第14戦シンガポールGP「タイトルまであと1点」【F1 2011 続報】
2011.09.26 自動車ニュース【F1 2011 続報】第14戦シンガポールGP「タイトルまであと1点」
2011年9月25日、シンガポールのマリーナ・ベイ市街地コースで行われたF1世界選手権第14戦シンガポールGP。セバスチャン・ベッテルの2年連続タイトルはおあずけとなったが、今年多くのレースでみられた完璧なスタイルで優勝した。数々の最年少記録を打ち立ててきた24歳のドイツ人ドライバーが、最年少の2年連続チャンピオンとなるためには、あと1点とればいい。
■ベッテル、タイトル決定の可能性
前戦イタリアGPで今季8度目の勝利を得たことで、セバスチャン・ベッテルは、いくつかの条件付きながらここシンガポールでタイトルを決定できるところまで早くも到達してしまった。
シンガポールを含めた残り6戦で獲得できる最大ポイント数は150点満点。今年で4回目となるマリーナ・ベイでのナイトレースを前にした、数字上チャンピオンの可能性がある5人のポジションは以下の通りだ(カッコ内はトップとのポイント差)。
1位 セバスチャン・ベッテル 284点
2位 フェルナンド・アロンソ 172点(−112点)
3位 ジェンソン・バトン 167点(−117点)
4位 マーク・ウェバー 167点(−117点)
5位 ルイス・ハミルトン 158点(−126点)
ベッテルの2連覇は、自分が優勝し、アロンソが表彰台圏外でフィニッシュ、さらにウェバーとバトンが2位に入らなければ達成される。
また優勝ならずとも2位に終わり、アロンソが7位より下でゴール、かつウェバーとバトンがポディウムにあがらず、ハミルトンが1位でチェッカードフラッグを受けなければ戴冠となるなど、他力本願な部分が多いのは事実だった。
とはいえ、ベッテルにしろ彼がドライブするレッドブルにしろ、昨年に続き再び世界の頂点に立つことは時間の問題といっていい。今季終盤の注目は、ランキング2位の座を誰が取るのかに移っているのだが、何ともいえない味気のなさは当のドライバーたちも感じているようで、マクラーレンのバトン、ハミルトンは「2位争いには意味がない」とコメントしていた。
仮にシーズンのランナーアップ(2位)には意味がないとしても、レースの勝利には十分な価値がある。1戦1戦の勝敗にフォーカスしたい、という観るものとしてのすがるような期待感は、しかし14戦目にして11回目のポールポジションをベッテルがやすやすと獲得、レッドブルが最前列を独占してしまったことで、早くもくじかれそうになった。
■ポールポジション、スタート先行、そして逃げ切り
2年連続でチャンピオンになれるかもしれないというレースで、ベッテルは終始落ち着いていた。予選Q1、Q2、Q3いずれもトップタイムを計時。スタートでは迷いなく真っすぐ進路を取り、1コーナーへと飛び込んでいった。
予選3位のバトンが2位にあがりベッテルを追ったが、ベッテルのリードタイムはオープニングラップで2.5秒もあり、既に後続車がDRSを作動できる1秒内から脱していた。その後は、2周で3.5秒、3周で4.4秒とおよそ1秒ずつライバルを引き離し、9周時点では10秒以上の先行に成功していた。今年何度も見られた、ベッテルの必勝パターンだ。
レースの折り返し地点、ミハエル・シューマッハーとセルジオ・ペレスの接触によりセーフティーカーが出動した。せっかく貯金したおよそ20秒のリードタイムが消えてしまったが、それでもベッテルは再スタート後の1周で2位バトンより5秒も速く、僅か5kmの距離で8.9秒もギャップを築いてしまったのだ。
■各所で見られた「2011年のパターン」
予選2番手、もういっぽうのレッドブルをドライブするウェバーは、ここ数戦で何度も見られた、出だしでのつまずきを今回も繰り返してしまった。チームメイトと対照的な鈍足のレッドブルは、その背後から隙を突こうとしていた4番グリッドのハミルトンを道連れに順位を落とし、ウェバーは4位、ハミルトンに至っては8位からレースを組み立てなければならなくなった。
本来ならハイペースで飛ばし、優勝争いにも加われるはずのドライバーが余計な順位争いをしいられるようになり、その間ベッテルはやすやすとトップを周回できる、という流れもすっかり今年おなじみとなってしまった。ウェバーは、結果的にアロンソを抜き3位の座を射止めるのだが、今季まだ未勝利である原因は、特にスタートで頻発する自らのミス(と、彼に責任はないマシントラブル)の多さにあるといってもいいだろう。
加えて、予選順位やスタートがいま一歩でも、レース終盤の目覚ましい追い上げで惜しいポジションまで挽回(ばんかい)するバトン、という光景も2011年シーズンにはよく見られた。バトンは序盤に燃費を気にしながらの走行を余儀なくされベッテルに逃げられたが、終盤には13秒あったタイム差を最終的に1.7秒まで縮め、僅かながらレースを盛り上げてくれた。
他車との接触などで自滅してしまうハミルトン、という展開も同様によくあったが、今回も例外ではなかった。ハミルトンは、予選中コース上でニアミスしたマッサと今度は接触してしまい、マクラーレンはフロントウイングを壊し、フェラーリはパンクに見舞われた。このコンタクトの責任をとるかたちでドライブスルーペナルティを受け16位まで後退するが、ここからごぼう抜きを披露し5位入賞。このエンターテインメント性に富んだ走りも2011年のパターンといえるだろう。
■パーフェクト・イヤー
ライバルのドライバーでさえ口をそろえて言うとおり、今年のベッテルは、ほぼ完璧で非の打ち所がない。ミスらしいミスは、最終ラップで猛追するバトンに屈しコースオフ、2位に終わった第7戦カナダGPぐらいだろう。
14戦を終え、ポールポジション11回、フロントロー13回、優勝9回、表彰台13回、リタイアなし、レースでのワーストリザルトは第10戦ドイツGPの4位、ワーストグリッドはやはりドイツでの3位……。これをパーフェクトといわずしてどう表現したらいいのだろうか?
残り5戦、ベッテルのポイント数は309点となった。ランキング2位のバトンははるかかなたの124点後方で、さらにその後ろにはアロンソ、ウェバー、ハミルトンが僅差で固まっている。
ベッテルの戴冠に待ったをかけている唯一のドライバー、バトンは、最後の5戦すべてで優勝し、ベッテルがすべてで無得点にならないとチャンピオンにはなれない。それはすなわち、最年少2連覇チャンピオンの誕生が確実であることを意味している。
次はいよいよ鈴鹿サーキットでの日本GP。昨年、ベッテルが完勝したことはまだ記憶に新しい。決勝は10月9日に行われる。
(文=bg)
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