ダイハツ・コペン ローブS(FF/CVT)
カタすぎて、タカすぎて 2015.04.06 試乗記 ダイハツの2シーターオープンカー「コペン ローブ」に、レカロシートやビルシュタインダンパーを装着したスポーティーグレード「コペン ローブS」が追加された。その走りは? 乗り心地は? 市街地からワインディングロードまで、さまざまなシーンで確かめた。欧州の香りがただよう
昨年12月、コペン ローブに加わった上級モデルが「S」である。今回乗ったCVT付きだと199万8000円。標準モデル(179万8200円)との約20万円差は、ビルシュタインダンパー、レカロシート、MOMOの革巻きステアリングなどを装備すること。軽にあるまじき(?)リトラクタブルルーフを備え、もともと高付加価値なコペンの、さらなるプレミアムスポーツバージョンといえる。
加えて試乗車はS専用のBBSホイール(19万8720円)のほか、カーナビやオーディオなどオプション満載で総額250万円近くになっていた。
新型コペンに接してみると、最近のヨーロッパ車をよく研究したあとがうかがえる。
その最たるものは“アストンマセラティ”みたいなフロントマスクだが、硬いメタルフレームに樹脂パネルの外板といえば、スマートをほうふつさせるし、シート地を含む標準の内装色がブラウンという押しの強さも、ヨーロッパ車的だ。レカロシートのSでもそこは変わらず、黒のレカロは3万2400円のオプションになる。
峠の走りは規格外
好きなクルマは、乗った途端から好きである。試乗し終えて3日目の晩から好きになるようなことは、筆者の場合ない。
去年の夏、初めて乗った新型コペンは、乗った途端、好きになったクルマである。今度のSはどうかというと、第一印象は「かたッ!」だった。
もともとコペンの足まわりは、ひと昔前のBMWの「Mスポーツ」のように硬いが、ビルシュタインダンパーがおごられたSはそのノーマル足に輪をかけて硬い。
Dフレームと呼ばれるモノコックがよくできているので、ボディーをきしませるような不愉快な硬さでないことはSも同じだが、硬いことは硬い。低速でも、スピードを上げても硬い。
ビルシュタインダンパー装着で操縦性がどう変わったかを見極めるほどの眼力は筆者にはないが、ワインディングロードでのスタビリティーと楽しさは相変わらずだ。足もステアリングもブレーキもフトコロが深く、いくら大入力を与えても、軽のイッパイイッパイな感じがしない。運転の操作フィールにもフニャッとした頼りなさは一切ない。唯一の欠点は、ちょっとスピードを出すと、カーナビのカノジョがすぐ「速度に注意してください」と小言を言うことくらいである。
CVT車もあなどれない
Sでも、エンジンや変速機に変更はない。昨年夏の登場以来、新型コペンは販売の8割がCVT車だという。CVTのほうがわずかに安く、JC08モード燃費もよく、エコカー減税のクラスも上となれば、経済観念の発達した軽ユーザーとしては当然の選択かもしれない。
個人的には、シフトがカシカシ気持ちよくキマり、フライホイールの軽量化までやっていただいた5段MTを取るが、今回あらためて乗ってみると、CVTもスポーティーさでは遜色ないと感じた。
MTモードだと7段のステップがきられ、フロアセレクターでもステアリングホイール裏のパドルでも、変速は素早く小気味よい。高回転を多用しながらフルオープンでワインディングロードを走ると、CVTの発する音がカッコイイ。WRCカーの車内動画で聴くような金属音である。
ひとつ気になるのは、アイドリングストップからのリスタートにちょっと手間取ること。セルモーターで再始動するのだからやむを得ないが、そのあとの加速が素早いだけに残念である。なお、MTにアイドリングストップ機構は付いていない。
悩ましいプレミアム軽
Sの車重は標準ローブと変わらず、CVT付きで870kg。MTより20kg重くなるのも同じである。
ミドシップ2座タルガトップの「ホンダS660」はコペンより20kg軽い。業界自主規制マックスの64psは同じだが、軽最強をうたう最大トルク(10.6kgm)はコペンの9.4kgmに差をつける。
S660にはまだサーキットでしか乗ったことがないので、公平な比較はできないが、これだけ見た目が違うと、比べて悩む人はそういないような気がする。しかし、価格表をみると、標準ローブより20万円高いローブSは、まるでS660(198万円~)対策モデルのように見える。
繰り返すと、ローブSの乗り心地はそうとう硬い。ビルシュタインのおかげで、タウンスピードでの硬さのカドが若干まるくなったような気もするが、硬いことは硬い。ノーマルだって硬いのだから、標準ローブで十分だなあと個人的には思った。
コペン ローブSやS660が出て、軽自動車もついに200万円カーの時代になった。どちらも、クルマ離れする若年層へのアピールが期待される軽スポーツカーだが、実際のところこの値段だと財布の軽い若者には敷居が高すぎる。プレミアムもいいが、徹底的に装備を簡略化した学生割引バージョンもあるといいのにと思う。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=高橋信宏)
テスト車のデータ
ダイハツ・コペン ローブS
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1280mm
ホイールベース:2230mm
車重:870kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64ps(47kW)/6400rpm
最大トルク:9.4kgm(92Nm)/3200rpm
タイヤ:(前)165/50R16 75V/(後)165/50R16 75V(ブリヂストン・ポテンザRE050A)
燃費:25.2km/リッター(JC08モード)
価格:199万8000円/テスト車=248万7564円
オプション装備:クリアブルークリスタルメタリック塗装(2万1600円)/純正ナビ&オーディオ装着用アップグレードパック<取り付け費込み>(1万6200円)/BBS製鍛造16インチアルミホイール<コペン専用デザイン>(19万8720円) ※以下、販売店装着オプション ETC車載器<取り付け費込み>(1万7280円)/カーペットマット<高機能タイプ>(1万7993円)/ワイド ダイヤトーンサウンドメモリーナビ<取り付け費込み>&ダイヤトーンプレミアムサウンドプラン(21万7771円)
テスト車の年式:2015年型
テスト開始時の走行距離:1121km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:232.8km
使用燃料:16.1リッター
参考燃費:14.5km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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