第5戦スペインGP「ロズベルグ、起死回生の勝利」【F1 2015 続報】
2015.05.11 自動車ニュース ![]() |
【F1 2015 続報】第5戦スペインGP「ロズベルグ、起死回生の勝利」
2015年5月10日、スペインのサーキット・デ・カタルーニャで行われたF1世界選手権第5戦スペインGP。ここまでの4戦で3勝し、チャンピオンシップをリードしてきたルイス・ハミルトンに待ったをかけたのは、フェラーリ&セバスチャン・ベッテルではなく、ハミルトンのチームメイトであり宿敵でもあるニコ・ロズベルグだった。
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■「第2の開幕戦」で波に乗れ
スポーツのような勝負事には、“波に乗れるか、はたまた飲まれるか”という側面がある。
今季序盤の4戦でしっかりと波に乗ったのは、前年王者メルセデスのルイス・ハミルトン。3勝+2位で100点満点中93点を獲得し、最大のライバルと目されドライバーズランキング2位につけるチームメイト、ニコ・ロズベルグを27点も突き放した。
ハミルトンがこの“波”をつかんだのは、ロズベルグと接触した2014年シーズンの第12戦ベルギーGPの後から。次の第13戦イタリアGPから今年の第4戦バーレーンGPまでの11戦で、ハミルトンは実に9勝を記録しており、残る2戦でも2位入賞とほぼパーフェクトな戦績を積み重ねてきた。
このハミルトンの波にすっかり飲まれてしまっていたのがロズベルグ。昨季、19戦で最多11回のポールポジションを獲得した彼は、今年に入り、得意としていた予選でも、そしてレースでもことごとくチームメイトにお株を奪われっぱなしだった。
一方で波に乗りかけていそうなのが、ロズベルグの1点ビハインドでランキング3位につけていたフェラーリのセバスチャン・ベッテル。レッドブルで未勝利に終わった昨年から一転、フェラーリ移籍後2戦目にして早くも1勝目を勝ち取った。フェラーリは速さではメルセデスに追いつけないでいるが、タイヤとのマッチングに優れた「SF15-T」が競争力をあげてくれば、ドイツの常勝軍団にまた一泡吹かせることができるかもしれないのだ。
オーストラリア、マレーシア、中国、バーレーンと慌ただしい遠征をこなしてきたF1は、ホームのヨーロッパに戻ってきた。欧州初戦のスペインGPは、各陣営がマシンやエンジンに大小さまざまな改善を施してくる“第2の開幕戦”のようなもので、すなわち本格的な開発競争の幕開けとなるレースともいえる。
マシンの実力が試されるバルセロナのコースは、残り15戦の行方を占う“リトマス試験紙”。これからどのチームの、どのドライバーが波に乗れるのか、あるいは飲まれるのかが見えてくる、重要な一戦が始まった。
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■ロズベルグ、会心の一発で今季初ポールポジション
今年やられっぱなしのロズベルグにとってはまさに会心の一発だった。トップ10グリッドを決める予選Q3、最初のアタックでロズベルグは宿敵ハミルトンに対し0.267秒の差をつけた。結局、2度目の計測では2人ともタイムアップを果たせず、ロズベルグは待望の今シーズン初ポールポジションを決めた。
連続ポールを4で止められたハミルトンは、予選直前のフリー走行中にスピンするなど、マシンのセットアップで帳尻を合わせることができなかった。メルセデスのフロントロー・ロックアウトは今年3回目となる。
予選3番手はフェラーリのベッテルだったが、ポールタイムからは0.777秒の開きがあり、メルセデスとの力量の差がはっきりと出た。同じフェラーリのキミ・ライコネンはQ3でタイヤを1セットしか残せず7位に沈んだ。
ウィリアムズのバルテリ・ボッタスが今季最高位の4番グリッドを獲得。その後ろにはこの週末調子のいいトロロッソ勢が連なり、地元で奮起したルーキー、カルロス・サインツJr.が5位、マックス・フェルスタッペンは6位と好位置につけた。本来“Bチーム“のトロロッソの上にいなければならない“本家”レッドブルはダニール・クビアト8位、ダニエル・リカルド10位。フェリッペ・マッサのウィリアムズが9番グリッドに割って入った。
マクラーレンは今年初めて2台そろってQ2進出を決め、フェルナンド・アロンソが13位、ジェンソン・バトンは14位からレースに臨んだ。
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■理想的なレース展開
今年で25回目を迎えたカタルーニャでのF1。このコースは前車を抜きにくいという特性があり、過去10年のポールポジションからの勝率は8割というデータがロズベルグ有利を物語っていた。そして実際、スタートを成功させた彼はその後のレースを支配したのだった。
ハードとミディアムのタイヤのうち、全20台がミディアムを履いて66周のレースがスタート。ロズベルグが蹴り出しよくトップでターン1へ。ベッテルが2位に上がり、ホイールをスピンさせたハミルトンは3位転落、ボッタス4位、ライコネンは新人ぞろいのトロロッソ勢を抜いて5位までジャンプアップを果たした。
1位ロズベルグはオープニングラップから後続のベッテルにDRSを使わせない1秒以上のギャップを築き、10周もするとこの間隔は7秒まで拡大。その間3位ハミルトンはベッテルのテールに食らいつきプレッシャーをかけ続けたが、なかなか抜けないでいた。
14周目、3位ハミルトンが最初にピットに飛び込み新しいミディアムを選択。翌周にはベッテル、続いてトップのロズベルグもタイヤをミディアムに変えたが、トップ3台のオーダーは不変だった。第2スティントでミディアムではなくハードを選んだのはライコネン。フェラーリはまたしても2台で異なる作戦を取り、上位を狙おうとしていた。
20周を過ぎ、再び2位ベッテルと3位ハミルトンが接近。しかしメルセデスはDRSを使ってもフェラーリをかわすことができない。6秒先行する首位ロズベルグにとっては、後ろ2台が攻防を繰り返してくれる間にレースをコントロールできる理想的な展開となった。
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■ハミルトン、3ストップ作戦を成功させ2位に
事態を打開すべく、またハミルトンが先んじて動いた。32周を終え2度目のタイヤ交換に踏み切り、今度はハードを装着してコースに戻ると猛追を開始。彼は3ストップ作戦に切り替え、このフレッシュなタイヤのポテンシャルを遠慮なく使い切ることにしたのだった。
一方、2位ベッテルは40周過ぎに2度目にして最後のピットストップを行いミディアムからハードに、5位ライコネンは41周目にハードからミディアムにスイッチ。1位ロズベルグは45周でハードに履き替え、上位陣はハミルトンを除き最後のスティントへと旅立っていった。
51周目、暫定首位のハミルトンが3度目のタイヤ交換を済ませると、ベッテルの前で復帰。終盤にきてようやくメルセデスは1-2フォーメーションに戻すことができた。
ロズベルグは2位ハミルトンに17秒ものマージンを築いての圧勝。流れを自らに引き寄せる起死回生の勝利で、27点あったポイント差も20点に縮めることができた。
そして次は、2年連続でポール・トゥ・ウィンを飾っているモナコ。ロズベルグの反撃の舞台は整いつつある。
62回目のF1モナコGP、決勝は5月24日に行われる。
(文=bg)