第2戦マレーシアGP「大本命による2連勝」【F1 2014 続報】
2014.03.31 自動車ニュース ![]() |
【F1 2014 続報】第2戦マレーシアGP「大本命による2連勝」
2014年3月30日、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第2戦マレーシアGP。開幕戦を制したメルセデスの快進撃はここでも続き、前戦でリタイアを喫したルイス・ハミルトンがマレーシア初優勝。オーストラリアGPウィナーのニコ・ロズベルグは2位で、シルバーアローは今季2戦目にして1-2フィニッシュを達成した。
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■開幕戦、リカルドのレッドブルに何が起こったのか
「1.6リッターV6ターボ+ERS」という新しいパワーユニットを得て生まれ変わった新生F1は、優勝最有力候補のメルセデスを駆るニコ・ロズベルグが圧勝して開幕。一方で地元オーストラリアで自身初の表彰台となる2位でチェッカードフラッグを受けたレッドブルのダニエル・リカルドは、その数時間後にレギュレーション違反が発覚し失格の憂き目にあった。メルボルンでチャンピオンチームに何が起きたのか?
今年のルール改変の眼目はF1のグリーン化。エンジンをダウンサイジングしてターボを組み合わせるという市販車でも見られる潮流に乗り、運動に加え熱エネルギーからも回生するERSを新採用した。社会的にも興行的にも、環境に配慮しないわけにはいかない時代なのだ。
その新レギュレーションのなかには、いわゆる燃料規制も含まれる。レース中は100kgの燃料で走り切らなければならず、さらに、その燃料流入量にも最大毎時100kgという制限が設けられた。リカルドの2位剝奪の理由は、この燃料流入量がオーバーしていたことにある。
この流入をコントロールするため、各マシンにはFIA(国際自動車連盟)が指定するセンサーを取り付けなければならないのだが、このセンサーが冬のテスト中から安定して機能しないことは、各陣営はもちろんFIAも把握していたという。
開幕戦の初日、リカルド車のセンサーに異常が起き、翌土曜日には別のセンサーが使われた。これに対しFIAは、最初のセンサーに戻すよう指示したが、レッドブルはこのリクエストを無視。さらにFIAは、レース中、独自の計算からリカルドのマシンは流入がオーバーしているとし、チームに調整するよう警告したが、レッドブルはこれにも従わなかった。結果、リカルドの好走と2位は台無しになってしまった。
この失格を受け、レッドブルはすぐさま不服を申し立てた。チャンピオンチームの言い分は、「FIA指定センサーは正しく働いていない」「チームの計算では規定を超えていない」というもの。FIAは事前に、チーム独自のデータを認める場合の条件を示しているが、レッドブルは、この条件付け自体はレギュレーションではないということで規制力はないとしている。
あまりにも大きな変革の真っただ中にあるF1にあって、初期にこのような“不完全さ”が出てくることはある程度しかたがないのかもしれない。しかしレッドブルの主張が受け入れられてしまうと、ルールは効力そのものを失いかねないという状況もある。
一連のレッドブルの言動は、王者としての自負の表れなのか、あるいはおごりなのか。このケースは、第3戦バーレーンGP後の4月14日に審議される予定だ。
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■ハミルトン2戦連続ポール、2位は雨を味方につけた……
開幕戦のメルボルンがストップ・ゴーの特設コースだったのに対し、マレーシアのセパンは、2本の長い直線と、高速から低速までのコーナーをそろえたパーマネントサーキット。高温多湿、毎日のスコールという気候も、ここの特徴である。
金曜、土曜の3回のフリー走行では、やはりメルセデスの2人がトップタイムをマーク。予選目前の3回目は初戦のウィナー、ニコ・ロズベルグ1位、惜しくもリタイアに終わっていたルイス・ハミルトン2位で上位を独占した。
そして迎えた予選は、しの突く雨に見舞われ50分遅れで始まった。トップ10グリッドを決めるQ3も路面状況は芳しくなく、各車タイムアップがなかなか果たせない。そんななか、最初のアタックで最速だったハミルトンが2戦連続のポールポジションを獲得。自身通算33回目は、往年の名ドライバーであるジム・クラーク、アラン・プロストに並ぶ歴代4位タイの記録となった。
オーストラリアGPと同じレッドブルが予選2位に入ったが、今回はセバスチャン・ベッテルがフロントローにつけた。ドライなら劣勢のレッドブルだが、雨が味方をしてくれた格好だ。同じく雨に救われたのがフェラーリのフェルナンド・アロンソで4番グリッド。アロンソはQ2で接触事故を起こしマシンを壊していたが大事には至らず、何かと運に恵まれた。逆にロズベルグは、最速マシンながらうまくタイムをまとめ切れず3番グリッドだった。
レッドブルのリカルドは予選5位、その後ろにキミ・ライコネンのフェラーリ、ニコ・ヒュルケンベルグのフォースインディア、ルーキーながら開幕戦2位と健闘したケビン・マグヌッセンのマクラーレン、ジャン=エリック・ベルニュのトロロッソが続き、ジェンソン・バトンのマクラーレンが10番グリッドに収まった。
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■スタートからメルセデス1-2、追うレッドブル勢
気温32度、路面温度51度。コンディションはドライだが雨の可能性も常にあり得る、いつものマレーシアGPが幕を開けた。
スタートでトップを守ったハミルトンに続くのはロズベルグ。右、左と連続する、セパンの特徴的なターン1-2ではベッテルが食い下がりメルセデスに並びかけるが、チャンピオンはチームメイトにすきを突かれ順位を落とした。オープニングラップは、1位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位リカルド、4位ベッテルと、メルセデスとレッドブルがきれいに分かれたが、両陣営の力量の差は歴然としていた。
ハミルトンは16周目の最初のピットインまでに2位ロズベルグに対し6秒強、その後56周レースの半分の時点で10秒までリードを広げてしまう。2008年チャンピオンが僚友を従えてレースの主導権を握ったとなれば、チームがあえて危険をおかす必要はない。1-2フォーメーションのまま、メルセデスはエンジンをセーブする作戦をとった。
2台のメルセデスを追うレッドブル勢は、コース上の速さでかなわないとなればピット戦略で何とかチャンスを作るしかなかった。4周目にリカルドから3位の座を奪ったベッテルは、32周目、2度目のピットストップをロズベルグに先んじて行った。
これに反応して翌周には開幕戦ウィナーもタイヤ交換に踏み切るのだが、4秒以上あったギャップはこれを機に一気に縮まり、ベッテルはDRSを使うことができる1秒以下までロズベルグを追いつめた。だが王者の挑戦はここまで。最終的にロズベルグは7.2秒もベッテルを突き放し、2位でチェッカードフラッグを受けるのだった。
冬のテストでの苦戦からすれば、レッドブルの3位は上出来。たとえトップのハミルトンには24.5秒もの大差をつけられようとも、レース後のベッテルの表情は晴れやかだった。
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■リカルドの不運
今季初ポディウムに喜ぶチームメイトの陰では、リカルドがオーストラリアに続きまたも不運に見舞われていた。
4位をキープしていたリカルドは、41周目のタイヤ交換で左フロントタイヤが締め切らないままピットレーンに出てしまう。クルーに引き戻されて作業をやり直し、14位まで後退した彼は、縁石でフロントウイングを壊し再びピットへ。さらに今度は危険な状態でピットアウトさせたことによる10秒のストップ/ゴーペナルティーが課されてしまう。上位を望めないリカルドは残り5周となった時点でパワーユニットをセーブするためリタイア。そしてレース後には、次戦バーレーンGPでの10グリッド降格というオマケまでついてしまった……。
リカルドのトラブルに乗じて4位に上がったのがヒュルケンベルグ。他車より少ないミニマムの2ストップで走り切ろうとしたが、終盤フレッシュなタイヤを履くアロンソを抑え切る力はなかった。アロンソにとっては2戦連続の4位となるが、スクーデリアの新型「T14 T」の戦闘力は今のところ高いとはいえない。
序盤2戦で大本命メルセデスが2連勝。大方の予想に反してレッドブルが善戦しているものの、リカルドの失格問題もあり、ポイントではマクラーレンやフェラーリ、好調ウィリアムズやフォースインディアにも先を越されている。王者復権の秘策はあるのか? シルバーアローの独走に“待った”をかけるチームは現れるのか?
次戦は1週間後の4月6日に開催されるバーレーンGPだ。
(文=bg)