレン同士の順位争いも手に汗握るものだった。バトンに接触するほどの勝負をたびたび挑んだセルジオ・ペレスは、今季最高位の6位に終わったものの、先輩格のバトンには「アグレッシブすぎる」と“お説教”を受けるはめに。バトンは4ストップで10位だった。
昨年同様の混戦ながら、早くも4戦目にして“ダブル”を達成したベッテル。チャンピオンシップでもリードを守っており、4連覇に向けてまい進中である。しかし不気味な存在なのがロータスとライコネンだ。第2戦マレーシアでは7位だったものの、その他は優勝1回、2位2回と堅調にポイントを重ね、ベッテルの10点差、2位につけている。
ロータスの課題は、やはり予選順位だ。今回ポールタイムから1秒近く遅く、上位入賞のためには、1回少ないタイヤ交換で走らなければならなかった。レース後、「レッドブルを負かすスピードはなかった」とコメントするライコネンだが、扱いづらいピレリタイヤを、一番手なずけているのは、この2007年チャンピオンだろう。
次からはいよいよヨーロッパ・ラウンドに突入。各チームが大幅なマシンアップデートを施してくるだろう第5戦スペインGPは、5月12日に決勝を迎える。
(文=bg)
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