第5戦スペインGP「定説を覆した英雄」【F1 2013 続報】
2013.05.13 自動車ニュース ![]() |
【F1 2013 続報】第5戦スペインGP「定説を覆した英雄」
2013年5月12日、スペインのサーキット・デ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。序盤のフライアウェー4戦を終え、各陣営が数々のアップデートパーツを携えて迎えたヨーロッパラウンド初戦は、変わらずピレリタイヤが支配する戦いとなった。そんななか、レースを制したのは地元の英雄フェルナンド・アロンソ。バルセロナにつきまとう“ある定説”を覆しての勝利だった。
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■苦境に立たされるマクラーレン
全19戦のうち4戦を終えた2013年シーズンにあって、最も苦戦しているトップチームといえるのがマクラーレンだった。
優勝はおろか表彰台もなく、ジェンソン・バトンが2ストップという苦肉の策で得た第3戦中国GPでの5位が今季最高位。バトンは13点でドライバーズランキング10位、首位セバスチャン・ベッテルには既に64点も離されている。
新加入のセルジオ・ペレスと合わせ、チームの総ポイントは4戦で23点。コンストラクターズチャンピオンシップではトップのレッドブルに86点も水をあけられ、フォースインディアにも抜かれ6位に甘んじている。昨年の同時点ではルイス・ハミルトンがランキング2位、コンストラクターズ選手権でも2位だったことを考えると、1年で雲泥の差がついたことになる。
現行2.4リッターV8から新規の1.6リッターV6ターボに変わる2014年を前に、今季、各チームは前年型の延長線上にマシンを開発してきたが、マクラーレンだけは違っていた。結果には結びつかなかったが抜群のスピードを誇った2012年型「MP4-27」からコンセプトを大きく変え、アグレッシブな「MP4-28」をデビューさせたのだ。フロントに低重心化、後方への空気の流れを整える狙いのプルロッドサスペンションを採用し、空力まわりも改めた意欲作ではあるが、その高い志は今のところ空回りしている。
「MP4-28」のウイークポイントは不安定な空力性能。F1屈指のリソースを持つマクラーレンだが、最新鋭の風洞、シミュレーション施設を駆使してつくりあげたマシンが、実際にコースに出ると予想外の動きをする。テスト期間が著しく制限されている昨今にありがちな、いわゆる「コリレーション(相関関係)」の問題だ。
これには昨年、前プルロッドサスを選んだフェラーリも苦しんだが、スクーデリアは1年かけて今季型「F138」で理解を深めているようにみえる。だがマクラーレンには十分な学習期間が用意されていない。なんとなれば、来年はまったく新しいレギュレーションでのマシン開発となるからだ。ともすれば2014年型マシンの開発にも遅れが生じかねない、そんなシビアな状況に置かれている。
ヨーロッパラウンドの始まりとなる第5戦スペインGPは、起死回生をもくろむマクラーレンのみならず、各陣営が大幅なアップデートを持ち込む“第2の開幕戦”。両選手権をリードするレッドブル、レースペースに優れたロータスやフェラーリ、一発の速さでは抜きんでているメルセデスら強豪同士の覇権争いはますます激しさを増し、そしてピレリタイヤという“難敵”は戦況を混沌(こんとん)としたものに変えるのだった。
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■メルセデス、3戦連続のポールポジション
予選で速いが決勝(の特にマシンが重い序盤)ではピレリタイヤのタレがひどく、いまだ勝利のないメルセデス。スペインの予選でもそのパフォーマンスをいかんなく発揮し、ニコ・ロズベルグが2戦連続、メルセデスとしては3戦連続となるポールポジションを獲得した。そしてルイス・ハミルトンが2位に入り、フロントロー占拠までやってのけたのだが、やはりレースペースには不安を残していた。
予選3位はポイントリーダー、レッドブルのベッテル。ロータスのキミ・ライコネンに続き、フェルナンド・アロンソとフェリッペ・マッサのフェラーリが3列目に並んだが、マッサは予選Q2で他車を邪魔したことで3グリッド降格のペナルティーを受けた。
6番グリッドはロータスのロメ・グロジャン、7番グリッドにレッドブルのマーク・ウェバーがつき、注目のマクラーレンはペレスが8番グリッド。バトンにいたってはQ2どまりの予選14位に沈んだ。
トップ10最後列は、マッサとフォースインディアのポール・ディ・レスタが並んだ。
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■4ストップのアロンソ、3位からトップに
バルセロナで優勝するには最前列が必須条件である。低中高速コーナーをバランスよくちりばめたこのエアロ・コースでは、過去16年間でポールシッター14勝、予選2位2勝というデータが残っているのだ。定説通りならメルセデスのどちらかが勝つことになるが、さにあらず。優勝争いは予選4位のライコネンと同5位のアロンソ、作戦を異にした2人を中心に展開した。
スタートではロズベルグを先頭としたメルセデス1-2が早々に崩れ、間にベッテル、アロンソが割って入る。ハミルトンは一気に4位まで落ち、ライコネンは1つ順位を下げ5番手からレースを組み立てることとなった。
アロンソにとって勝利をたぐり寄せることになったポイントがレース序盤に訪れる。この日4度も行うことになるピットストップの1回目、66周レースの10周目だ。この翌周、アロンソの前を走っていた1位ロズベルグ、2位ベッテルがそろってタイヤ交換を終えると、アロンソはアンダーカットに成功しベッテルの前に出ることができた。そして13周目にロズベルグをオーバーテイクし、次の周にはトップに立っていた。
今季2勝しているポイントリーダーのベッテルは、アロンソのペースに追いつけず。当初は3ストップをもくろんだもののタイヤの状況が厳しく、変則的な4ストップ作戦を取らざるを得なかったのが仇(あだ)となり、最終的に4位に終わった。
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■3ストップのライコネン、アロンソに挑む
メルセデスが去り、ベッテルを料理したアロンソに対抗したのはライコネンだった。こちらは持ち前のタイヤに優しいマシン&ドライビングで1回少ないタイヤ交換作戦を取った。33周目にベッテルを抜き3位に上がると、前を走るフェラーリの2台、アロンソとマッサに照準を合わせた。
45周目に最後となる3回目のタイヤ交換を済ませたライコネンは、まだ1回のピットストップを残していたフェラーリ勢に勝負を挑むべくニュータイヤでペースを上げた。古いタイヤで防戦しなければならなかった首位アロンソだが、しかしその4周後には自身も最後のタイヤチェンジのためピットへと飛び込んでフレッシュなタイヤを得た。
この時点で1位はアロンソ、まだ最後の交換をしていないマッサを挟み、ライコネンはトップから8秒差の3位。事実上のトップ争いとなるアロンソ・ライコネン対決は、フェラーリが力強い走りでロータスを置き去りにし、最大12秒のギャップを築いたことで勝負あり。アロンソは第3戦中国GPに次ぐ今季2勝目を記録し、開幕戦ウィナーのライコネンは3戦連続の2位を獲得した。
この結果、チャンピオンシップではベッテルが首位をキープしているが、ライコネンがわずか4点差でランキング2位、フロントローが勝つという定説を覆し母国Vに喜んだスペインの英雄アロンソは、ベッテルの17点後ろ、3位に迫るという接戦状態となった。
コースや局面ごとに前を走るものが変わる目まぐるしい2013年シーズン。第6戦となる伝統のモナコGPは、5月26日に決勝レースを迎える。
(文=bg)
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