第852回:『風雲! たけし城』みたいなクロカン競技 「ディフェンダートロフィー」の日本予選をリポート
2025.11.18 エディターから一言精神と肉体の強さも問われるミッション
ランドローバーのクロカン「ディフェンダー」の名を冠したアドベンチャーコンペティション「DEFENDER TROPHY(ディフェンダートロフィー)」の日本予選会が、2025年11月8日~9日の2日間、山梨県の富士ケ嶺オフロードにて開催された。
英国伝統のSUVブランドとして知られるランドローバーだが、近年はブランドを「レンジローバー」「ディスカバリー」「ディフェンダー」の3本柱とし、それぞれの特徴的な商品力を強化するだけでなく、その魅力を伝える新たな取り組みも始まっている。今回のディフェンダートロフィーは、ディフェンダーブランドの世界観から生まれた新たな冒険的競技会なのだ。
ランドローバーといえば、1980年から2000年まで開催された自然環境のなかでさまざまな課題をクリアしていくレース「キャメルトロフィー」が有名だが、ディフェンダートロフィーは、ディフェンダーを手がけるチームが、ランドローバーが携わった過去の競技をヒントとしながら、新たに考案したもの。過酷な環境下でディフェンダーを駆って挑む競技だが、より精神的かつ肉体的なミッションに重点を置いているのが特徴だ。
決勝となる本選は、2026年秋にアフリカの某所で開催され、ディフェンダーと縁のある世界70以上の国と地域の予選会を勝ち抜いた33人のファイナリストによって競われる。その日本代表を決めるのが、今回の予選会である。会場には、ハードなオフロード走行が楽しめる富士ケ嶺オフロードが選ばれた。
想像以上に過酷な競技内容
予選会には、日本全国から手を挙げた100人以上の冒険者から、1次予選となる書類選考を経て選ばれた24人の男女が参加。初対面の3人がチームを組み、さまざまな課題をクリアすることで順位を争う。ただし、日本からファイナリストに選ばれるのは、たった1人のみ。そのため、チーム内でのリーダーシップやメンバーへの気づかいなどの人間力も評価の対象となるという。初日こそ天候に恵まれたものの、2日目は雨天となり、時折強い雨が降る厳しい環境下でのレースとなった。
選手に課されたミッションは、2日間で10を超える。紙地図で指定されたルートを走行する夜間ドライブ、電動ウインチを用いた丸太運び、急斜面を含む本格オフロード走行など、最新のディフェンダーを使用したミッションはもちろんのこと、自身の体力を問われるものも多い。例えば、ディフェンダーの走行を可能とするべく、幅の狭い丸太橋を別の丸太とロープで補強するミッションでは、太い丸太を橋にかかるように運び、しっかりとロープで固定しなければならない。安全のため、競技内で教わった指定方法でロープを結ばなくてはならないので、体力とともに記憶力も試される。もちろん、時間が限られているので、スムーズかつ冷静な行動が求められる。その橋のシーンでは、橋の途中が川という設定なのに、川の上に立ってロープを結ぼうとする選手も……。それだけ慌ててしまうということだが、その姿に気づいたほかの参加者が優しく注意するという場面も見られた。またウインチを使うシーンでは、操作する人を含め、全体の安全を気づかうことも重要だ。
審査員は、全体のミッションだけでなく、注意する人とされた人の行動もチェックしている。だからこそ、一瞬も気が抜けないのだ。観覧者として最もハードに映ったのは、「フィットネス」と呼ばれる体力競技だ。デコボコの未舗装路をジョギングしたうえで、重いボールのリフトアップを30回、縄跳びを30回こなし、滑車とロープで結ばれた70㎏の砂袋を引き上げるヘビーリフトなども課される。内容は男女とも共通。自然の前に体格差は関係ないというわけだ。驚くべきは、その体力勝負に挑む全員が笑顔だったこと。いや、半分はつらすぎて笑っちゃうなんていう気持ちだったかもしれない。そんなミッションをクリアしつつ、初日は、富士ケ嶺オフロード内に設置されたキャンプ用テントに宿泊。ただし、入浴は会場近くの温泉施設を利用。温泉は彼らの最大の癒やしだったことだろう。
この予選会は、なんと日本が世界初開催。そのため、英国の大会運営チームも来日していた。会場施設の充実ぶりから、その場で競技内容の一部を変更するなどドタバタな雰囲気もあったものの、24人の参加者は誰一人欠けることなく、競技は無事終了。すべての難題をクリアした参加者に拍手を送りたいと思う。
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アフリカ行きの切符を手にしたのは?
ファイナリストに選ばれたのは、48歳の今村直樹さん。普段から船による海峡横断レースなどに挑戦するアスリートの顔を持つ人物だ。競技中はチームメンバーに的確なアドバイスを送りつつ、ムードメーカーとしても活躍しており、筆者もリーダーのお手本のような方だなと感じていたので、選考結果にも納得。ただ今村さんは、自身が選ばれたことには驚いた様子。ウイナーとしてコメントを求められると「9歳ごろに見た黄色のSUVにずっと憧れていましたが、あきらめなければ願いはかなうと実感。来年アフリカに挑めることはうれしいですし、2日間をともにしてきた皆さんの思いも乗せて頑張ってきます」と少年のようにキラキラした笑顔で語ってくれた。
この日本大会を皮切りに世界各地でも予選会が開催され、新たな仲間(とライバルの候補)が決定される。アフリカでの決勝大会は2人一組のチーム戦となるが、評価は個人ごとだという。ミッションの詳細は非公表だが、ハードなオフロードに挑む「ドライビングチャレンジ」、迅速な判断力やスマートな行動力などが評価される「イノベーションチャレンジ」、体力やチームワークなどが試される「フィジカルチャレンジ」の3つで構成され、その様子はオンライン配信されるという。優勝者にはディフェンダーの自然保護パートナーである団体「Tusk(タスク)」とともに、独自のミッションに携わることで、未来にレガシーを残すチャンスが与えられる。ぜひ、アフリカの地でも、喜びに満ちた笑顔で最後のミッションに挑む今村さんの笑顔を見たいものである。
取材後、担当編集者にハードな予選の模様を伝えると、「まるで『風雲! たけし城』ですね」とお気楽なコメント。ただ、お笑い要素はゼロだが、難題に笑顔で挑むマインドは、かつて番組内で無残に散っていった挑戦者の姿とも重なるかもしれない。いや、あれほどの無理難題を笑顔で楽しめる人間力を、私も見習いたい。国内予選会に挑まれた皆さん、本当にお疲れさまでした。
(文=大音安弘/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン、大音安弘/編集=藤沢 勝)

大音 安弘
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