第189回:ランボルギーニが集結した夢のような5日間
創業50周年記念「グランドツアー」参加記(前編)
2013.06.08
エディターから一言
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ランボルギーニの創立50周年を祝うツアーイベント「50周年グランドツアー」が2013年5月7日から5月11日まで、イタリアで開催された。5日間で総計1200kmに及ぶ“猛牛旅行”の参加記を、2回に分けてお届けする。
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世界29カ国から350台が参加
何百発もの花火が夜空に鳴り響きだす。
時計の針はとうに日付をまたいでいた。
あちらこちらで大歓声が沸き起こった。
こんなところまでやってきて、
こんなにも素晴らしい気分で、
こんなに豪勢な花火を見ることができるなんて……。
色とりどりの炎をうっとりと見つめているうちに、つい、うとうとし始めたのだろう。打ち上げ花火の爆発音が、頭のなかでやがて、V12サウンドの爆音に取って代わられ、色とりどりのレイジングブルが、ミラノを、マルミを、ピサ、ローマ、オルヴィエートを、そしてボローニャを、轟然(ごうぜん)と走り抜ける光景がまぶたの裏によみがえってきた。もちろん、ボクの駆る「ガヤルドLP550-2」も、その中に交じっている。
地元の食材がふんだんに供されたランチに、夜な夜な開催された盛大なパーティー。開け放たれるスプマンテに、ヴィノビアンコ&ヴィノロッソ。そして、着飾った“レイジング”な紳士淑女たち――夢のような5日間を、思い出していた。
アウトストラーダで全開を試し、ローマの石畳の感触を楽しんで、フータ峠を攻め込んだ。4日間で1200kmあまりを、みんなとともに走りぬいた。ずっと、ずっと、笑っていた。ボクはもう一度、目を見開く。そして、金色の花火を見つめながら、誰に向けるでもなしに、にっこりとほほ笑んだ。
5月11日、いや、正確には5月12日になったばかり。ひと際、盛大な光と音が打ち上げられる。どうやら、これが最後の仕掛け花火のようだ。ところはサンタガータ・ボロニェーゼ。確かにそれは、夢の終幕だった――。
このイベントは、正式名を「グランデ・ジロ・ランボルギーニ 50°アニヴェルサリオ」(略して、50周年グランドツアー)という。
2013年の今年、世界中で計画されているアウトモビリ・ランボルギーニの生誕50周年を祝う行事の中でも、最大級にしてハイライトともいうべきイベントだ。
1年前から入念に準備されたという、このグランドツアー。ファッションの街ミラノをスタートし、リグリア~ティレニア海側を南下、首都ローマを折り返して、今度は内陸を北上し、途中ミッレミリアルートなどを楽しみながら、生まれ故郷ボローニャに戻るという、5日間(移動は実質3日間)総計1200kmの“猛牛旅行”。
ランボルギーニオーナーが愛車でイタリア巡りを楽しみ、“里帰り”も果たすという企画がウケたのか、世界中から応募が殺到し、途中参加も含め、最終的に29カ国、350台700名の参加者が集まった。距離にして実に4km、総排気量は19万cc、という猛牛軍団がイタリアを走り回るのだから、壮大なスケールだ。
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ちなみに、一般参加の320台のうち、最も多かったのはイギリス(道理で右ハンをよくみかけた)。次にイタリア、ドイツ、スイスで、日本はアメリカ、中国に次いで7番目の11台(拍手! 正規参加したこの11台はランボオーナーの鑑<かがみ>です)。
車種で言うと、「350GT」から「ミウラ」、「クンタッチ(カウンタック)」、そして「アヴェンタドール」まで、50年の歴史がほぼすべて出そろっていた。つまり、歴史をすべて見ることができたというわけだ。最も多かったのは、もちろん、猛牛史上最多生産台数を誇るガヤルドで、およそ3分の1の123台だった。
5月8日-“青バイ”に導かれてミラノを後に
初日。ホテルで朝食を取っていたら、偶然にもランボルギーニのステファン・ヴィンケルマン社長兼CEOがやってきた。「おめでとう!」と手をさしのべてみれば、彼は破顔一笑、力強く握手をかえしつつ、こう言った。
「50年前のまさに今日、フェルッチョは会社を登記したんだよ」
その日、5月7日はグランドツアー参加者のレジスターに充てられた。スタート地点となるミラノ・カステッロ広場のまわりはパルクフェルメ(車両保管所)として半ば封鎖され、レイジングブルのパドックと化していた。もしくは、スフォルツェスコ城を背景に、咲き乱れる凶暴な華々、か。いずれにせよ、赤く染まるだけのマラネッロ産よりも、はるかににぎにぎしいのは確かだろう。
5日間のわがパートナーは、ガヤルドLP550-2の、なんとマニュアルトランスミッション仕様。シンガポールのジャーナリストで旧知のアンディ・ラムと一緒に、駆ることとあいなった。
翌8日、10時。ヴィンケルマン社長と、同社のR&D部門の責任者であるマウリツィオ・レジアーニをのせたゼッケン001、パールホワイトの「アヴェンタドール ロードスター」がスタートする。
続いて、若い番号から順に、そう、1960年代の名車たち、「400GT」やミウラ、「イオタ」クローンなどが、白バイならぬ青バイに導かれ、続々とスタート。このシーンを見ることができただけでも来たかいがあったというもんだなぁ……、なんてノンキにつぶやけたのも、ボクらのゼッケンが223番だったからだ。
20~30秒に1台がスタートするとして、回ってくるまで1時間以上かかる計算。というわけで、名車たちのスタートをじっくり見学ののち、200番台がいよいよエンジンを吹かしはじめるのを確認して、ボクらも白いガヤルドに乗り込んだ。(後編へ続く)
(文=西川 淳/写真=ランボルギーニ)

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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