SIM-Drive、第2号試作EV「SIM-WIL」を発表
2012.03.28 自動車ニュースSIM-Drive、第2号試作EV「SIM-WIL」を発表
電気自動車(EV)開発ベンチャーのSIM-Drive(シムドライブ)は2012年3月28日、先行開発車事業第1号「SIM-LEI」に続く、第2号の車両を発表した。車名は「SIM-WIL」で、SIM With Innovation and Linkの頭文字を取ったという。
■航続可能距離は351km!
東京都内のホテルに設けられた会場には、自動車メーカーの新型車発表会にも劣らぬ、多くの報道関係者が詰めかけていた。30年以上にわたりEVの研究を進めてきた慶應義塾大学教授にしてSIM-Drive社長の清水浩氏の技術力に、多くの人が期待を寄せている証拠だろう。
今回発表した「SIM-WIL」は、2011年1月から34の企業/団体とともに開発を進めてきたもので、同社の基本技術となっているダイレクトドライブ式インホイールモーター(外側の回転子にホイールを直結する)と、バッテリーやインバーターを内蔵したコンポーネントビルトイン式フレームを採用する。
そのうえで、満充電での航続距離351km(JC08モード)、BセグメントのボディーサイズとEセグメントの室内空間の両立、中級レベルのスポーツカーに匹敵する0-100km/h加速5.4秒など、既存のクルマとは明らかに違う次元の内容を備えている。
351kmの航続距離、5.4秒の0-100km/h加速は、リチウムイオン電池の容量を35.1kWh(日産リーフは24kWh)とたっぷり確保しつつ、高圧成形技術を用いたスチールスペースフレーム、カーボンファイバー製ドアなどの採用により、車両重量を1580kgに抑えたことが大きいようだ。さらにEVはエアコンによる電力消費も航続距離に影響することから、SIM-WILでは遮熱や断熱にも配慮したという。
4輪すべてに搭載されるモーターは、1号車の「SIM-LEI」と同じ直径300mmで、性能面を同等とする代わりに、騒音や振動の低減に意を払ったそうだ。
■EVのメリットを生かしたコンパクトボディー
パッケージングは、フロントにエンジンを積まないEVのメリットを生かすべく、SIM-LEIと同じ2950mmのロングホイールベースを継承しながら、リアオーバーハングを600mm削り、全長×全幅×全高=4150×1715×1550mmというコンパクトな外寸とした。それでいて後席の足元は80mm広くなっており、身長170cmの筆者が足を組めるスペースを実現している。
デザインコンセプトは「アーバン・グルーブ」。SIM-LEIに続いてサイドインパクトビームをドアパネルの外側に内蔵した「カーボンドアマッスル」、状況に応じて開閉する「エアロシャッターグリル」などを特徴とする。「フジ・バイオレット」と名付けられた淡い紫色のボディーカラーは、環境にやさしいイメージを表現。インホイールモーターを「チラ見せ」したホイールも目を引く。
インパネには合計5つのモニターを装備。うち3つはメーターパネル内に置かれて計器表示とサイドブラインドモニターの機能を果たし、中央の15インチ(!)と助手席側の10インチモニターではナビゲーションやインフォテインメントなどを提供するという。LEDを用いた室内灯はカラーの変更もできる。
充電は一般家庭用100/200VとCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電器の両方で可能だが、持ち運び可能な専用家庭用充電機をCHAdeMO対応とすることで、車両側の電源ソケットを1カ所にしている。
1号車のSIM-LEIがそうであるように、SIM-WILはSIM-Drive自身が生産するわけではない。オープンソースという同社のビジネスプランに基づき、2014年を目標に、事業に参加した34企業・団体が量産化に向けた取り組みを進めていくことになる。
1号車SIM-LEIの面影をフロントマスクやボディーサイドに残しながら、細部の仕上げはこのまま量産化してもいいと思わせるほど洗練度を高めたSIM-WIL。既存のメーカー製EVの多くが、コストを抑える目的からかエンジン車のボディー流用という流れに傾いているからこそ、EVのメリットをフル活用した姿はとても新鮮に映った。
(文と写真=森口将之)
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