【東京オートサロン2019】受け継がれる日本独自のカスタム文化

2019.01.13 自動車ニュース 沼田 亨
NATS 日本自動車大学校の「NATS Coastline」。ベースは「トヨタ・プロボックス」。
NATS 日本自動車大学校の「NATS Coastline」。ベースは「トヨタ・プロボックス」。拡大

東京オートサロンの花形といえば、やはり迫力のチューニングカーやドレスアップカー。今年はどんなクルマが人気を博し、どんなトレンドが見受けられたのか。見逃せない存在となりつつあるタイヤメーカーの出展内容と併せ、会場からリポートする。

VR38DETTエンジンの排気量を4.2リッターに拡大、最高出力1531.8psを記録したというジュンオートメカニックの「日産GT-R」(R35)。
VR38DETTエンジンの排気量を4.2リッターに拡大、最高出力1531.8psを記録したというジュンオートメカニックの「日産GT-R」(R35)。拡大
コンパニオンに負けず、まだまだイケてるトップシークレットの「日産スカイラインGT-R」(R32)。
コンパニオンに負けず、まだまだイケてるトップシークレットの「日産スカイラインGT-R」(R32)。拡大
魔改造され、谷口信輝選手のドライブで筑波サーキットで57秒480を記録したHKSの「TRB-04」(スズキ・スイフトスポーツ)。
魔改造され、谷口信輝選手のドライブで筑波サーキットで57秒480を記録したHKSの「TRB-04」(スズキ・スイフトスポーツ)。拡大

勢いを失う現行モデルと、いまだ健在の定番モデル

東京オートサロンの、本来の主流だったチューニングカー。ベースカーのリーダー的存在である「日産GT-R」(R35)も、今回で12回目のオートサロン開催を迎えた。パフォーマンスでは依然として他の追随を許さないものの、さすがに出展台数は少なくなったようだ。「日産シルビア」(S15)などが生産終了して以降、長らく続いた手ごろなFRのベースカー不在の時期を経て2012年に登場した「トヨタ86/スバルBRZ」も、すでに7回目。こちらもここにきて、さすがに勢いは鈍化したように思える。

そのいっぽうで、R32やR34の「日産スカイラインGT-R」などは、絶対数こそ多くはないものの、いまだ存在感を放っている。そのほかのチューニングのベースカーは、「スバルWRX」「ホンダ・シビック タイプR」、コンパクトカーでは一択という感じの「スズキ・スイフトスポーツ」など。「マツダRX-7」(FD3S)などのロータリー車もしぶとく生き残ってはいる。

大胆にローダウンされた、T-DEMANDの「トヨタ・クラウン」(手前)と「レクサスLS」(奥)。
大胆にローダウンされた、T-DEMANDの「トヨタ・クラウン」(手前)と「レクサスLS」(奥)。拡大
ローダウン仕様とリフトアップ仕様を並べたTSDスタイリングの「トヨタ・ハイエース」。
ローダウン仕様とリフトアップ仕様を並べたTSDスタイリングの「トヨタ・ハイエース」。拡大
早くも登場したFORGIATOの「ロールス・ロイス・カリナン」。
早くも登場したFORGIATOの「ロールス・ロイス・カリナン」。拡大

幅広いジャンルで支持を集めるトヨタ

そのほかの出展車両をカテゴリー別に見ていくと、セダンの日本車では新型「レクサスLS」や「クラウン」をはじめとするトヨタ勢がほぼ独占。日産のセダンは絶滅危惧種となってしまった。輸入車では伝統的にメルセデス・ベンツが強かったが、ここ数年は以前ほど目立たなくなった。

高級スポーツカーでは、やはり伝統的にランボルギーニが強かったが、これまた以前ほど目を引かなくなった。かといってフェラーリや他のブランドが伸びたかというとそうでもない。走りのブランドとはいえ、ストイックな感じが敬遠されるのか、ポルシェが地味な存在であることにも変わりはない。

ミニバンもセダン同様トヨタが強く、「アルファード/ヴェルファイア」が圧倒的な人気。他社のモデルもあるのだろうが、目に入らない。トヨタ車では、カスタムカーとしてひとつのカテゴリーを形成しているといえる「ハイエース」の人気も、ますます高まっているような印象を受けた。

SUVも、日本車ではトヨタが強い。「C-HR」「ハリアー」「ランドクルーザープラド」や「ハイラックス」など。輸入車では「マセラティ・レヴァンテ」や「ランボルギーニ・ウルス」もさることながら、「ロールス・ロイス・カリナン」まで姿を見せていたのには驚かされた。それらの多くはローダウンされロードクリアランスを下げるという、SUV本来の用途からすれば本末転倒なカスタム手法が施されていることは、いまさら言うまでもないだろう。

「メルセデス・ベンツGクラス」(右)と並んだLiberty Walk Sphere Lightの、「スズキ・ジムニー」をドレスアップした、その名も「Gmini」。(左)
「メルセデス・ベンツGクラス」(右)と並んだLiberty Walk Sphere Lightの、「スズキ・ジムニー」をドレスアップした、その名も「Gmini」。(左)拡大
その手もあったか! という感じの、DAMDの「LITTLE:D」。ベースはもちろん「スズキ・ジムニー シエラ」(左)と「ジムニー」(右)。
その手もあったか! という感じの、DAMDの「LITTLE:D」。ベースはもちろん「スズキ・ジムニー シエラ」(左)と「ジムニー」(右)。拡大
はろーすぺしゃるの「Birichino Special」(右)と「男のロマンスーパーキャリイマン」(左)。どちらもベースは「スズキ・キャリイ」
はろーすぺしゃるの「Birichino Special」(右)と「男のロマンスーパーキャリイマン」(左)。どちらもベースは「スズキ・キャリイ」拡大
wiz 国際情報工科自動車大学校の「Hidden Devill」。「リンカーン・タウンカー」をベースに、車体後半はフレームから製作されたジムカーナ仕様。
wiz 国際情報工科自動車大学校の「Hidden Devill」。「リンカーン・タウンカー」をベースに、車体後半はフレームから製作されたジムカーナ仕様。拡大

オートサロンに宿る、日本独自のカスタム文化

SUVカテゴリーに大挙して出展されたニューカマーが新型「スズキ・ジムニー」。モデル自体は昔からマニアックなファンが多く、カスタムカーとしてもハイエースと同じようにひとつのカテゴリーを形成していたが、それはオフローダーの世界の話であって、オートサロンでは少数派だった。

だが新型に関しては、先祖返りした平面基調の武骨な姿がオシャレと幅広い層に受けている新車市場の勢いがオートサロンにも反映されたというわけだ。カスタム手法としては、オフローダーとしてはオーソドックスなリフトアップのほか、ノーマルでも似ているといわれている「メルセデス・ベンツGクラス」に寄せたモデルが目に付いた。

出展車両が増えたように感じられたのが、軽トラックベースのカスタム。リフトアップしたヘビーデューティー風、ローダウンしたヤンキーテイスト、実用的なキャンパーなどなど、カスタム手法も枠にとらわれず遊び心が感じられて、眺めていて楽しいモデルが多かった。日本独自の規格から生まれたモデルを生かした、独自のカスタム文化が育っているといえよう。

独自の文化といえば、ボディーを大胆に切り張りしたモデルや、フレームから創り上げたカスタムカーも健在だ。作り手である小規模なカスタムメーカーやショップ、そして自動車専門学校によって、オートサロンの伝統芸は守られているのである。

トーヨータイヤが展示した「フォードF-150 Hoonitruck」。3.5リッターV6ツインターボユニットは914psを発生するという。
トーヨータイヤが展示した「フォードF-150 Hoonitruck」。3.5リッターV6ツインターボユニットは914psを発生するという。拡大
トーヨータイヤのブースで、ケン・ブロックとホンダのモータースポーツ体制発表会を終えたジェンソン・バトンが談笑していた。
トーヨータイヤのブースで、ケン・ブロックとホンダのモータースポーツ体制発表会を終えたジェンソン・バトンが談笑していた。拡大
グッドイヤーが展示したNASCAR仕様の「トヨタ・スープラ」。
グッドイヤーが展示したNASCAR仕様の「トヨタ・スープラ」。拡大

見ごたえのあるタイヤメーカーのブースに注目

ここ数年見逃せないのが、タイヤメーカーの出展。トーヨータイヤは昨年の「フォード・マスタング」に続いて、神業ドリフトで知られるケン・ブロックの愛機である「フォードF-150 Hoonitruck」を展示。またグッドイヤーは2019年のNASCAR Xfinityシリーズに参戦予定の「トヨタ・スープラ」を国内初披露し、昨季のNASCAR Camping World Truckシリーズでチャンピオンを獲得した「トヨタ・タンドラ」も展示。NASCARはレギュレーションによってボディー形状も制限されるため「これがスープラ?」という印象は拭えないが、個人的にはこちらのほうがオリジナルより気に入った。

(文と写真=沼田 亨)

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